『長渕剛 HALL TOUR 2015 ‘ROAD TO FUJI’』ライブレポート

長渕剛のライブには何が込められているのか 富士山麓「10万人オールナイト」への前哨戦レポ

 

前回のアリーナツアー同様、本ツアーも日米混合バンドによるもの。クリス・コーネル(サウンドガーデン)、コートニー・ラヴ、アリシア・キーズなどがサポートを務め、ShurやTC Electronicのレビューでも名を馳せるピーター・ソーンがギタリストに。ベースは、ロジャー・ダルトリー(ザ・フー)、シェリル・クロウ、シャキーラなどのサポートベーシストも務めるジョン・バトン。そして、ザ・フーのツアーへの参加のため、やむを得ず不参加となったローレン・ゴールドの代わりにキーボードを奏でるのは、“エアロスミスの六人目のメンバー”として広く知られている、ラス・アーウィンだ。日本からは、長渕ファンにはすっかりお馴染みとなった、サックスの昼田洋二、ドラムの矢野一成、そして、シカゴ仕込みの孤高のブルースギタリスト、ichiroが参加。百千錬磨ともいえる強力な布陣によって生み出されるのは、アメリカン・ロックをベースとした豪快で骨太なサウンド。長渕本人自ら、会場の隅から隅まで自分の耳で確かめる徹底的にこだわり抜いた音響も重なって、大物海外バンドに負けない極上サウンドを響かせる。「長渕剛=ギター1本の弾き語り」というイメージが強いが、バンドも絶品なのである。

 

 ライブ中盤に演奏された「親知らず」は、今も語り継がれる1990年のNHK紅白歌合戦にて初披露された歌だ。湾岸戦争前夜という情勢における日本を〈俺の祖国 日本よ!どうかアメリカに溶けないでくれ!〉と皮肉めいたメッセージで綴る。アメリカのミュージシャンたちとともに演奏されるこの歌は、今はどういう意味を成すのかーーそんなことすら考えてしまう。だが、本質にあるメッセージは、日本やアメリカという枠組みではなく「自分の意志を持て」ということである。どこか周りに流されてしまうような社会の中でも、“何ボ積んでも譲れないもの”は誰にだってあるはずなのだ。

 

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