3/16@下北沢屋根裏『下北沢CLUB Que presents 【屋根裏前期を奏でるかい!】』レポ
本日閉店するライブハウス下北沢屋根裏ーー怒髪天、Theピーズらが別れを惜しんだ夜
「こんばんは。屋根裏納めさせていただきます!」と桜井秀俊(Vo&Gt)が挨拶し、「見世物万次郎」で賑やかにライブをスタートしたのは、びっくりしたな、もう。今から30年ほど前、桜井が高校一年の頃に結成された、このバンド。今は“カタギの人”として働いている、滝将之(Ba)、森田靖彦(Dr)の3人のバンドサウンドは、桜井も「ライブもやってないのに、調子いいです」と語るくらい、歌と演奏の呼吸もピッタリ。「屋根裏落ち着くわ~!」と始まったMCでは、「色んなバンドと対バンさせていただきましたが、怒髪天とギターウルフが断トツで怖かったです」と笑わせる。さらに1989年、昼の部のオーディションを受けて、屋根裏に出演した時の話など、思い出話でなごませると、「高1の頃、作った曲です。47才で歌うのもどうかと思うけど、逆に今しか歌えないので」と、「無気力賛歌」を披露し、高校生の頃、初めて買ったというギターで、10代のバンドキッズに戻ったようなフレッシュな演奏を披露。ラストは「イケイケ」、「イタイ」と、彼ららしいポップでストレンジな曲を披露し、強烈なインパクトを残してライブを締めた。
そしてこの日の大トリ、“増子直純とゆかいな仲間たち”が登場。客席をかき分けてステージに登場したのは怒髪天の4人! 「俺一人じゃ何も出来ねぇから、今日はフルメンバーで来ました」と語る増子直純(Vo)。セッティングを進めるメンバーを後ろに、「初めて屋根裏に出たのは、24年くらい前? ミッシェルの初めての企画で、Theピーズと俺らを呼んでもらったこともあったけど、20人くらいしかお客さんがいなかったからね」と、思い出話で会場を沸かせる。セッティングが完了し、「よし、じゃあやるか」とラフに告げると、「屋根裏に出てた頃によくやってた曲です」と、「流れる雲のように」「明日の唄」でライブがスタート。
たっぷり情感を込めた、まさにR&E(リズム&演歌)の言葉が相応しい楽曲をゆったりと力強く演奏すると、「これで20代前半の曲だよ? 渋すぎるよな。今、ちょうどいいもん」と笑わせる。続いて、「こんなにお客がいっぱい入った景色はあんまり見たことなかったよな?」と増子が語ると、「ここでお客さんがさきいか広げて座り込んで、宴会やってたもん」と上原子友康(Gt)が笑い、「ここでさんざん飲んだから出来た曲やろうか」と「酒燃料爆進曲」を披露。エアグラスで観客と乾杯した後は、「さようなら、屋根裏!」と「オトナノススメ」で会場中が両手を大きく振り、屋根裏との別れを惜しむ。フロアを大きく揺らした後は、「バンドブームが終わって、「ロックなんてダサい」って時に東京に出てきて。怒髪天はここから始まったと言っても、過言じゃないよ」と増子がしみじみ語り、ラスト「ひともしごろ」をたっぷり気持ちを込めて歌い上げる。「屋根裏、お世話になりました!」と大きく手を挙げ、贅沢すぎるこの夜を締めくくった。
終演後、名残惜しそうに会場に残り、語り合ったり、記念写真を撮っていたお客さんたち。屋根裏から巣立っていったバンドマン、僕も含めた屋根裏に通い詰めていたお客さんが、それぞれの思い出を持ち寄って集い、最高の歌と演奏で胸熱くしたこの夜。屋根裏の閉店はとても寂しいが、この日の風景は共通の思い出として、ここに集った全ての人の記憶に残るのだと思うと、なんだか嬉しかった。
(文:フジジュン)