乃木坂46が迎えた飛躍の時 「AKB48の公式ライバル」はなぜ独自路線に成功したか?

 他方で、メンバーの個人活動の打ち出し方もまた、好循環に入っている。その代表的存在は白石麻衣だろう。雑誌「Ray」の専属モデルとしての顔も定着している白石だが、「Ray」専属となったのはおよそ2年前の2013年3月、またレギュラーでモデルに起用されている「LARME」に至ってはその初登場は創刊の2012年9月、乃木坂46としてはまだシングルを3枚リリースしたのみの時期である。グループの知名度がさほど先行していない段階から長期にわたってファッション誌モデルとしての地歩を着実に築いたことで、48系のアイドルファンの外にもリーチする人気を得る足がかりとなった。白石が先駆となって敷いた道に続くように、今年に入って齋藤飛鳥の「CUTiE」専属、橋本奈々未と松村沙友理の「CanCam」専属、そして西野七瀬の「non-no」専属が発表された。ここでも特に齋藤の起用にみられるように、選抜常連であるか等よりも雑誌との相性を重視した人選が垣間見え、乃木坂46とファッション誌との親和性をさらに高めるものになりそうだ。

 述べてきたような数年がかりの乃木坂46独自の模索ひとつひとつがここにきて大きな武器になり、いわば外向きのブランディングとして結実したことが、現在のセールス好調にもつながる飛躍の主要因といえるだろう。AKB48に寄り添って走るよりも、48グループとは独立した色合いを前面に出すことで、「公式ライバル」としてのオリジナリティを見つけつつあるということかもしれない。

さらに忘れてならないのは、既存のファンに向けての納得度、いわば内向けの環境もまた整ってきたのがこの一年だった。誰がセンターをとってもおかしくない選抜常連メンバーの充実度に加え、昨年の乃木坂46をパフォーマンス面で引っ張ったアンダーメンバーの活躍によって、選抜/アンダーは拮抗し、簡単に上下や優劣で語ることが難しいほどに競合する二者になった。乃木坂46を見続けてきたファンにとっても、グループ内のダイナミズムはかつてより緊張感のあるものになっているはずだ。外に向けてのブランディング確立と内側の充実、その両輪が結成以来もっともうまく噛み合っているのが、現在の乃木坂46である。

 かつてない勢いで飛躍している乃木坂46は今年、昨年にもまして次々とプロジェクトを打っていく。4月には昨年大好評だったアンダーライブの新シーズン、6月には先日オーディションでキャストが決定したばかりの舞台『じょしらく』上演、そして秋に恒例の「16人のプリンシパル」と続く。もちろん、今年も大会場でのライブ開催が予想されるし、2月のバースデーライブで発表された新プロジェクトの1期生募集も動き出す。セールスの飛躍的な上昇も追い風に、乃木坂46がさらに注目度を高める年になりそうだ。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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