ニューシングル『ときめき/隣の女』インタビュー

チャットモンチーが明かす、デビュー10周年の現在地「やりたいことが進化しているのはすごく幸せ」

「「こわい」って思われるくらい面白いのを書きたい」(福岡)

――2曲目の「隣の女」は鋭い人間観察から生まれた曲という感じで、これも毒があって新鮮でした。

福岡:これは、単純に人間関係に悩んでいる時に書いた曲で、すごく怒っていました(笑)。もう昨年のことなので忘れたんですが、その時はすごくいろいろ思うことがあって、友達にも「こういうことがあって」と相談したら、その子が「曲にすればいいやん」って言ったんですよ。結局、歌詞って自分が何を言いたかったかってことをまとめられないと作品にできないから、結局自分は何を言いたかったのかと考えていくんです。すると、やっぱり自分の感情も入っていく。だから、誰かに向けてというよりは、結局、そういう自分にも成り得るということで。だから……遠からず自分も、みたいなところですね。

――自分批評でもあるということですね。

橋本:みんな結局、そういう感じなんじゃないかなって。やっぱり女の人って気になるじゃないですか、女の人のこと。友達は友達でいいけど、ちょっとライバル視してみるとか、絶対あると思うんですよね。だからそういう思いをした人は「あっ」って思っていただけると思います。

福岡:「ときめき」が男性に対する警告だったらこっちは女性に対する警告、というところもある。でも私は「こわい」って思われるくらい面白いのを書きたいというのがあるので、わりと面白い歌詞というイメージで書きました。

――コミカルなイメージもありますよね。曲を付ける時にはどのようなイメージが?

橋本:いつも作る時にイメージというのはあまりなくて、歌詞だけが頼りで作るので、歌詞にあることを歌う!っていう感じで作りました。

――この2曲のアレンジは4人で?

福岡:そうですね、ざっくりしたのを2人で作って、そこから4人で一緒にスタジオに入って詰めていくという感じでした。世武ちゃんに関しては、毎回弾くことが違うんで、このキメっていうフレーズ以外は歌詞に寄り添うものをお任せで、弾いてもらいました。それから、とにかく引き出しが多くてすごいんです。だからそこは世武ちゃんに完全にお任せしてやっています。ドラムに関しては、私が2人体制のときに叩いていたのもあって「こういうのが良い」とはお願いするけど、やっぱり、ぜんぜん違って何倍も良いものが返ってくるから、ほとんどのプレイはお任せになります。こういう風にしてほしいみたいなのはほぼなくて、音だけ、ドラムのチューニングとか音づくりを一緒にやっています。

橋本:ギターに関しては2人体制になってから買ったフェンダーのシンラインがものすごく当たりで。すっごい良い音がするから大好きでずっと使っていて、プリプロの時にもシンラインを使って曲作りをしていました。シンラインは弾いている時に、弾いている以上に鳴っている気がするんですよ。でも単純にパワーがすごいというわけではなくて、鳴りがすごい、という感じがするんです。で、テレキャスは弾いたらパンッとすぐに出て行ってくれる、立ち上がりが早いイメージがあって、だから「隣の女」みたいなけっこうテンポの良い時に使っている感じです。シンラインは響いてくれるから、大きい曲にすごく合ってくれます。

――今回のように世武さん、北野さんが入り、2人が持っている音楽性と混じることでまた見えてくるものもあるのではないでしょうか。自分たちの持っている特徴とかクセ、指向性などで気づくことはありますか。

福岡:ありますね。男陣とやっていると、シンコペする・しないの箇所がぜんぜん違うんですよ。バンド世代はしないシンコペをチャットの曲ではする。ここで食うだろというところを食わずに、ここくるの!?みたいなところだったりして(笑)。それはなぜかなと思った時に、やっぱり歌詞が先にできるから、歌詞に沿って動くんですよね。「シャングリラ」のテンポが多いのも歌詞が先だったからだし。私たちは歌ありきで覚えているのであんまり違和感がなかったけど、指摘されたら確かに、一番でここ食ってないのに二番で食ってる、みたいなのは結構あります。だから乙女団でも世武ちゃんから「音がぶつかっているけどいいの?」と言われて、「いいんちゃう? 気づかんし」「あっそうなんや」みたいな(笑)。

橋本:ベースとギターだから気づかなかっただけで、鍵盤の人が入ると「私、どこ入ればいいの?ぶつかってるけど?」って迷わせるんですよね。だから世武ちゃんとシモリョーくんにはすごく感謝していて(笑)。「こういう和音いいの?」っていう。「でも、そこ弾いちゃうと、音ぶつかってるから変えよか~」みたいな、そういって初めて変えてみたりとか。だから鍵盤ってすごいんやなと思いました。

――世武さんたちのアドバイスで変えることもあったんですね。

福岡:そうですね。でも気にならないって押し切る時もあるし。気になるポイントがみんな違うから、やっぱり面白いですよね。

――音がぶつかることが魅力になっている面もあるかもしれないですね。

橋本:それが魅力になっていると、シモちゃんが言っていました。ナチュラルに、おしゃれな感じのコードになってたりとか(笑)。知らず知らずにそうなっているのを発見してくれるから、なんかちょっとうれしい。やっぱり? おしゃれだったかーって(笑)。「親知らず」とか「世界が終わる夜に」はそうだって言われましたね。

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