『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー
関根青磁×生田真心が語り合う、録音と編曲のコツ「少しのさじ加減で人を説得できる感覚も重要」
――それぞれの職業を目指す人たちに対して押さえておくべきポイントは?
関根:とにかく沢山音楽を聴くこと。例えばビートルズを知らないとそこで話が終わってしまいますし。年代の差はあるにしても、「プログレっぽいサウンド」と言っても理解されないこともあります。「あのサウンド」って言ったときに、そのサウンドをわかり合って、初めて次に進める部分もありますから、それを知らないと会話にならないので困ってしまいます。
――生田さんはどうでしょうか。
生田:仕事でやっていく場合は、相手に言われなくても「こういうのが欲しいだろうな」と察することができる引き出しを持つことが重要だと思います。一つのジャンルに対して、浅くてもいいから、せめて広く聴いておくことではないでしょうか。
関根:そう。「知らないのはナシ」というか、せめてそのジャンルの代表曲だけでもいいから聴いておいてほしいです。
生田:当時の空気感もわかれば、それに越したことはないのでしょうが、その部分に関しては相談しながら進めることができるので。どちらかというと「あんな曲」と言われたときに、ぱっと自分でイメージできる能力が必要だと思います。
関根:楽譜が読めなくてもすごい人もいますからね。感覚的に表現できる人はそれを突き詰めればいいと思います。ピアノができなければいけないとかギターができなければということではないと思います。
生田:あるジャンルに徹底的に詳しいという自負があったとしても、よほどすごくないと仕事は来ませんからね。
関根:エンジニアでも卓の前に座って音を聴いて、フェーダーを横一線に並べて微調整するだけで素晴らしいバランスの音を出すことができる人もいます。その人が座っただけで場の雰囲気が変わることもありますし、聴かせるボリュームのレベルだけでも音の印象を変えることもあります。ほんの少しのさじ加減で人を説得できるかできないかという感覚も重要ですね。
あとは技術の前に人間性ですね。基本過程としてはアシスタントを経てエンジニアを目指すわけですから、言葉遣いや気遣いはしっかりとできた方が良いですね。もちろん我が道を行って成り上がる人もいるんでしょうけど。あとはできたらお酒は飲めたほうがいいと思いますよ(笑)。
生田:確かに、エンジニアさんは話しやすい人のほうがレコーディングをお願いしやすいですね。アレンジャーとエンジニアは相談することが多いので「ここのギターをこうしたいんですけど、何かいい方法ないですか?」ということ一つにしても、やはり人柄や話しやすさは重要視されると思います。
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■関根青磁 プロフィール
音像管理術と独創的且つエッジーなサウンドメイキングに定評あるサウンドクリエイター。
1994年ビクターエンタテインメント(株)VICTOR STUDIOに入社。ハウスエンジニアとして5年間活躍した後、よりグローバル・スタンダードな音創りを追求すべく2000年にフリーランスとなる。
m-flo、SMAP、Crystal Kay、TERIYAKI BOYZ®、RIP SLYME、布袋寅泰、flumpool、ももいろクローバーZ・・・など数々のヒット・プロダクツを手掛ける。
2007年全米1位を獲得したカニエ・ウェストの「Stronger」のレコーディングセッションに参加。同楽曲でグラミー賞2008『ベスト・ラップ・アルバム賞、ベスト・ラップ・ソロ・パフォーマンス賞』を受賞し、STAPLES CENTERでの授賞式にも招待される。
2013年agehaspringsに加入。アーティスト・プログラムのみならず、TV、CM、映像コンテンツやトータルのプロデュース・ワークまで幅広くこなす。
■生田真心/倉田主税 プロフィール
1990年代後半、大阪で映像音楽制作を開始。
同時期、BOREDOMS/想い出波止場/OOIOO 等のトラックメイクやライブ制作のサポートを行う。
2004年、活動の拠点を東京に移し「生田真心」をスタート。
AKB48「フライングゲット」をはじめとするAKB48関連シングル・ジャニーズ関連シングル等のアイドル作品の編曲を多く手掛ける。
多くのヒット曲に携わり、2011年には年間編曲家ランキングで1位を獲得する。
アイドル、J-POP、アコースティック、R&B、どのジャンルでもその楽曲のポテンシャルを最大限に引き出すクリエーター。