“音楽屋”ガガガSPは今のシーンでどう戦っていく?「板の上に乗ったときに何が出来るか」

「俺らは数量型なんですよ。1年に1枚出し続けて、なかには佳作もある」(コザック前田)

――そういえば前田さん、ブログのなかで「渋谷系のアーティストに憧れてた」みたいなことを書いてましたよね?

コザック前田:それがコンプレックスだったんですよね、ずっと。何で俺はChocolatに会えないんだっていう…。

山本:いまの活動やってたら無理やな(笑)。

コザック前田:でもなあ、ピチカート・ファイヴだって、野宮さんが入る前から聴いてたんやで? カジヒデキさんといっしょにやりたいと思ってたのに、泉谷しげるさんといっしょにやってるのは何で?

山本:ハハハハハ!

――自分の声やキャラクターに渋谷系の音楽は合わないって、認識した瞬間もあったんですか?

コザック前田:ありましたね。ある日、風呂場で自分の顔かたちを見て…。

山本:「これでウィスパーボイスは無理や」って?

コザック前田:そうやな(笑)。でも、自分が好きな音楽は誰かがやってくれてますからね。ビリー・ジョエルやベン・フォールズも好きですけど、それを自分でやる必要性はないかな、と。聴く側としては、パンクはほとんど聴かないですけどね。

山本:ほかのメンバーはわりと聴きますけどね。ドラムとかベースはパンクが好きなんで。

コザック前田:でも、パンクに固執してるわけではないやん? ポップスも聴くし、いろんな音楽が好きなんで。

――では、ガガガSPの現在のスタイルは、どういうふうに生まれたんですか?

コザック前田:入り口はフォークだったんですよ。でも、ただフォークだけをやってもつまらないし、誰も聴いてくれないじゃないですか。僕ら自身、ファンクとかガレージとかメロコアも聴いてたわけで、「そこで何を取るか?」っていうことを考えていて。ちょうどそのときね、ゆずが出てきたんですよ。「夏色」を聴いたときに「吉田拓郎さんみたいな曲をパンク調でやってみよう」と思ったんです。それだったら、メロコアにもならないし。だから、パンクもフォークも特別好きってわけではなくて、バンドをやるためのツールなんですよね。

――でも、そのスタイルを貫いてるじゃないですか。好きじゃないと出来ないと思うんですが。

コザック前田:それはもう、高倉健以上に不器用ですから。

山本:ハハハハハ。

――そのやり方でアルバム10枚作るのもすごいですけどね。

コザック前田:これは俺の考え方なんですけど…。3年に1枚、5年に1枚くらいのペースで質の高さに拘るのも素晴らしいと思いますが、俺らは数量型なんですよ。1年に1枚出し続けて、なかには佳作もあるっていう。

――いつも傑作というわけではなくても、作品を出し続けることに意義があるというか。

コザック前田:清志郎さんもそうだったと思うんですよ。ウディ・アレンも40年間、毎年のように新作を発表してますけど、半分くらい佳作じゃないですか。そっちのほうが好きなんですよ、俺は。“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”じゃないけど(笑)。

――とにかく試合に出て、打席に立ち続けると。

コザック前田:そうです! せっかく野球に例えてくれたので言いますけど、最近はシュッとした野球選手が多いですよねぇ。川藤みたいな選手(‘68年~‘86年、阪神タイガースに在籍したプロ野球選手。‘80年代は代打の切り札として活躍、ファンの絶大な支持を得ていた)、おらんでしょ。17年の現役生活で16本しかホームラン打ってないのに、客席に大弾幕がかけられるっていう。

山本:「川藤が走った!」ってだけでめちゃくちゃ盛り上がるっていうね。野球選手やから、当たり前なんですけど(笑)。

――成績とは関係ないところで強烈な印象を残した選手ですからね。

コザック前田:そうなんですよ。そういう人にこそ魅力を感じるんですよね、俺は。カジヒデキさんも最高ですけど…。

山本:“カジヒデキor川藤”か。ずいぶんふり切ったな(笑)。

コザック前田:ハハハハハ! 最近のバンドの子らも、シュッとしてますよね。押し出しの強い人は減ったかな。

山本:そうね。ルックスが暑苦しくて、押しの強いヤツが出てきと思っても、ぜんぜん売れなかったり。

コザック前田:カウンターにすらなれない(笑)。だからこそ、ガガガSPみたいなバンドがひとつくらいいてもいいかなって思うんですけどね。

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