姫乃たま「地下からのアイドル観察記」番外編

姫乃たま×マーライオン対談 音楽は“不器用な10代”をどう変えた?「舞台に立つと積極的になれる」

たま「マーくんは、10代限定弾き語りイベントで人々を圧倒した」

マーライオン 2010/8/29 川崎市民ミュージアム

たま:マーくんは周囲に可愛がられる一方で、深く知らない人から批判の対象にされることも多かったよね。その人たちを圧倒したのが川崎市民ミュージアムの10代限定弾き語りイベントだったんじゃないかなと思う。

マー:あの時はギターのケーブルがぬけて、マイクが倒れて、散々だったんだけど、竹内さん(神聖かまってちゃんの動画などで知られる竹内道宏監督)が撮影してくれたんだよね。その後、大学一年の年度末に「日常」っていう音源で初めて全国流通したんだけど、神聖かまってちゃんの、の子さんが帯コメントを書いてくれて。しかもマーライオン君はひとりで活動しててすごいって応援してくれてた。すごくいい先輩。

たま:あの辺から、多くの人の目に留まったことで活動が広がっていった感じがしたよ。

マー:高校に在学してた時、僕のライブ動画を同級生が見つけちゃって、ニコニコ動画に転載したのね。多分いまでも観れると思うんだけど、コメントがひどくて自宅の最寄り駅とかバラされてて。書き込んでるのはほとんど同級生なんだけど、もう思いやりとかそういうのがなくてさ。

たま:ネチケットが(笑)

マー:そう、それ。そういうのがなくてさ。スクールバスで知らない奴から思い切り背中蹴られて、ラブソングなんか歌ってんじゃねーぞって言われたもん。ムカついたから「スピッツもaikoも歌ってんだろ!」って言っちゃった。

たま:自分とスピッツを並べたんだ!

マー:咄嗟にそれしか出てこなかったんだよね……。でも悪口言われた時期と、受験で活動休止した時期が重なっちゃって、逃げたみたいにみえて悔しかったから、「日常」で活動が広がって良かったよ。

マー「僕も姫乃ちゃんも高校を卒業するときに、変わらなきゃっていう気持ちがすごくあった」

たま:それから数年会わない期間があったけど、今年の5月にジョンE.I..sくんの結婚式で再会したらスーツ着てラップしてたからびっくりした。この間まで制服でギター叩いてたのに!

マー:最近、ちゃんと音楽を聴いてみようと思って、CDショップで働き始めて、キエるマキュウとか聴くようになった。知人にトラックを作ってもらってラップするようになったのがここ1、2年のこと。

たま:でも、弾き語り時代の叫びが、ポエトリーリーディングだったとしたら、ラップに移行するのってそんなに急なことじゃないよね。

マー:まあ、あの叫びはポップスだったんだけどね。僕の中では。

たま:私も高校生の間はアニソンのカバーとかをしてたんだけど、ずっとしっくりこなくて悩んでたんだよね。始めたきっかけが急だったからビジョンがなかったのは仕方ないとしても、これじゃないなっていう意識ははっきりあった。このままでいいのかなっていう気持ちと、右も左もわからなくて試行錯誤してる間の失敗が積み重なって、だんだん嫌になってきちゃったんだよね。マーくんのデータCDの失敗だってすごい周りからしたら、笑いごとだし愛嬌もあるけど、本人からしたらやっぱり多少は傷つくじゃない。そういうモヤのような気持ちが積み重なって、もう辞めようかなって思った時に、やっぱり改名して出直そうって。

マー:僕も姫乃ちゃんも高校を卒業するときに、変わらなきゃっていう気持ちがすごくあったよね。

たま:うん、そうだね。ラップしてるマーくんを見た時に、最初の弾き語りとは違うジャンルだけど、着実に進歩してるのを感じた。私もFriendlySpoonっていう宅録ユニットでボーカルをさせてもらって、ようやく納得できる形で初めてCDを全国流通できたり、ふたりとも不器用にだけど、じわじわ進んでるのが嬉しかった。

マー:そう、結局じわじわ進むしかないんだよね。失敗して失敗して。

たま:でも失敗するたびに、周りの人が助けてくれて。ふたりとも恵まれてたね。

マー:うん。でも僕、最近もライブハウスで知らない人から「調子乗ってんじゃねーぞ!」って怒鳴られたんだよね。

たま:本当に巻き込まれやすいよね(笑)! これからも助け合って進んでいこうよ。

■姫乃たま
1993年2月12日下北沢生まれ。日本の地下アイドル。2009年より都内でライブをする傍ら、ライターとしても活動を開始。イベントの主催や、司会、モデルとしても活躍している。全曲ボーカルで参加した宅録ユニットFriendlySpoonの『フレスプのファーストアルバム』絶賛発売中。

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【マーライオン】
1993年3月3日生まれ、横浜出身のシンガー・ソングライター。
2009年、活動開始。
2010年3月、2タイトル全33曲を収録した自主制作の1stアルバム『ニヤニヤロックンロールベスト』『ニヤニヤロックンロール全曲集』を同時リリース。
2012年3月、自主レーベル〈ニヤニヤレコード〉を設立。
同年4月、初の全国流通となる2ndアルバム『日常』を発表。
2013年3月、初のライブ盤『19才』を発表。
曽我部恵一とともに共同レコ発企画「キラキラでニヤニヤ」を2days開催し大盛況。

2014年11月5日、加地等、都市レコード、柴田聡子などを手がけた三沢洋紀がプロデュースした3rdアルバム『吐いたぶんだけ強くなる』を発売。
2014年12月10日、カメラ=万年筆の佐藤優介がプロデュースした4thアルバム『ボーイミーツガール』が発売される。
また来年1月には、Oochu Udu Clubプロデュース、イリシットツボイがミックスを担当した初のヒップホップアルバム『マーtodaライtodaオォォォン!!!』が発売される。

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