大森靖子は世に出るべくして出るーー歌舞伎町ロボットレストラン公演レポート

 しかし、そのMCの後の「呪いは水色」には、奇を衒わずに歌う中にしっかりと普遍性があった。思わずエディット・ピアフの「愛の讃歌」を連想してしまったほどに。ラストの「さようなら」はアカペラで歌い、これまでスタッフとして映像を担当し、この日も撮影中だった二宮ユーキに突然歌わせるという趣向もあった。

 10月2日、3日には東京キネマ倶楽部でライヴ「2日間で超楽しい地獄をつくる方法」を開催することも発表された。2日はカーネーションの直枝政広がバンマスを務めるバンド、3日は大森靖子&THEピンクトカレフが登場し、両日ともに大森靖子の弾き語りがある。

 今夜披露された「きゅるきゅる」と「私は面白い絶対面白いたぶん」は、今後の大森靖子の変化を予感させる楽曲とサウンドだった。しかし、弾き語りで感じさせたように、彼女の芯の部分は変わらないだろう。「自由になれた」と語る大森靖子は、これからどこまで羽ばたくのだろうか? きっと予想外の広がりを獲得できるはずだ。そんな確信をもたらしてくれるライヴだった。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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