柴那典「フェス文化論」第4回

AKB48、ももクロも出演 「氣志團万博」はなぜ規模拡大を続けるのか?

 まず、その名の通りホスト役をつとめるのは氣志團だ。コンセプトは「ありえないを形にする」。もともと一昨年から、浜崎あゆみ、ゴールデンボンバー、小泉今日子やサプライズ出演を果たした近藤真彦など、それまでのロックフェスの常識を覆すラインナップが実現し、大きな話題を集めた。当初はバンド結成15周年を記念した一回限りのお祭りとなるかと思われたが、昨年にはhideや乃木坂46やマキシマム ザ ホルモンも出演し、二年連続の成功という実績を作った。

 その背景には、綾小路翔が持つ「既存のロックフェスにないものを形にしたい」という発想があった。彼はフェスを主催するにあたってのインタヴューで「日本のロックフェスがルーチン化してきた」ということを語っている。つまり、邦楽を主体としたフェスが各地方に根付いたことはいいが、その反面ラインナップがパッケージ化し、出演者にとっても夏の営業のようになってしまっているという2010年代以降の現状を指摘している。そこに風穴を開ける発想でスタートしたのが、「氣志團万博」なのである。

 そして、実際にこのブッキングの実現に寄与しているのが綾小路翔が持っている幅広い人脈であることは間違いない。氣志團は2011年から「極東ロックンロール・ハイスクール」と題した対バンスタイルのライヴを行い、そこでベテラン、V系、アイドルなど様々なアーティストとステージを共にしてきた。また、昨年には彼直々に秋元康を口説き落として乃木坂46の出演を実現させ、それが今年のAKB48の出演に繋がっているはずだ。DJ OZMAや矢島美容室としての活動も経ている彼は、いわば近いようで遠い「芸能界」と「音楽シーン」をつなぐ貴重な存在となっている。

 千葉県・袖ヶ浦海浜公園という会場のロケーションも『氣志團万博』の大きな要素だ。前述の鹿野 淳氏は「フェスは場所とスケジュールが50%以上の重要さを占めるもの」だと語っているが(参照:VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、ロックフェスの「物語」と「メディア性」)、氣志團にとっての地元・木更津も、デビュー以来常にレペゼンし、大事にしてきた場所。2003年に初めて開催し4万人を集めた『氣志團万博』(こちらはGLAYをゲストにワンマンライブのスタイルで行った)も、やはり木更津にて行われている。『氣志團万博』は、彼らにとって「故郷に錦を飾る」という意味を持つイベントでもあるはずだ。

 ニューロティカや仙台貨物などのエンタメ精神溢れるバンド、声優・谷山紀章が歌うロックユニットGRANRODEO、RADWIMPSの“盟友” 味噌汁'sなど、他にも曲者揃いのメンツが実現した今回の『氣志團万博』。今年も「ありえない奇跡」が起きそうだ。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

■イベント情報
『氣志團万博2014 ~房総大パニック!超激突!!~ Presented by シミズオクト』
日時:2014年9月13日(土)、14日(日)、15日(月・祝)
9:00 開場/11:00 開演 (20:00 終演予定)
会場:千葉県・袖ケ浦海浜公園
料金(税込):1日券 12,000円、2日通し券 21,000円、3日通し券 30,000円、臨時駐車場券 3,000円
一般発売:8月23日(土)
※未就学児、入場不可。12歳以下、保護者同伴かつ要チケット。
※各出演者の日割りは5月21日12:00にオフィシャルサイトにて発表。

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