グラミー賞に見る世界の音楽界2大トレンド「米国以外出身」「インディー契約」

 1月27日(現地時間1月26日)にロサンゼルスのステイプルズ・センターで行われた第56回グラミー賞授賞式。今回のグラミー賞で特筆すべきなのは、アメリカ以外の国のミュージシャン、そしてインディーズで活動するミュージシャンの躍進だ。

 主要2部門を含む5冠を達成したダフト・パンクは、ご存知の通りフランス出身のエレクトロ・デュオ。年間最優秀楽曲賞を、史上最年少で受賞したロードはニュージーランドのシンガーソングライターである。また最優秀新人賞、最優秀ラップ・アルバム、最優秀ラップ楽曲賞、最優秀ラップ・パフォーマンスの4部門を受賞したマックルモア&ライアン・ルイスは、インディーズで活動するミュージシャンで、メジャーレーベル的な大がかりなプロモーションは一切行われなかったが、インターネットやオンラインでの露出と、ライヴで着実にファン層を広げていき、全米iTunesチャートで1位を獲得。ビルボード200アルバム・チャートでも初登場2位を獲得(2012年10月19日付)し、インディー・アーティストとして、異例の初週売上7万8000枚を記録した。さらに最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを受賞したヴァンパイア・ウィークエンドは、米国出身ではあるが、所属するのはイギリスのインディーレーベルであるXLレコーディングス。同レーベルは1989年にスタートしたまだ歴史の浅いレーベルだが、所属するアーティストはアデル、ベック、ジャック・ホワイト、レディオヘッド、シガー・ロスと錚々たる顔ぶれだ(ただし、彼らの多くは地域によってメジャーレーベルとも契約している)。

 ポピュラー音楽の評論家であるキム・ジャッカは、こうしたグラミーのトレンドについて「グラミーは数年前から、英国のアデルやマムフォード&サンズ、カナダのアーケイドファイアに注目し、米国内の創作力枯渇を、インディーズ出身の非米国音楽家から求めてきた。今回のダフト・パンクやロードの受賞は、ポップのミッドフィルダーを占めていた米音楽界が、ほかの国から進むべき新しい道を示されたような形を見せている」と語る。

 アメリカのメジャーレーベルが「創作力枯渇」かどうかはさておき、これまでの主流、すなわち「アメリカ人でメジャーレーベルに所属し、大々的なプロモーションでヒット」という図式が崩れてきているのは間違いないだろう。事実、今回グラミー賞にノミネートされた398作品のうち、199作品がインディーズ・アーティストによるもの。半数をインディーズが占めるようになったのは、集計が開始されて以来はじめてのことだ。

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