Dragon Ashがたどり着いた“迷いなき場所” 激動の創作ヒストリーから読み解く

「スパニッシュ系の音楽を吸収し、よりエモーショナルな感性に磨きをかけたDragon Ashが、原点的なミクスチャー・ロックを再構築したのが『MIXTURE』でした。おそらく、誤解や曲解も多い『ミクスチャー・ロック』というジャンルに対し、さまざまな音楽的実験を経て、再び向き合う覚悟が決まったアルバムだったのではないでしょうか。馬場さん(IKUZONE氏)は、このアルバムをリリースした際に『ミクスチャーは何も否定しない。むしろ良いものはどんどん取り入れる。そういう音楽は他に無いと思うし、それがミクスチャーっていう音楽の最大の武器なんだ』と語っています。また、この頃にはリスナーもライブを重視するようになり、かねてよりライブに重きを置いてきたDragon Ashは強かった。ダンサーがメンバーにいることからもわかるように、彼らは生のパフォーマンスを重視し、熱いライブを重ねてきました。結果として彼らは、古参のファンだけではなく、若いファンも獲得することができる実力派のバンドとして力を増していきました」

 2012年、ベースのIKUZONE氏が急逝した際は、その後の活動が危ぶまれたDragon Ashだったが、先述したように彼らは「The Show Must Go On(それでもショーは続く)」というスローガンを掲げて再び歩みだす。

「『THE FACES』では、そういった物語性を引き受けたうえで、Dragon Ashを続ける決心をしていることが伝わります。アルバムの12曲目に収録された『The Live』は、馬場さんの影が見えるようなセンチメンタルな一曲で、サポートメンバーのKenKen(RIZEのベーシスト)が参加しています。また、『THE FACES』というタイトルにも、感慨深いものがあります。おそらく、メンバー、スタッフ、そしてファンの面々とともに作り上げたアルバムだという意味で、このようなタイトルになったのかと思います。そして重要なのは、音楽そのものが文句なしに“かっこいい”ということ。Dragon Ashは世代によって受け止め方が異なるバンドだと思うんですが、このアルバムに関しては、あらゆる世代の人々を振り向かせる力強さがあります。新たな一歩を踏み出した彼らの今後が楽しみですね」

 バンドとして新たな気持ちで再出発したいという思いから、5月31日には初の日本武道館公演を行うDragon Ash。そのエモーショナルな音楽は、ジャンルの垣根を越えて、さらに多くのファンを獲得しそうだ。
(文=編集部)

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