ヒップホップ界のキーマン、YANATAKEの現場レポート
2014年のクラブシーンは『恋チュン』級ヒットを生み出せるか ハイブリッド化とネット活用がカギ
2014年、新たな年を迎えてクラブ・シーン、そして流行するサウンドはどのような変化を見せていくのでしょうか。EDMはひとつのジャンルとして確立し、大型クラブのような場所での盛り上がりには欠かせないものへと成長を遂げました。サウンドとしてのキャッチーさと、刺激ある高揚感を生み出す手法はポップス・フィールドでも取り入れられています。
しかし、EDMと簡単にひとくくりにしてしまうことで誤解を受けやすくなっていることも間違いありません。キャッチーさだけが際立つ、万人受けを狙ったような楽曲ばかりがクローズアップされがちですが、この道を追求するDJなら膨大な楽曲と向き合わなくてはならないし、それを極めるプロも多く存在します。単純にバカ騒ぎできるようなモンスター級のヒットは1年に何曲も誕生するわけではないので、ライト・ユーザーが多く集まるクラブでは、繰り返し同じ曲ばかりがプレイされて飽和していることは否めません。このようにシーンは変遷期に突入しています。EDMという言葉が一人歩きしたバブル期は過ぎ去ったので、もっと本格的なダンス・ミュージックとしてのEDMが求められているとも言えるのではないでしょうか? そういった意味では、今はどのジャンルも同じスタートラインに立っているのかもしれません。
2013年にバウアーの「Harlem Shake」というヒット曲が誕生しました。ベース・ミュージックや、サウス系ヒップホップの要素が入り交じったハイブリッドな楽曲で、その曲に合わせてダンスする動画をYouTubeに投稿することがムーブメントとなり、全米ビルボード・チャートで5週連続1位を獲得、年間チャートでも4位に入るほどの盛り上がりとなりました。
世界ではインターネットでバズが起こることがヒットの必須条件。レディー・ガガやブラック・アイド・ピーズが台頭したときには、プロ・アマ問わずに毎日多くのリミックスがインターネット上に投稿されました。これらを取り締まる動きよりも、バイラルな広がりによって話題を独占するプロモーションが成功したのです。
ビヨンセのライブでは観客のスマートフォンなどによる撮影が許可されています。これはどこを切り取られても完璧なショウであるという自信の裏返しと、インターネット上にアップロードされることでSNSでの広がりを狙っているからです。個人が1日に得る情報量の何%を占められるか? それに向けた仕掛け方が重要だという考えですね。簡単に著作権を放棄することが正解だとは言いませんが、グレーゾーンすら自らのプロモーションに変革させる逆転の発想が勝利を生んでいます。日本のメジャー・レコード会社でも、今以上にインターネットを駆使したアイディアを活かすことが命題でしょう。
そして、今後のキーとなるのは国内のクラブ系音楽プロデューサーたちだと思います。彼らの多くは自身らのコミュニティを持ち、SNSを駆使したインターネット上でのセルフ・プロモーションにも長けている。今後はいくつかのコミュニティを結びつけることで大きなチカラを作り出すことが重要になってきます。2~3つのジャンルが混ざり合っても、お互いのスタンスを崩さないままに表現できるのが、国内のクラブ系音楽プロデューサーたちなのです。