「この世はうまくいかないものなんだ」二階堂和美が『かぐや姫の物語』主題歌に込めた思いとは

『火垂るの墓』のやりきれなさも、あれこそが真実

――監督のやろうとしていることと、ご自分がやってきたことがうまく繋がる、と。

二階堂:そうですね。”この映画を見た人は最後にたぶんフラレストレーションを溜めるだろう。全然ハッピーエンドじゃないから。だから慰めるような歌が必要だ。それをお願いしたいんです”というようなことを言われて。曲調に関しては特に何も言われなかったんで、お任せいただいて。

――じゃあ、あとは二階堂さんが作って、それを監督に送って、というようなやりとり。

二階堂:そうです。それが11月の半ばだったので、ピアノを弾いてくれる(黒瀬)みどりさんとデモを作って送って。それから何回かやりとりがあって完成……という流れです。

――今まで依頼があってそれに沿ってものを作っていくご経験もおありになると思うんですが、今回の監督との作業はいかがでしたか。

二階堂:監督のご指摘は、作り手(私)と同じ熱量というか感覚で言ってくださるんです。私もそう思ってるんだけどできてない、というようなところをもうひと押しして”できるでしょう!”というような。ここはどうかなと思いながら当ててた詞なんかを、ビシッと指摘してくるんですよね。わー見破られてる!っていう(笑)。全部お見通しだなと思って。そういうやりとりが気持ちよかったんです。同じ感覚――と言うのもおこがましいですけど――で作り手に絶妙な刺激をくれる。

――自分の中にある可能性みたいなものを、監督に引き出していただいたと。

二階堂:うんうん、ほんとうにそうですね。

――完成した映画にご自分の歌が流れてるのを見た感想はいかがですか。

二階堂:ほんとに物語の終わりが”えーっ!”って感じなんですよね。でも長いスタッフロールの間に歌が流れて、見終わってのいろいろとやりきれない気持ちが浄化されて、すっきりして劇場を出る、という。監督から言われたのはこういうことなんだなと。自分自身が納得して見終わることができたので、なんとか役目は果たせたかなと思います。

――これは監督に訊くべきことかもしれませんが、物語の中で「すっきりした終わり方」にしなかったのはなぜなんでしょうか。

二階堂:うーん、それが現実だと思ってらっしゃるんじゃないですかね。この世の本質というか。生きるということもハッピーエンドじゃない。必ず終わりがくる。でも悲しみばかりじゃない。そこから見えてくる希望みたいなものもある。そこまで全部含めて、これが真実なんだと。だから『火垂るの墓』(1988年)のやりきれなさも、あれこそが真実。あくまで私の解釈ですけど。私も仏教がいつも身近にあって、同じことを思っているので。なので監督が作れば自然とああいう形になるんじゃないでしょうか。

――どのみち終わりは来るんだけど、それを残された我々が生きる力に変えていく。そういう役割を二階堂さんの歌に託したということなんでしょうね。

二階堂:私はそう認識してますね。それをやってくれって意味で、慰めるような曲を、と言われたんだと思います。

――なるほど。で、主題歌を作られて、それが『ジブリと私とかぐや姫』というフル・アルバムに発展していったわけですね。

二階堂:ジブリ映画はサントラとは別に、それに関連した歌を作って歌集みたいなアルバムを出してるそうで、まあそれならとりあえず映画を見せてもらってからかな、と。でもなかなか映画は完成しない。私も一向に新曲を書かない。そのうち、過去の高畑作品に使われていた曲をカバーしたらどうかって案がプロデューサーと監督から出てきて。選曲はあちらにお任せしました。それで半分は『かぐや姫』からイメージした私のオリジナル、半分はカバーで構成しようということになったんです。で、プロデューサーがアルバム・タイトルを”これしかないでしょう”とつけてくださったんですけど…”えーーっ!”って(笑)。<私と>が入ってくると…… 。

――『かぐや姫の物語』のイメージ・アルバムということであればコンセプトは明快だけど、「私と」が入るとちょっとニュアンスも変わってくる。

二階堂:そうなんですよ。<私と>っていうほどジブリ作品に密接に関わっていないし…そこで『にじみ』収録の<めざめの歌>を入れさせてくれと申し入れたんです。<めざめの歌>も『かぐや姫』のテーマと通じるものがあるし、監督もこの曲を気に入ってくださっていたので。もともとこの曲はオーケストラでやってみたいって希望があったのと、より広く聴いてほしいという願いがあったんです。その要望が通って、このタイトルに収まりました。

後編「狂気みたいなものはずっとついて回る」僧侶となった二階堂和美が“宅録時代”を振り返るに続く
(取材・文=小野島大)

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