亀田誠治がEテレ『亀田音楽専門学校』で、J-POPのヒット術を明かす(第5回)
KREVA×亀田誠治がテンポの秘訣を解説 曲調を一瞬で変える“BPMマジック”とは?
BPMマジック
亀田はさらに、BPMを活用した秘伝のテクニックを紹介。小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を例に、BPMが一定にも関わらず、パワーゾーンからバラードゾーンに突然変わったように聞こえる手法=BPMマジックについて解説した。同曲は、サビでは一小節の中に4拍のドラムが入っているが、平歌に入った瞬間、一小節のドラムが2拍になっている。すると、BPMは同じでもゆっくり聴こえるようになるという効果が生まれるのだ。また、拍の数が少なくなるため、そこに込められる情報量が多くなり、歌詞にスポットライトが当たる効果もあるという。
小泉今日子の「潮騒のメモリー」の場合は、上記とは逆のパターンが使用されている。すなわち、曲の途中で泊の数が倍になり、元気な印象に変わるのだ。亀田はこのテクニックを「倍テン」と呼び、バラードゾーンとパワーゾーンを一曲の中に入れることによって、感情の振れ幅を表している、とした。
KREVAが選ぶテンポが絶妙な名曲
KREVAはテンポが絶妙な曲として、久保田利伸 の「Love Reborn」を紹介。BPM64の同曲を「バラードゾーンの中でもかなり遅いほうだと思うんですけど、遅さを感じさせない。遅いことを気づかせずに聴かせるのが絶妙なテンポ感だなと思います」と評した。亀田は「グルーブの中にいろんな息遣いが見えるんだよね。(中略)久保田さんには、おいしく聴かせられる自分の中の絶対的なBPMっていうのがあるんでしょうね」と付け加えた。
続いては、亀田が初めてスピッツと作ったという「さわって・変わって」をセレクト。BPM136の同曲は、例の「倍テン」が効いた一曲だ。KREVAは「この速さがあってこその『さわって・変わって』だと思うんですけど、倍テンによってさらに弾けている。良い速さに設定されている」と、そのテンポ感を称えた。
最後にはBPM142、Y.M.Oの「君に胸キュン。」を選び、「すごく速い曲なんだけど、速い曲を聴いているなっていう感じにはならないし、ちゃんと言葉も入ってくる。今の時代のスピード感にも合っている気もする」と、1983年発表の同曲を再評価する姿勢を見せた。
講義の終わりには、亀田がベース、KREVAがボーカルを務めるスペシャルバンドで、Y.M.Oの「君に胸キュン。」を演奏。BPMマジックや声のエフェクトなどで大胆なアレンジし、テンポの妙を伝える演奏となった。
亀田は総括として「テンポは曲にさまざまな表情をつける重要なファクター。特に日本人は行間とか間を大切にする民族なので、ひとつの音符にどれだけ込めるかっていうところは大事。今度、音楽を聴くときはどうしてこのテンポなのか、気にして聴くといいかもしれませんね」と締めた。
『亀田音楽専門学校』、次回11月7日の放送では「韻をふんだっていいんじゃない」というテーマで、引き続きKREVAがゲスト出演する予定だ。
(文=編集部)