亀田誠治がEテレ『亀田音楽専門学校』で、J-POPのヒット術を明かす(第5回)

KREVA×亀田誠治がテンポの秘訣を解説 曲調を一瞬で変える“BPMマジック”とは?

 音楽プロデューサーの亀田誠治がJ-POPのヒット曲を分析するテレビ番組『亀田音楽専門学校』(NHK Eテレ)の第5回が10月31日、23時25分より放送された。

 同番組は、亀田が校長、小野文惠NHKアナウンサーが助手を務め、毎回さまざまなアーティストがゲスト出演する全12回の教養番組。今回のゲスト講師にはラッパーのKREVAが登場し、亀田とともに「七変化のテンポ学」について講義した。

 KREVAは会場に、ヒップホップ・ミュージシャンには欠かせない様々な機材を用意。ブレイクビーツの発展に大きく寄与したサンプラーの名機、AKAIのMPCや、CDや音楽データでのスムーズなDJプレイを可能にしたPioneerのCDJ、世界中のクラブで使用される最高峰のDJミキサー、PioneerのDJMなどの立派な機材に、小野は興味津々。KREVAが軽くスクラッチをしてみせると、小野は「おぉ~」と目を丸くした。

テンポが曲にイメージを与える

 今回の講義のテーマである“テンポ”とは、同じ感覚で刻まれる基本的なリズムのこと。このリズムが早いか遅いかで歌の印象は大きく変わってくる。スタジオでいくつかテンポの違う曲を聴くと、人は早い曲の時は縦に、遅い曲の時は横に“ノる”傾向があることが判明。亀田はこの現象を「テンポが曲に与えるイメージ」であると説明し、「たとえば『涙そうそう』でも速く歌うと激しい印象になってしまう。その曲に一番合ったテンポを設定してあげることが大事」と補足した。

 続けて、テンポを数値化したBPM(Beats Per Minute)について解説。BPMとは、1分間に何拍打つかを表した数値で、たとえばBPM60なら1分間に60拍、時計の秒針と同じテンポであると説明した。さらにaikoの「カブトムシ」はBPM74、GLAYの「誘惑」ならBPM181であることを明かし、亀田は「BPM90以下はバラードゾーン、BPM120以上はパワーゾーン。バラードゾーンではしっとりとかキュンキュンとか、悲しみとかいうイメージ。パワーゾーンでは元気とかワクワクといったイメージがある」と語った。

 小野が「バラードの定義はなんですか?」と亀田に訊くと、亀田は「亀田式バラードの定義はBPM90以下。僕の中でのバラードはテンポで決まります。BPMが早くなると一拍の長さが短くなります。そうすると、一拍に込められる情報量が減るんですね。逆に曲のテンポが遅いと、歌手が一拍に込められる情報量が多くなる。ということで、BPMを曖昧にして、実際の現場で音楽を作る時に『もっとしっとり』と指示を出しても、曖昧な音楽にしかならないんですね。曲に適したテンポをしっかり設定しないと、表現しきれないんです」と、テンポによって印象が変わる理由を説明した。

 KREVAが「校長のパワーゾーンを教えてください」と、“亀田節”の核心に迫る質問をすると、亀田は「めっちゃ秘密やで」と苦笑いをした後、「僕は135くらいが好きですね」と明かした。対してKREVAは「僕は138です」と話し、二人の感覚が近いことが判明。また、バラードゾーンに関して亀田は「絶対83。まずは83から作り始める」と、亀田式バラードの秘訣まで語った。

BPMを変えると歌の印象はどう変わる?

 続いては、曲のテンポを落として演奏すると、どういった変化が現れるかを実践。まずは米米CLUBの「浪漫飛行」を、BPM137から115に落として演奏。小野は「曲が優しくなりました」と感想を話した。さらに、宇多田ヒカルの「First Love」をBPM90から80に落として演奏。かなりスローになった曲に対し、亀田は「僕はこのテンポじゃ歌えません」と歌うのを止めた。なぜ歌えなくなったかについて、亀田は「先ほど一拍の音が長いと、たくさんの情報を込めれると話しましたが、長すぎるとあまりにトゥーマッチで、息切れしてしまうんです。もしこの曲を本当に80でやりたいのであれば、言葉をもっと詰め込んだりとか、いろんな工夫をしなければならない」と話した。続けて「パワーゾーンとバラードゾーンをきちんと把握して、ベストなBPMを発見すること。それが名曲を生む秘訣。テンポは曲の土台なので」と、テンポの重要性を改めて強調した。

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