石野卓球『WIRE13』開催直前インタビュー(前編)

「重要なのはフィジカルで楽しめるかどうか」石野卓球が語る、『WIRE』の不変のコンセプト

インタビュアーは、リアルサウンドでも執筆する音楽評論家の小野島大氏。

――15年、WIREを続ける中で、ご自身のテクノ観というのは変わりましたか?

卓球:そこはほとんど変わらない。一貫したトーンで15年やってきているし、もしそこが変わっていたのなら、もっと流行とかに左右されていたんじゃないかと思う。たとえばデジロックとか、2ステップとか、エレクトロニカとか、いろいろ流行ったけど、それを積極的に採り入れようということはなかった。ただ、過去にビッグビートのアーティストが出てきたこともあるように、そこにも明確な線引きがあるわけではない。自分が好きな音っていうのももちろんあるんだけど、全員ダンス・アクトであることが重要で、ジャンルは後から付いてくるというか。

――ロサンゼルスからはジョルジオ・モロダー氏が来日します。

卓球:最初は呼ぶ予定はなかったんだけど、(今年5月の)ビルボードでの公演を見て、もしWIREに来てもらえたら、踊るのが好きなお客さんは喜ぶと思って。それで、ダメ元で声をかけてみたら、来てくれることになったんだよね。彼は海外では、テクノというより、ディスコとかエレクトロディスコというジャンルで呼ばれているみたいだけど。

――ステージ外のことについても聞きたいのですが、WIREではプレイ中以外の時間は何をしていますか?

卓球:基本的にはいろんなフロアーを観て回っている感じ。楽しいイベントだと思いますよ。テクノが好きな人にとっては、好みじゃない音楽の時間帯がないというか。ある程度、方向性が絞られたテクノだから、「今、このロックを聴く気分じゃないな」っていうことにはならないと思う。そこがほかのフェスと一番違うところかな。

――音響や照明に関しても、かなりこだわっていますね。

卓球:そう、そこがダメだと、せっかくいいアクトをしてもらっても、よくない音に聴こえてしまうことがあるから。毎年、機材がグレードアップするとか、そういうことではないんだけど、横浜アリーナの音響特性もちゃんと把握した、テクニックのあるエンジニアにやってもらっています。音も「デカけりゃいい」ってものじゃないからね。

――オーガナイザーとして、どういう音を目指していますか?

卓球:やっぱり心地いい音かな。言い換えると、長くいても苦痛にならない音。ロックとかだったら平気だけど、ダンス・ミュージックだとフロアーにいる時間が長いから、あまりデカい音だと疲れるんだよね。そして、そういう風に苦痛になって一回ロビーとかに行くと、もう戻りたくなくなっちゃったりするから。

――音響以外で快適に過ごせる工夫は?

卓球:一昨年まではアリーナの端と端にブースがあって、片方がライブで片方がDJという配置になっていたんだけど、去年からブースの向かい側をシート席にして、休みながら観れるようにしてあります。それに時間帯も夕方の6時からやっているし、それこそ終電で帰ったとしても充分に楽しめると思う。今年は渋谷からシャトルバスも出ているし、大人のお客さんにもゆっくり楽しんでもらえたらいいなと。

後編:「このメンツではもう観られないかも…」 石野卓球が『WIRE13』のアクトを語る

(インタビュー=小野島大/写真=竹内洋平/構成・文=編集部)

■イベント情報

『WIRE13 -15th ANNIVERSARY SPECIAL-』supported by Music Unlimited
公演日:2013年9月14日(土)
会場:横浜アリーナ
時間:開場 / 開演 18:00 (オールナイト)
チケット:一般前売り (6/29~)11,550円 (税込・オールスタンディング) 

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