本日『プロフェッショナル』出演! e-Sportsの開拓者=プロゲーマー・梅原大吾とは何者なのか

プロゲーマー・梅原大吾とは何者なのか

 プロゲーマーの梅原大吾(ウメハラ)が、3月19日19時30分より放送の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演する。番組内では、YouTuberのHIKAKINとともに「時代が生み出した新たな職業」に携わるプロフェッショナルとして特集されるとのこと。「なぜ格闘ゲームをプレイするようになったのか」、「ゲームや選手活動から離れた空白の8年間」といった部分を掘り下げる。

 ウメハラと言えば昨今のe-Sportsシーンを語る上で欠かせない存在だが、そもそもどんな人物なのかーー本記事では、プロフィールやエピソードを交えながら、ウメハラの歩んできた道を振り返る。

自ら切り開いたプロゲーマーの道

 ウメハラは『Red Bull』『Cy Games』『HyperX』『NSURGO』という4つの企業とスポンサード契約を交わし、格闘ゲーム歴25年を越えた今でもアクティブに動き続けるプロゲーマーだ。早くからゲームセンターで格闘ゲームにのめり込み、中学生の時点で全国ランカーに匹敵するテクニックを身につける。そして1997年、ウメハラは高校生にして『ヴァンパイアセイバー)』(カプコン)の全国大会で並みいる強者たちを払いのけて優勝する。翌98年には、「ストリートファイターZERO3 全国大会」で優勝を果たし、日本代表として全米チャンピオンと対戦。見事に勝利し、世界一の座を手にした。

 2010年には、「最も長く賞金を稼いだプロゲーマー」としてギネス記録に認定されているウメハラ。この経歴から「華々しい活躍で、順風満帆にキャリアを築いてきた」と感じるかもしれない。しかし、2000年代前半には「プロゲーマー」という職業は一般に認知されておらず、ゲーム活動一本で生活することは不可能だった。

 そこでウメハラは20代前半から約3年間、同じく“勝負”の場である麻雀の世界でプロを目指しーーかなりの実力だったと言われるが、作法やゲーム性に違和感を持ち、やがて介護職の道に進んだ。2009年に『ストリートファイターⅣ(カプコン』で復帰するまで、苦悩を抱えながら、人生をかけてきた格闘ゲームとは縁のない生活を送っていたのだ。そして、復帰後は、当のウメハラ自身がプロゲーマーという道を切り開き、2018年現在は選手として大会に参加するほか、後進のプロゲーマー育成、ゲーム関連イベントの企画・運営など、e-Sports及びプロゲーマーの地位向上に大きく貢献している。

伝説の一戦と、言葉の重み

 ウメハラが持つエピソードの中で最も有名で、かつその後の格闘ゲーム界に大きく名を残したのは、2004年に開催された格闘ゲームの祭典『Evolution(EVO)』での1シーンだろう。

 その出来事は『ストリートファイターⅢ3rd STRIKE』(カプコン)部門のルーザーズファイナルで起こった。アメリカの英雄、ジャスティン・ウォン選手が操る春麗は、残り体力1ドットになったウメハラのケンに必殺技の鳳翼扇を放つ。ガードで受けても体力が削られて負けという絶体絶命の状況だ。ここでウメハラは、春麗の鳳翼扇を全てブロッキング(相手の攻撃にタイミングを合わせてレバーを入れることで、ダメージを完全に無効化し、有利な状況を作る技術)し、逆に春麗へカウンターを決めてKO。敗者復活戦の決戦という状況でギャラリーも数多く観戦、その上、本タイトル最強キャラとされる春麗に対し、絶対的に不利な展開から勝利したことで、会場は熱狂の渦に包まれた。この模様は「背水の逆転劇」として、10年以上経っても世界中で語り継がれている。

 2012年に『勝ち続ける意志力: 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』、2013年には『勝負論 ウメハラの流儀』と、ゲームという領域を超えた人生観を語る著書がベストセラーになり、ゲーマーならずとも知られるところになったウメハラ。2017年1月19日に慶應義塾(慶應丸の内シティキャンパス)で講演した際には、これまでのプロゲーマー活動を通して得た経験から、「ゲームに飽きるとはどういうことか」について見解を述べた。曰く、「ゲームに飽きるんじゃない、成長しないことに飽きるのではないか」。ゲーム以外の多くのことに通じるこの発言は各SNSや動画サイトで反響を呼び、多くの人々に問題を提起する結果となった。このように、ウメハラには名言が多い。

ファン制作の“もしも動画”が現実のものに

 ちなみに、今からさかのぼること7年前の2011年、動画共有サイトに「もしもウメハラがプロフェッショナルに出したら?」という体でPV風の動画が投稿され、話題になった。これは公式によるものではなく、あくまで一般ユーザーが制作したものであるが、当時、本当に番組出演を果たすと予想できた人がどれだけいただろうか。

 「e-Sports」という言葉が広く使われるようになるはるか前から、ゲームに生き、ゲームに悩み、プロゲーマーという生き様を見せてきたウメハラ。『プロフェッショナル 仕事の流儀』への出演で何を語り、視聴者に何を伝えるのか、今から楽しみだ。

■龍田 優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。
時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。
『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。
個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit

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