マッチングアプリと“出会い”の歴史ーー「Dine」上條景介氏に聞く

第3世代を迎えたマッチングアプリの歴史

 出会いのツールとして広く利用されるようになり、「第3世代」と言われる新たなサービスが登場している、マッチングアプリ業界。その最新状況とカルチャーにおける意義を探る本特集のガイドとして、まずは「歴史」から紐解いていく。デート率の高さで話題を広げるマッチングアプリ「Dine」を展開する、Mrk & Co代表の上條景介氏に聞いた。(編集部)

ネットの普及とほぼ同時に始まったマッチングサービス

――マッチングアプリの歴史について聞かせてください。

上條景介(以下、上條):マッチングアプリはアメリカ発祥で、1995年――実はインターネットの普及とほぼ同時に始まっています。そのなかでもっとも成長したサイトが、現在も世界25カ国で展開し、多くのユーザーを抱えている「Match.com」(マッチ・ドットコム)です。

 一方、日本では携帯電話IP接続サービス「iモード」(1999年サービス開始)の時代から始まり、「スター・ビーチ」(STAR-BEACH)や「エキサイトフレンズ」などのサービスが生まれましたが、“出会い系”というネガティブな意味を含む言葉にまとめられてしまい、市場が大きく成長することはありませんでした。実際、サクラを使って詐欺を働く業者が横行したり、一部で売春の温床になったりという問題があり、そのような負のイメージを20年間引きずることになりました。

――アメリカでは、“出会い系”のような問題は生じなかったのでしょうか?

上條:アメリカでも悪質なサイトが多数登場しましたが、IAC(InterActiveCorp)というインターネットメディア企業が「Match.com」や「OkCupid」(オーケーキューピッド)などの主要なマッチングサービスを買収し、健全に規模を拡大することで、業界自体が成長してきたという背景がありました。

 ただ、現在のような爆発的な広がりを生むには、その後、少し時間を要します。1995年から2010年くらいまではPCの世の中で、完全有料だったサイトが少し無料で使えるようになったり、あるいは宗教や信条、LGBTなど細分化したサービスが登場したりという変化はありましたが、基本的なモデルは「検索型」から変わらなかった。これが業界的には「第1世代」と呼ばれるところです。

スマホの登場で、時代は「第2世代」へ

――そこからスマートフォンの登場というブレイクスルーがあったわけですね。

上條:スマホが出現し、時代が急速に変わったことを象徴するのが「Tinder」(ティンダー/2012年サービス開始)というアプリです。これまでメインだった検索の機能を取り払い、スワイプだけで好みの相手を探し、手軽にメッセージが送れるという部分がクールだということで、ロサンゼルスの学生から、噂が噂を呼んで世界中に広がっていった、というのが直近までの経緯で、この流れにあるものが「第2世代」です。

 ただ、時代の流れは加速しており、アメリカの調査会社が発表している「Tinder」のユーザーを対象にしたアンケートによれば、恋活や婚活に使用しているユーザーは10%に満たず、およそ35%のユーザーは、「エンターテイメント」が目的だと回答しています。要するに、出会う目的ではなく、ただ異性の写真を見るのが楽しいと。また、3位には「エゴブースト」が挙がっており、つまりマッチ数により「自分はイケてる」という承認欲求を満たしているということです。マッチングという本来の機能から、一つの娯楽になっているというのが、「Tinder」の現状だということがわかります。

 出会うことにモチベーションが低いユーザーが多数を占めるなかで、本気で出会いを求めるとなると、よほどコミュニケーションに長けていなければ難しい。そして、いわゆる“遊び人”的な人はコミュニケーション能力が高いケースが多いんです。「Tinder」は数千万MAU(月あたりのアクティブユーザー数)という規模を誇ると言われていますが、結局、女性はそういうユーザーに集まっていくという、いわば「フックアップアプリ」というイメージも広がってしまっているんです。

――本気でパートナーを見つけたい、という人たちが、出会うことが難しくなってしまっている状況もあると。

上條:本気で恋がしたくてマッチングサービスを利用している人たちは、コミュニケーションがそれほど高くない、という傾向もありますから、アメリカの人たちもそこにフラストレーションを感じていますし、本来の目的である出会いを提供するというのは、全世界的な課題になっていると思います。その点、第1世代の検索型マッチングアプリは出会うことに対しては有効なのですが、40代以上のユーザーが多く、20~30代の婚活・恋活のメイン層が使うアプリが実はない、という状況があります。

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