マッチングアプリと“出会い”の歴史ーー「Dine」上條景介氏に聞く

第3世代を迎えたマッチングアプリの歴史

日本のマッチングアプリ市場は、どこまで伸びるか

――海外と比較して、日本のマッチングアプリ業界はどのように推移してきたのでしょうか。

上條:日本のマッチングアプリの先駆けは、2012年2月にリリースされた「Omiai」(オミアイ)、その半年後にスタートした「Pairs」(ペアーズ)です。フェイスブックと連動したことで、“出会い系”のような怪しいユーザーを排除することが可能になった。日本はキャッチアップが早いので、アメリカが10年、20年かけて成長させてきた市場を、ここ5年ほどでなぞり、現在は第1世代型、第2世代型が混合して、市場を伸ばしているという状況です。

――日本のマッチングアプリ市場は、どこまで伸びると見込まれますか。

上條:サイバーエージェント社の子会社であるマッチングエージェント社のレポートによると、いわゆる“出会い系”を除いた現在の市場は、だいたい200億円ほどです。アメリカの市場規模が2000~3000億円と言われていて、間を取って2500億円と仮定すると、日本の人口はアメリカのおよそ3分の1ですから、800億円ほどのポテンシャルがあるのではと。また、日本人はLTV(顧客生涯価値)が非常に高く、インターネットのコンテンツにも高額を支払う傾向にある。ですから、日本のマッチングアプリ市場は現状から5倍は伸び、1000億円まではいくだろうと仮定しています。

――そして、急速にキャッチアップが進んでいる日本で、「第3世代」となる「Dine」(ダイン)がリリースされました。マッチングする際にデートするレストランを指定する、という新しい機能が話題になっていますね。

上條:第2世代のマッチングアプリが抱える「デートに行けない」という課題を解決するために生まれたアプリです。ターゲットは明確で、ある程度大人でリテラシーが高く、またデートに至るまでのメッセージのやり取りに煩雑さを抱えている人ですね。昨年11月1日より、iPhone版のみ東京限定で正式リリースしましたが、毎月すべての数字が1.5倍~2倍ほどに増えており、存在感を示せる規模までは成長できるだろうと考えています。

――飲食店を予約して初めて会う、という意味では、合コンのようなものも想像されますが、グループ同士をマッチングさせる機能もあるのでしょうか。

上條:一応「友だちと一緒に」という機能はつけていますが、デーティング文化が普及したアメリカではほとんど使われませんし、時代に逆行しているものではあると思います。恋愛活動において、合コンというのは実はとても非効率で、例えば、「いかに場を盛り上げるか」など、その場の空気をつくることに労力が割かれてしまう。誤解を恐れず言ってしまうと、本気で恋愛をネットで探す世の中になっていくと、“友だち”は邪魔な存在にもなるんです。もちろん、友だちと一緒であれば、マッチングアプリを使ったことがない人にとってはハードルが下がりますが、日本人もフェイスブックを実名で使うのが当たり前になったように、そのハードルもすぐになくなっていくはずです。

日本にも欧米的なデーティング文化は根付くか

Dineスクリーンショット

 

――「Dine」の今後も含めて、マッチングアプリ市場、文化はどう推移していくでしょうか。

上條:「Dine」のようなアプリが浸透すれば、デートに行ける確率は飛躍的に上がると思います。そこからはまた別の課題があり、つまり出会うことはできるとして、長く付き合う恋人ができるか、結婚まで本当に結びつくのか、ということです。さまざまな理由がありますが、実はネットがなく、出会いの数自体は少なかった昔のほうが、婚姻率が高かったことからもわかるように、人は出会いの数に比例して、生涯のパートナーを決めやすくなるというわけではないんです。いまのフェーズは「アプリからオフラインで出会うことがなかなかできない世の中」だと考えていて、「Dine」を通じてこれを解決しようとしていますが、その次の課題に対しても有効な仕組みをどんどん考えていきたいと思います。

――まずはアメリカに追いつく、というところで、ネットでのマッチングが当たり前、というデーティング文化が日本にもしっかり根付くには、どれくらいの時間がかかると思いますか?

上條:10年は絶対にかからず、5年くらいじゃないかと考えています。IT業界やそれに近い人たちにとって、マッチングアプリはすでに普通のものになっていますし、これが「ネットが怖い」と思っている人や、地方の方々にも普及してくると、加速度的に変わっていくと思います。ひとつ重要なのは、テレビCMの解禁がなされるかどうか。いまは“出会い系”の時代ではなく、健全なサービスが提供されるようになってきています。「パパ活」や「ギャラ飲み」を標榜するアプリが売春につながっていたり、健全なマッチングアプリ市場が形成されれば、その裏ではけ口のようにグレーなアプリも出てきてしまうのですが。ユーザーさんにもそうしたことを見極める力を持ってもらいつつ、課題を解決しながら、誰もがマッチングアプリを通じて出会い、パートナーを見つけられる世の中にしていくことができればと考えています。

(取材=編集部)

 

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