『海月姫』が“月9”を救うカギとは? ドラマのネット戦略を分析

近年に見られるドラマのネット戦略を分析

 2018年1月クールの新ドラマがおおよそ全て出揃った。放送された第1話の視聴率を並べて見ると、前クールで視聴率トップに立った『ドクターX ~外科医・大門未知子~』のバトンを受け取った木村拓哉主演『BG~身辺警護人~』の第1話が、数字は落ちるも15.7%(以下、ビデオリサーチ調べ、関東地区)と堂々のトップを飾り、テレビ朝日同枠の人気を見せつけた。そのほか、TBS系人気ドラマのシーズン2作目、松本潤主演の『99.9-刑事専門弁護士-SEASON II』が15.1%、Hey! Say! JUMPの山田涼介が主演を務める日本テレビ土曜ドラマ『もみ消して冬 ~わが家の問題なかったことに~』が13.3%と続き、ジャニーズ事務所所属タレントが主演を務める作品が並んでいる。

 視聴率が続々と発表され、過去にヒット作を世に送り出してきた脚本家の新ドラマなど、期待通りの数字を出すドラマもあれば、第2話まで放送された作品の中には、すでに下降気味の作品も見受けられる。毎クール視聴率が話題に上がるフジテレビの今期月9ドラマは、芳根京子主演の『海月姫』で、第1話は8.6%を記録。まずまずの滑り出しと言えるだろう。

 ドラマの黄金期を築いてきたフジテレビの“月9”。1991年の『東京ラブストーリー』以降、『101回目のプロポーズ』、『ひとつ屋根の下』、『あすなろ白書』、『ロングバケーション』、『ラブジェネレーション』などが高視聴率を叩き出し、月9ドラマの地位を確立してきた。しかし、昨今は録画での視聴やテレビ離れも影響し、テレビドラマ自体の視聴率も低迷。昨年、月9で放送されたシリーズ3作目となる『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』が平均視聴率 14.6%で奮闘したものの、次の『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』は平均視聴率6.7%の記録に終わっていた。

 だが、視聴率に限らず、SNSなどを集計し、今熱い番組・人物・コトバからテレビの流行に迫る新指標である“視聴熱”という言葉も最近はよく聞く。昨年のTwitter Japanが発表した、「2017年で最も使われたTwitterハッシュタグランキングトップ10」の「テレビ番組」項目には、「#僕たちがやりました」「#僕やり」が並んだ。これは、平均視聴率 6.1%(ビデオリサーチ調べ)を記録した窪田正孝主演ドラマ『僕たちがやりました』(関西テレビ・フジテレビ系)の結果である。本作のタイトルは、Googleが発表した、検索の際に入力されるキーワードのうち、前年に比べて検索数が急上昇したものを並べた「2017年Google検索ランキング」の「ドラマ」部門でも、5番目にランクイン。その他にも、“大河ドラマ史上、視聴率ワースト2位”と叫ばれた『おんな城主直虎』(NHK)のハッシュタグである「#おんな城主直虎」が、「2017年で最も使われたTwitterハッシュタグランキングトップ10」に入った。

 最近のドラマでは、そのようなネットの反響を上手く活用し、話題作りを行っている作品が多い。日本テレビ系のドラマ『トドメの接吻』、そして『海月姫』では、メインキャストの発表を、まずはじめに演じる役者本人たちのシルエットで公開。その直後、ネット上では、その人物が誰なのか様々な予想が飛び交い、翌週の本発表まで長く盛り上がりを見せていた。

 また、Twitterハッシュタグも工夫されている。前述した『僕たちがやりました』では、2つのパターンのハッシュタグがトップ10にランクインしていたが、このように番組側がドラマタイトルを省略するなどのオリジナルでハッシュタグを作り、視聴者への投稿を促す動きも見られる。昨年放送された『過保護のカホコ』(日本テレビ系)では、放送10分前から視聴者の皆でツイートをするようにと、毎話に渡って「#過保護のカホコころころころりん」「#過保護のカホコリピートアフターミー」など、投稿用のハッシュタグワードを発表。それらは視聴者だけではなく、出演者のTwitterでも投稿された。映画『天空の城ラピュタ』が地上波で放送される度に、「バルス」という言葉が同タイミングでツイートされ話題になっているが、それと同じように、テレビの前ではネットを介して皆で共有しているという感覚が体験でき、テレビ番組をリアルタイムで視聴することへの新たな面白さを生み出している。

 その他にも、ドラマオジリナルのLINEスタンプや、主人公のキャラクターがAIで返事をしてくれるLINEアカウント、YouTubeやInstagram上で収録現場でのメイキング写真や映像を公開したりと様々な試行錯誤が練られている。『海月姫』でも、ドラマ公式アカウントから、要潤演じる花森よしおの恋愛指南のセリフが届く『#教えて花森さん 〜花森さんの恋愛指南〜』キャンペーンの展開や、瀬戸康史が女装美男子・鯉淵蔵之介になるまでの変身の模様を追ったメイキング映像が配信されている。

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