恋愛ドラマの女王・北川悦吏子の新境地! 進化系イケメンドラマ『運命に、似た恋』が面白い

 NHKで金曜夜10時から放送されている『運命に、似た恋』が、どんどん面白くなってきている。本作は、原田知世が演じる高校生の息子がいる45歳のシングルマザー・桜井香澄(カスミ)と斎藤工が演じる一流デザイナーの小沢勇凛(ユーリ)のラブストーリー。脚本は、連続ドラマは久しぶりとなる恋愛ドラマの女王・北川悦吏子。『セカンドバージン』や『はつ恋』など、NHKは大人の女性と年下のイケメン男性のラブストーリーを作り続け、大石静や中園ミホといった女性脚本家の新境地を切り開いてきた。

 本作もまた、その流れを汲む大人のラブストーリーだと言える。しかし、そこは『ロングバケーション』(フジテレビ系)を筆頭に数々の名作恋愛ドラマを紡いできた北川悦吏子だけあって、一筋縄ではいかない作品となっている。

 最初に本作が面白いと思ったのは、ユーリがカスミと話している時になりゆきで「壁ドン」のポーズになった場面。「あの~これ、壁ドン…知ってますか? あの~これ、壁じゃなくて車だから車ドン。二年前くらいに前に流行ったんです。ちまたで。テレビとかで」と照れながら斎藤工に言わせているのを見て、これはただのイケメンドラマではないなと思った。

 斎藤工は『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』以下、『昼顔』(フジテレビ系)で、上戸彩が演じる主婦と不倫する教師を演じてブレイクしたイケメン俳優だ。『昼顔』以降、バラエティ番組などの露出も増えた斎藤は、イケメン俳優として世間に注目されることに対する困惑を度々語っている。そんな斎藤自身の姿と、真面目に仕事をしているのに、外見だけで評価されることに苛立つユーリの姿はどこか重なって見える。

 面白いテレビドラマは、演者と役が抱えている悩みや心境をうまくシンクロしていることが多い。それがうまく重なると、虚構性と生々しさが作品に宿ることになるのだが、そんなフィクションとドキュメンタリ-の二重性を演じさせた時にもっとも面白い女優こそが、カスミを演じている原田知世だろう。

 原田は大林宣彦の映画『時をかける少女』で15歳の時にデビュー。『時をかける少女』で原田が演じたのは、ふとした偶然でタイムリープ(時間移動)ができるようになった少女・芳山和子だ。劇中の原田は、同じ教室の隣の席に座っていても不思議ではない生々しさと、フィルムの中にしか存在しえないファンタジックな美少女性が共存している不思議な女優だった。原田の面白さは一人の女性の中にある正反対の要素が平然と共存していることだ。今作ではそこに、大人と子どもという二面性が加わっており、高校生の子どもがいるシングルマザーでありながらも、少女の面影を残すカスミという役に見事にハマっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる