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『ゲーム・オブ・スローンズ』に並ぶ大作ドラマ誕生!? J・J・エイブラムス『ウエストワールド』への期待

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 本格的に2016年~2017年シーズンが開幕となったアメリカのテレビ業界。9月中旬あたりから、地上波を中心に各局の新番組や人気作の新シーズンが続々とプレミアを迎えている。近年はNetflixを筆頭とするオンライン動画配信サービスに完全に押され気味のテレビ局だが、地上派、ケーブル局ともに切磋琢磨して面白い作品、良質な作品を生み出しており、レベルの高いところで綱引き状態を保っている。ここにシーズンは関係なく、随時オンライン動画配信サービスのオリジナルシリーズが入ってくるわけだから、まさに米テレビ界は百花繚乱だ。視聴者の好みの細分化も著しい中で、常に米テレビ業界全体の質の向上を牽引し、テレビの常識を覆す画期的かつ映画に匹敵するスケール感を持つ作品を生み出し続けているのがペイ・チャンネルのHBO(R)である。

『ウエストワールド』プロモーション映像

 90年代終わりころからトップを走り続ける存在であり、今年のエミー賞ではドラマシリーズ部門の作品賞2連覇を果たした大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』、コメディシリーズ部門でも作品賞2連覇を果たした『VEEP』を冠する、米ドラマを語る上では欠かすことができない存在だ。ソフト化されていないので視聴が極めて困難な傑作『OZ/オズ』や『SEX AND THE CITY』、『ザ・ソプラノズ』、『シックス・フィート・アンダー』から、作風が地味すぎて、当初は視聴者数が少ないことでも知られた秀作『THE WIRE/ザ・ワイヤー』、いまだ映画化待望論のある西部劇『デッドウッド ~銃とSEXとワイルドタウン』、若者向けの題材と思われたヴァンパイアを大人が楽しめる過激な娯楽として描き切った『トゥルー・ブラッド』など、HBOは長きにわたって王者であり続ける上で、いくつかの転換期を経て現在に至っている。ここでは細かくは述べないが、今シーズンあたり、思い切った戦略による意欲作を見せてくれるのではないかと業界の注目がいつも以上に集まる中、現地時間10月2日についにプレミア(初回放送)を迎えたのが、同局では珍しいジャンルのSFに挑んだ『ウエストワールド』だ。

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 映画でもテレビでも大活躍のJ・J・エイブラムスと、『ダークナイト』『インターステラー』などの脚本家ジョナサン・ノーランがタッグを組み、製作はJJが率いるバッド・ロボット・プロダクションが手がける超大作。TVドラマ・シリーズへのレギュラー出演は初となるオスカー俳優アンソニー・ホプキンス、エド・ハリス、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジェームズ・マースデンといった国際的に知名度が高い映画スターの共演に加えて、総製作費は60億円超えと『ゲーム・オブ・スローンズ』に並ぶ。当然のことながら、かなり前から注目を集めていた企画だが、放送延期が続き、年初には撮影が2ヶ月も中断したことなどから不安の声もあがっていた。だが、ふたを開けてみれば批評家も視聴者も絶賛ムード。同局のここ3年間における初回放送としては最高となる330万人の視聴者数を記録して好スタートを切った。

 物語の舞台は、近未来。天才科学者フォード博士(アンソニー・ホプキンス)が創造した、体感型テーマパーク『ウエストワールド』で起こる、人間そっくりに作られたロボットと人間の攻防戦が大筋だ。第1話の冒頭から目を見張るのが、圧倒的なビジュアルセンス、映像の質の高さとスケール感である。現実社会から隔絶された、西部劇の世界へ客としてやってくる新参者=ニューカマーたちは、宿泊する町へと向かう列車の中から広大な景色を目にして感嘆の声を上げる。西部開拓時代の装いをした客たちは、当時の町並みと、そこに暮らすホストとよばれるロボットの娼婦やガンマン、悪党や保安官らとコミュニケーションを取りながら、娼婦と遊んだり、悪党を撃ち殺したりといった自分の興味の赴くままに、西部劇の登場人物になったつもりで楽しむのだが、この描写がHBO作品らしくリアルでエグい。

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 ホストは決められたシナリオ通りに振る舞うよう常にアップデートされ、役割を終えると記憶を消されて、また新たな朝を迎えるのだが、感情や自意識までも備えている。そんな彼らを撃ち殺しては歓声をあげ記念写真を撮ったり、民家を襲撃したり若い娘をレイプする客もおり、客をもてなすためにのみ存在するホストは泣き叫び、恐怖に怯え、血を流しながら息絶えていく。ホスト同士のモメごとも当然あるが、それはシナリオとして書かれたものである(はず)。ホストは自分たちの人生を生きていると認識しているが、実際にはその世界は虚構だ。ドラマは人間側ではなく、このAI(人工知能)の視点で描かれている点がポイント。それによって、これまで見てきたどのAIものよりも、客として訪れる人間の強欲さ、創造主であり管理者でもある人間の傲慢さが際立つ。同時に、視聴者はAIとシンクロして自分たちが見ているものが現実か虚構か、一見すると見分けのつかないホストと人間が共存する世界に不思議な感覚を覚えるだろう。

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 やがて、ニューカマーに傷つけられては記憶消去→再起動を繰り返してきたホストの中に、プログラミングから外れた行動を起こす者たちが現れる。極めて人間に近づいたAIが過去の記憶を再生したり、自らが認識する現実世界が虚構であると気づいたとしたら……? 昨今、何かと話題のAIだが、古くは『ブレードランナー』、最近では『エクス・マキナ』に近いものがあるだろうか。『エクス・マキナ』でも創造主の人間がAI搭載ロボットを痛めつける姿にぞっとしたものだが、本作は人気ゲーム『バイオショック』などからもインスピレーションを受けていると聞くと、筆者はゲームは一切やらないのだが、VRのような感覚で通常の倫理観など簡単に吹き飛んでしまう人々の姿に、疑問を抱かない視聴者も多いのかもしれない。そこにこそ、危機感を覚えるべきなのか。

      

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