>  > ISHIYAの『地獄に落ちた野郎ども』評

THE DAMNEDの姿勢は、パンク以外の何ものでもない! ISHIYAが『地獄に堕ちた野郎ども』を観る

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 SEX PISTOLS、THE CLASHと共に、ロンドン3大パンクバンドと呼ばれたTHE DAMNED。このバンドはハードコアパンクスにとっては無くてはならない存在である。SEX PISTOLSやTHE CLASHも確かに素晴らしいバンドではあるが、ハードコアパンクス達にとってはTHE DAMNEDこそが、初期70年代パンクシーンの中での最重要バンドと言っていいだろう。そのTHE DAMNEDのドキュメンタリー映画『地獄に堕ちた野郎ども』が公開されることは、日本のパンク界にとって重大な“事件”である。

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 THE DAMNEDのキャリアは、ブライアン・ジェームス(Gt.)在籍時と、キャプテン・センシブルがギターの時期、キャプテンが脱退しデイヴ・ヴァニアン(Vo.)中心となった時期、そして再結成後にわかれると思う。本作は、バンドのキャリアの全容を追っただけではなく、その内側にまで踏み込んだ秀逸なドキュメンタリーだ。監督を務めたのは、モーターヘッドのレミー・キルミスターを追ったドキュメンタリー「極悪レミー」を撮ったウェス・オーショスキーだと言えば、本作が日の目を見ることになったことにも納得がいくのではないだろうか。

 しかし、作中で一貫して「SEX PISTOLSやTHE CLASHは知られていても、THE DAMNEDは無名で知名度がない」との見解が示されているのは、甚だ納得がいかない。筆者のようなハードコアパンクスにとって、THE DAMNEDは神のような存在と言って良いほどだ。知名度云々どころか、楽曲はもちろん、私生活の噂に至るまで、あらゆることに刺激を受けている。

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 モーターヘッドのレミーも言っていたように、THE DAMNEDは最高のパンクバンドであり、彼らの存在無くしては、ハードコアパンクの楽曲も違った形になっていたかもしれない。それほど影響力があり、つくられたロックスターではない、本物のパンクスによる唯一無二のパンクバンドである。

 だが、本物のパンクスであるがゆえに、ほかの有名パンクバンドと違い、世に言う成功とは遠いところにいるのだろう。デビューアルバムをリリースした際は、プロデューサーのニック・ロウから酒を驕ってもらっただけで、それ以外に何も得なかったというエピソードからも、THE DAMNEDというバンドが理解できる。そういった部分も含めて、ハードコアパンクスに絶大な支持を受けているのではないだろうか。

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 とはいえ、楽曲の素晴らしさは折り紙付き。ブライアンが曲づくりの中心となっていた初期、キャプテンが中心となっていた時期、どちらも魅力に溢れている。音楽性によってパンクというカテゴライズさえぶち壊したという意味でも、真のミュージシャンといえよう。また、デイヴ・ヴァニアンが中心となった解散までの時期の曲も、ゴシック風でヨーロッパを彷彿とさせながら、デイヴ・ヴァニアンの歌唱力が光る名曲が多い。ライブの破天荒さも凄まじく、作中でも紹介される1977年のライブ映像などは、マニアでなくても惹かれるだろう。キャプテンの悪態っぷりが現在でも変わりないところも、THE DAMNEDの堪らない魅力となっている。

 デイヴ・ヴァニアンが作中で言うように、ほかのパンクバンドが政治的なメッセージを全面に押し出していた中、説教じみた歌詞をいっさいなくし、明白なことを言わずとも、自分たちの行動でパンクを体現していたのも、彼らが支持された理由のひとつだ。初期代表曲である「NEAT NEAT NEAT」は、社会的なメッセージこそ感じさせたが、あきらかに政治的ではなかったと、ブラアン・ジェームスも語っている。それこそが、彼らのオリジナリティだったのだ。

      

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