>  > 岩里祐穂×坂本真綾対談レポ

『岩里祐穂 presents Ms.リリシスト〜トークセッション vol.5』

岩里祐穂×坂本真綾が語り合う、それぞれの作詞の特徴と楽曲にこめた思い

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坂本真綾
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坂本真綾「ヘミソフィア」(作詞:岩里祐穂) 

坂本:私が次に選んだ「ヘミソフィア」は2002年にリリースされたシングルの曲で『ラーゼフォン』というアニメの主題歌でした。これはあらかじめ菅野さんから内容のオーダーがあったと思うんですけど。

岩里:菅野さんから「ヘミソフィア」というタイトルで書いてっていうオーダーがあって。「ヘミソフィアって何?」って聞いたら「半球」、それしか言わなかったの。半球? 半分? よくわからないままで。このときは『ラーゼフォン』の話もあまり詳しくしなかったかな。たしか青春、成長物語じゃない?

坂本:大体そうですね。アニメって主人公が成長する話ばっかりですから。

岩里:戦いながら成長する、そういうことなのよ。でも、半分、半球……うーん書けないなって思って。まずは半分をどう捉えるかっていうことと、少年が大きくなっていく成長していくっていうことから膨らませていきましたね。

坂本:よくそれだけでこんなに書けましたね。

岩里:<人生の半分も僕はまだ生きてない>。

坂本:<半分>出てきた。

岩里:これはすぐ浮かんだの。<逆らって 抱き合って>の部分の3行もすぐできた。

坂本:<タトゥー>もまた珍しい単語が出てきましたよね。

岩里:変わりたかったの。真綾ちゃんは変革したいときの私の詞を選んでる。

坂本:でもこの曲、さっきの「風の吹く日」なんか比じゃなくらい音符に対して言葉を詰め込みまくってますよね。

岩里:この頃はもう慣れっこだったから(笑)。

坂本:すごいですよ、早口言葉みたいなところありますもん。<気づく前に>のあたりとか。でも私、この曲をなんで選んだかというと、タイアップの曲ってどうしても派手なものを求められるんですよね。このアニメはロボットものだったし。勇ましい曲で作品に合っているなとは思ったんだけど、実は全然私の好みじゃなかったんですよ。

岩里:嫌いだった?

坂本:嫌いというか、ピンとこなかった。個人的には地味で暗いものが好きだから、派手で攻撃的で私には似合わない気がして。歌うときも、似合っていない服を着るようなかっこつけなきゃいけない感じがあった。


岩里:でもね、私はこの曲のときも坂本真綾のことしか考えてなくて、真綾ちゃんを壊したいって思っていたわけ。だからとにかく変化球を投げたかった。<崖っぷちに立たされたとき 苦難が僕の腕を掴み>は最初どうしようかなと思いながらも、けっこう攻めて攻めて攻めた詞です。

坂本:そうですね。1番びっくりしたのが<風ん中 あいつらは 死ぬまで立ち続けなければいけないのさ>のところで。「風ん中!?」って。「風の中」じゃダメなのかなと思いました。

岩里:そうなの。

坂本:もちろん音で言ったら<風ん中>なんですけど、見たことない詞だなと思ったんですよ。今までの自分の歌の中でも見たことないし、こういう言葉が並んでるポップスって見たことないなって。<ガゼル>って何? みたいな。初めて知りましたけどこの歳で。

岩里:一生懸命調べてね。

坂本:最初はそんな感じでぼんやり「すごいな」とか「この曲歌うとどうなるんだろうな」「似合うのかな」から始まって。

岩里:私がこの曲で一番好きなところ知ってる?

坂本:私はここが好き。<教えて“強さ”の定義/自分 貫く事かな/それとも自分さえ捨ててまで守るべきもの守る事ですか>。

岩里:一緒! よかった。そこはすごく好きなの。

坂本:ここはもう最初からもちろん好きで。

岩里:そこはまさに坂本真綾だったかもしれない。他の部分が攻めに攻めた攻撃的なものだとしたら、そこだけ真綾ちゃんっぽくない?

坂本:1番しっくりくるから最初から好きだったのかも。

岩里:私も好きだったから、すごく嬉しいですね。

坂本:いろいろ言ったけど、何でこの曲を選んだかっていうとやっぱり結局好きだからなんですよ。当時はこの曲のことがよく分からなかっただけなんです。崖っぷちに立たされたことが本当の意味でまだなかったから。だから、<苦難が僕の腕を掴み>って、言っていることは分かっても実感ではなかった。でも、人生の崖っぷちを経験した後でこれを聞くと涙が出るんです。本当にちょっと動いたら落ちるような崖っぷちにいるとき、もっと他の安心できるものに腕を掴んでほしいのに、苦難が僕の腕を掴んでる状況、ちょっと間違えたら奈落の底に落ちるっていう時を経てこの詞を見たら、こういう歌だったんだって分かって歌えるようになりました。だから、だいぶこの曲は歌ってなかったですね。ライブで歌うようになったのは歌えるようになってからで。

岩里:本当に?

坂本:そして、もう一つ好きなところは、<もう歩き出しているらしい>の部分。

岩里:自分のことをちょっと客観的に突き放して見ている自問自答系。

坂本:歩き出すって決めたわけではないけども、歩き出している。

岩里:なるほど。<らしい>がいいのね。

坂本:その語尾にグッときます。

岩里:嬉しい。この詞は、書けた! と思った。

坂本:最初はあんなに自分と距離がある歌だと思っていたのに、坂本真綾らしい世界観を書いてくださっていたんだなって後になって分かることもありますね。

岩里:ありがとうございます。

坂本:すみません、偉そうなことを。

岩里:それにしても「ヘミソフィア」みたいな言葉、どこから探してくるんだろうね、菅野さんは。

坂本:本当はスフィアだし、造語っていうか感覚で決めてらっしゃるみたいですね。

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