嵐の音楽性は“アダルト”と“デジタル”の融合へ 近作のサウンド傾向を読む

嵐
2014年に結成15周年を迎えた嵐。

 2013年にリリースされたアルバム『LOVE』について、私はかつて「メンバー全員が30代となり、落ち着いた大人の魅力を全面に打ち出したアルバム」と評した。「踊れる曲」というよりは「聴かせる曲」が中心、ミドルテンポでアコースティックな音をふんだんに取り込んだアルバムだった。そのため今後の嵐の作風はこのようなアダルト寄りに移行していくと予想したが、いい意味でその予想は裏切られた。なにせ次にリリースされたアルバムのタイトルが『THE DIGITALIAN』(デジタル人間)なのだから。そこで今回は2014年にリリースされた楽曲を改めて振り返りながら、嵐の「現在の音楽性」について考察していこうと思う。

 2014年にリリースされたシングル3枚はある意味でどれも「嵐らしさ」全開の作品だった。『Bittersweet』はアップテンポのダンサンブルなナンバー。『GUTS !』は元気いっぱい合唱ソング。そして『誰も知らない』は嵐の十八番であるミステリアス・ポップ。しかし収録曲も含めた細部を聴きこめば、それが単なる王道回帰ではないことが理解できるだろう。
    
 『Bittersweet』のイントロで聴こえてくるのは歌声をミニマムにカットし、ボコーダーを施した未来感あるサウンド。今振り返ってみると、すでにこの段階で『THE DIGITALIAN』の予兆を感じることができる。それは通常盤に収録され、久々のサクラップ炸裂でファンを沸かせた「Sync」でも同様。デジタル加工された歌声の中に、5人の個性がにじみ出る隠れた名曲だ。また同じく収録曲「もっと、いまより」では「もっと思うまま/変わり続けていたいから」と新たなスタートを切ろうとする嵐の決意を感じることができる。

 シングル総売上が2000万枚を突破、男性アーティストとして史上5組目の快挙となった記念すべきシングル『GUTS!』。この中にもデジタルという点で外せない曲がある。初回盤に収録された「Fly」だ。近未来を彷彿させるサウンドは、四つ打ちとエフェクトを巧みに使って構成されたもの。メンバーの歌声にもボコーダーが施され、まさに「デジタル人間」といった仕様だ。『GUTS!』は他にも壮大で美しいラブバラード曲「君が笑わるように」や『LOVE』路線を継承する大人なダンスナンバー「Love Wonderland」など、現在の嵐を表す象徴的な楽曲を収録している点で興味深い。

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