中森明菜のベスト盤が“想定外”の大ヒット中 本格的な復活へとつながるか?

 その後も、松田聖子における松本隆・呉田軽穂のような固定化された鉄板ソングライターチームと敢えて組むことはなく、曲ごとに様々なチャレンジを繰り返してきた中森明菜。1990年まで、途中「ミ・アモーレ」「DESIRE~情熱~」「Dear Friend」などのビッグヒットを挟みながら、約9年間という長期間にわたってトップ女性シンガーとして君臨し続けます。そして、セールスダウンが顕著になってきた90年代半ば(その時期の作品も批評面では高く評価されていました)、苦肉の策のようにリリースされたカヴァーアルバム『歌姫』が久々の大ヒット。この作品は、一般的にカヴァーアルバムブームの先駆けとされている井上陽水『United Cover』よりも7年も早く、今やカヴァーアルバムの代名詞的存在となった徳永英明『VOCALIST』第一作よりも11年も早い、まさにカヴァーアルバムのパイオニア的作品でした。

 1994年にカヴァーアルバムで見事に復活し、そのちょうど20年後の2014年にベストアルバムで再び見事に復活した中森明菜。きっと今回の大ヒットは、彼女の本格的な復活をいろんな意味で後押ししてくれたはず。もちろん、身体のコンディションにかかわることなので安易には言えませんが、多くの人がこの国の「歌姫」としてワン・アンド・オンリーの存在である中森明菜が帰ってくるのを待っています。最後に一つだけ。次の作品のジャケットのアートワークは、もうちょっと素敵なものにしてくださいね。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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