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鉄色クローンX『LOUDER THAN YOUR MOTHER』インタビュー(後編)

「世界一幅広い日本の音楽シーンで、他にないものをやる」マーティ・フリードマンの音楽創作論

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前編ではJ-POP愛を惜しみなく披露したマーティ・フリードマン氏。

 プレイヤーとしての名声もさることながら、音楽評論家やプロデューサーとしての功績も数多い、マーティ・フリードマン氏のインタビュー後編。前編【マーティ・フリードマンがJ-POPへの”愛と嫉妬”を告白「AKBの『ヘビロテ』は僕が書きたかった」】では、日本の音楽に精通している彼ならではのJ-POP論について語ってもらった。後編では、鉄色クローンXとしての新作『LOUDER THAN YOUR MOTHER』の話を中心に、ミュージシャン・プロデューサーとしての活動について語った。

——鉄色クローンX結成の経緯は?

マーティ:このバンドが始まりは、フレディ(=フレディ・リム。台湾のメタル・バンド「ソニック」のボーカル)と出会ったことなんだ。フレディと僕が出会ったきっかけは、僕がももいろクローバーZの「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」でギターを弾いたことだった。アイドルの曲なのに、意外とメタルっぽいギターフレーズが多い曲だから、ギタリスト達に向けて広く知られる曲になったんだと思う。それをソニックという台湾のバンドが聴いて、「『FUJI ROCK FESTIVAL '12』での、自分たちのライブに参加して下さい」と頼まれたんだよね。

 そしてフジロックに出演した際の控室で、ボーカルのフレディと僕が、ももクロトークをしたんだ。フレディはももクロの大ファンで、僕より超詳しかったんだよね。それで話が盛り上がって、「カバーやりましょう!」って約束した。普通はその場だけで盛り上がって、結局やらずに終わるんだろうけど、僕らがあまりにも熱狂的にやりたいと思ったから、僕のレーベルでもある激辛レコーズで、強烈なメタルカバーアルバムを作ろうって提案した。

——フレディさんはなんでそんなにももクロが好きだったんでしょう?

マーティ:彼は音楽に詳しいミュージシャンとして、台湾でもまあまあ有名だよ。それにももクロって、アイドルの中では音楽が冒険的でめちゃくちゃ面白いから、ミュージシャンにもファンが多いんだ。だから、フレディからももクロのファンだって聞いたときも、そんなにびっくりしなかったのかも。日本の音楽シーンに詳しくなくても、ももクロを聴いて圧倒的に素晴らしいって思っている人はいっぱいいるからさ。

——『LOUDER THAN YOUR MOTHER』は、前作から引き続き、ヘビーなメタルサウンドと、フレディさんが歌うコミカルな日本語が面白いですね。

マーティ:そう、その面白いギャップが大事なんだ。でも、それには試練があった。フレディは日本語を喋れなかったってこと。だから彼は凄く練習をして、日本人に伝わる微妙な発音のために頑張ってくれた。レコーディング中も、フレディは台湾語と英語しか話せないから、よく僕に日本語の意味とかを聞いてきたんだ。「モウレツってどういう意味?」とか「サクレツってどういう意味?」って。この「日本のスタジオで、台湾人であるフレディに、アメリカ人の僕が英語でももクロの意味を説明する」って風景が、めちゃくちゃシュールで面白かった。いつもスタッフがその光景を見て、大爆笑するんだ(笑)。

 でも、作品のクオリティはジョークっぽくしたくなかった。だから、内容に関しては、みんなもの凄くこだわったんだ。そうじゃないと、アホみたいな音楽になってしまうからね。ユーモアがたっぷり入ってるけど、音楽的にはシリアスなパワーが伝わってくる、スケールの大きさを感じる作品を目指した。この作品を、日本語がわからない人が聴いたら、シリアスでへヴィな音楽だと思うようにしたかったんだ。

——日本語として自然に聞こえるように、妥協しなかったのはなぜ?

マーティ:一番大事なことだから。やっぱり彼は日本人じゃないから、歌ったときに発音がおかしくて歌詞が伝わってこないと意味ないし。「日本人がわかるような発音で歌う」というところまで持っていくのが一番ハードだった。でも、そのおかげで彼の歌は、日本語が伝わってきて凄く良くなった。

——そこまで徹底的にやったのであれば、歌入れにかなりの時間を要したのでは?

マーティ:かなり時間がかかった。一般的に、ボーカルの歌入れをする場合は、歌詞を一行ずつ歌うんだ。でも、『鉄色クローンX』を制作した時のフレディは、言葉3つ4つぐらいを小刻みに、発音がよければ次、という形で録音していたんだ。楽曲がメタルで言葉の数も多いから、フルテンションでやらなければいけなくて大変だったよ。でも、そのやり方は、日本語を確実に伝えるために必要だったんだよね。

 そして時間を重ねることで、最終的には完璧に録音できた。そして僕らはそれを『LOUD PARK 13』で、披露することになった。細かく歌入れしたボーカルが、ライブで出来るのか心配だったんだけど、出来たアルバムを手本にし
てたら、自然にできるようになったんだよね。

ビジュアル系は日本の音楽におけるチャームポイント

——新作『LOUDER THAN YOUR MOTHER』のサウンド作りでこだわった部分は?

マーティ:とにかく聞いたときに「このA級の新しいメタルバンドはどこから現れたの?」って思ってもらいたいってこと。「馴染みやすいけど、とにかくモダンで新しい」とか、「聴いた瞬間にスケールの大きさを感じる」とか。歌詞に関してはユウスケ(SUN OF A STARVE、ex.HIGH and MIGHTY COLOR)に任せてたから。「みんなが燃え上がれるような、ギャップがあって笑い心もある、でもシリアスな部分もある歌詞をお願い! 」って。

——ユウスケさんと、もう一人のゲストであるインザーギさん(メガマソ)。この二人をゲストに迎え入れたきっかけを教えてください。

マーティ:僕がプロデュースを務めるレーベルの「極辛レコーズ」が、第一弾のリリースをする際にニコニコ動画でメンバーを募集したんだ。そこで集まったメンバーで作ったSUN OF A STARVEのボーカルとして、選ばれたのがユウスケだった。彼らは『STARVE』っていう6曲のチョーいいミニアルバムをリリースしているよ。今回の『LOUDER THAN YOUR MOTHER』を制作する際にも、彼の名前が真っ先に浮かんだんだよね。コーラスもしてくれるし、キャラとしても非常に面白い。彼はこのプロジェクトに非常に合っている人だと思うよ。

 あと、もう一人のボーカルであるインザーギさんは、メロディボーカルを担当してくれてる。フレディはシャウト担当だし、日本語のメロディはメリハリが出るように歌えないからね。アルバムを作るときに「ゴリゴリのメタルなんだけど、ポップな部分がちょこちょこでないと面白くないから、メリハリを作るためには、絶対メロディ担当の人がいないとダメだ」と思ったんだ。だから、日本的なフレーズを綺麗に歌えるうえに、僕の好きな声の人を探した。その中でも、インザーギさんの声は僕のストライクど真ん中。元々メガマソのファンだし、昔からビジュアル系は好き。日本の音楽におけるチャームポイントみたいなもんだから。

——他にも候補は沢山いた?

マーティ:オーディションも含めて結構いたんだけど、インザーギさんの声を聞いたとたんに、「ぜひお願いしよう」って思った。歌録りは、フレディと比べてやっぱり楽勝だった(笑)。機材に頼るタイプのボーカリストでもないし。最初は「フレディの声と混ぜたときに、バランス的にダサく聞こえるかもしれない」、「このギャップが逆に変かもしれない」という不安はあったけど、いざやってみたら完璧だった。

——アルバムタイトルの由来は?

マーティ:個人的に面白いと思って僕が決めたんだ。特に深い意味はないよ。タイトルを日本語にすると「あんたのオカンよりうるさい」って意味(笑)。英語では「YOUR MOTHER」って、よく侮辱のために使われる表現なんだ。「YOUR MOTHER」っていうだけでもう喧嘩を売ってる感じの表現、悪口になる。面白い悪口が浮かばなければ、「YOUR MOTHER」っていうだけで良いって感じ。「マザーファッカー」の下にある言葉みたいなね。メタル作品のジャケットって、いつも髑髏とか、鬼とか、お城とか…..あまりにも典型的でダサいと思う。サウンドは大好きなんだけど。だから何か別の方向からアプローチできる、面白いジャケットが良いと思って。今回のジャケットは「あんたのオカンよりうるさい」ってアティチュードは、たっぷりあふれてるものだと思うから(笑)。あと、英語タイトルにもしたかったってのもあるかな。

——なぜ英語タイトルにしたかったんですか?

マーティ:このアルバムが、洋楽と邦楽の融合みたいなものだから。日本語のバンド名だし英語のタイトルの方が良いなと思ったんだよね。

「ももクロトーク」を引っ張った結果、すごく面白いものになってきた

——メタルサウンドに日本語を乗っける意図とは?

マーティ:他にあまりないから、かな? 様々な音楽があって、恐らく世界一の幅広さがある日本の音楽シーンに。きゃりーぱみゅぱみゅマキシマム ザ ホルモンとか、何もかもすでにあるっていう感じなんだけど、鉄色クローンXみたいなのは無いと思ったんだよね。スラッシュメタルの要素も、僕なりの変態ギターもたっぷりあるし。今作のソロギターは、ギターキッズたちが興奮するようなものをたっぷり入れているんだ。好きだったらたまんないだろうし、嫌いだったらうざいくらいに嫌いになるかも。

——それを承知の上でやりたいと思った?

マーティ:やりたいと思ったことしか、最後までやりたくないし頑張れない。やってる最中でも「いいじゃん!」と思えてるなら、最後までやりきる。ミュージシャンってみんなそうだと思うんだけど、ひとつのプロジェクトを成功させるために、いくつものプロジェクトを失敗させてきてる。途中まで来たところで「まあまあだな」って思ったものを、完成まで持っていくなんてバカみたいじゃん。ホントに完成が楽しみなものにならないと、エネルギーなんて使いたくないし。

 組み合わせが良くてピンとくるものを作りたいんだ。スピーカーから聴こえてきたときに、「この音がいいじゃん! 新鮮じゃん!!」と思ってもらわなきゃいけないから。作品創りに関わってる人には伝わると思うけど、プロジェクトをいっぱいやっていると、そのうちのどれかに魔法がかかるんだよ。手当たり次第、精いっぱいやっていれば、何かをキッカケにして加速するんだ。

——今後の活動予定は?

マーティ:まだ無いよ。ちょうどPVを撮ったばかりだから、その発表から色々と動き出すんじゃないかな。元々はサイドプロジェクトとして始まったし、ここまで来るとは思わなかったけど。リスナーからの評判も良かったし、アルバムとPVを作ったから、もう少ししたらライブの予定もあると思う。『LOUD PARK 13』でのライブは楽しかったし、この間ケーブルテレビでもライブの様子が放送されて、凄く評判がよかったみたいで。僕とフレディが、二人で盛り上がった「ももクロトーク」をどんどん引っ張った結果、すごく面白いものになってきているね。

——マーティさんとフレディさんの「ももクロ対談」とか、面白そうですね。

マーティ:絶対面白いと思う。彼は僕よりももクロに詳しいし。彼みたいに、他の言語を覚えてまで、ももクロのことを歌おうと思うメタル歌手は他にいないよ。あと、ギターは僕しかやれない。こんなアルバムを作ろうと思ったら僕らしかできないから、対談も僕らにしか語れない内容になるだろうね(笑)。このアルバムを聴くだけでは、誰も僕らの出会いがももクロだなんて思わないだろうし。
(取材=吉住哲/構成=中村拓海)

■リリース情報
『LOUDER THAN YOUR MOTHER』
発売:2014年3月19日
価格:¥ 3,150(税込)

<収録曲>
1. KRITIKA
2. ダメ元Test yourself
3. Cheers!!!
4. ICHIBAN
5. 東京人間クロスロード
6. ボンバイェ
7. BITE
8. Quell the Souls in Sing Ling Temple
9. METAL CLONE ARMY
10. 胸キュンLOVERS

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