『Marvel's Wolverine』試遊レポート 攻めるほど生き残れる、爪と怒りの戦闘を体験

 9月15日、Insomniac Gamesの新作『Marvel's Wolverine』がPS5向けに発売される。『Marvel's Spider-Man』シリーズを手がけたスタジオが、同じマーベル原作でありながらCERO Z(18才以上のみ対象)に振り切った一作だ。

『Marvel's Wolverine』最新映像

 筆者は今回、発売に先立って本作をプレイする機会を得た。結論から書けば、これは「引かないこと」をシステム上の報酬に変換したアクションゲームである。本稿では、『Marvel's Wolverine』を約2時間にわたってプレイした感触をレポート形式でお届けする。

爪で敵を倒すことに集中できる、明快な戦闘設計

 まず率直な感想として、筆者は本作を『Marvel's Spider-Man』よりも分かりやすいと感じ、好印象を抱いた。

 ミッション中の目標は、おおむね「範囲内の敵を殲滅する」ことに集約される。街全体を自由に巡回する構造ではなく、テランバンやマドリプールといった舞台を順に渡り歩く、物語主導のリニアな作りだ。

 スキルの獲得(本作では「テクニック」と呼ばれる)、パッシブ強化を担う「アダプテーション」、スーツのアンロックといったフレームワークはInsomniac作品でおなじみのもので、『Marvel's Spider-Man』を通過していれば理解に時間はかからない。

 押し寄せる敵を爪で切り裂く。この一点にフォーカスしているからこそ、目標が明快で、移動やギミックに思考リソースを割かれることなく、プレイヤーは「どうやって相手を殴るか」だけに集中できる。ウルヴァリンというキャラクターは、そもそも搦め手を持たない。持たないことを設計の欠落ではなく、前提として扱ったのが『Marvel's Wolverine』という作品なのだ。

攻めるほど生存につながる「レイジ」の仕組み

 そうした前提を成立させているのが「レイジゲージ」である。

 敵を倒す、パリィを決める、コンボをつなぐ。攻撃的な行動を成功させるとゲージが溜まり、逆に手を止めていると時間とともに減少していく。ゲージには3段階のレイジレベルがあり、レベル2に達するとコンボが強化されるとともに「ラストスタンド」が解禁。体力がゼロになってもゲージを1本消費し、四角ボタン連打に合わせてヒーリングファクターで傷が塞がっていく演出とともに立ち上がれる。ゲージを最大まで溜めてレベル3に到達すれば、画面はモノクロと血の赤だけになり、瀕死の敵を一撃で処刑するクリティカルストライクが解禁される。

 つまり本作では、「体力が減ったときに退いて回復を待つ」という、多くのアクションゲームで正解とされる行動が明確に不利になる。攻め続けることでしか、回復のリソースも火力も手に入らない。前に出ることがそのままプレイヤーのアドバンテージへ直結する。この一点において、本作の設計は徹底している。不器用で、無鉄砲で、最前線で暴れ回る。ウルヴァリンというキャラクターの人格を、そのままゲームルールに翻訳したと言っていいだろう。

爽快感の裏にある意外なほどの脆さ

 もっとも無敵の万能感を味わえるかというと、『Marvel's Wolverine』はそうではない。なぜなら、ウルヴァリンは意外なほど打たれ弱いからだ。

 加えて、本作は敵に囲まれるシチュエーションが非常に多い。原作の不死身のイメージに引きずられて漫然と斬り込むと、機銃の集中砲火やサイボーグ傭兵集団「リーヴァーズ」の包囲であっという間に体力を削られ、あっけなく死ぬ。ラストスタンドという保険があるからこそ、その保険を切らした状態の危うさが際立つ設計になっている。

 だからこそ、任意で発動可能なパリィが効いてくる。攻撃をはじいて反撃につなげるのはもちろん、シールド持ちの敵にはキックでガードを崩してから斬り込むといった手順も要求される。大味に見えて、乱戦での被弾管理はシビアだ。

 なお筆者が選んだ難易度(いわゆるノーマル相当)では、理不尽さを感じる場面はほとんどなかった。死ぬときは大抵、こちらが油断したときである。歯応えの重心が「攻略の難しさ」ではなく「姿勢の維持」に置かれているのは本作らしい。

超感覚を駆使した潜入と、記憶をたどる探索

 最前線で戦うことが前提に置かれている本作だが、常に正面から挑む必要はない。ローガンの超感覚を使えば敵の心音を捉えて位置を把握し、物陰から一撃必殺のステルスキルを決められる。特殊部隊エージェントとしてのウルヴァリンを担保する要素だ。

 一方で、反ミュータント主義の実業家ボリバー・トラスク側も無策ではなく、ミュータント能力を封じる抑制装置の影響下では、回復能力すら使えないまま戦わされる場面がある。攻めるほど強くなるシステムを一時的に取り上げることで緊張を作る、上手い緩急の付け方だ。

 探索面では、超感覚で嗅ぎ分ける収集要素のウイスキーボトルがローガンの失われた記憶を解き放ち、隠された木箱の素材がスーツの作成に回る。ウルヴァリン(ローガン)の過去に触れる行為が、収集と探索という遊びの中に埋め込まれている点は、本作最大の魅力のひとつだ。

センチネルが要求する「待つこと」

 今回の試遊でとりわけ印象に残ったのが、巨大な体躯から繰り出される一撃が凄まじいボス「センチネル」戦である。ミュータントを抹殺するためにトラスクが造り上げた兵器のプロトタイプで、まだ製作途上ゆえに上半身のみで襲いかかってくる。

 腕の叩きつけ、エネルギーブラスト、ミサイル。強烈な攻撃を回避とパリィでいなし、反撃の一瞬を見極める。ここまで「引くな」と言い続けてきたゲームが、ボス戦では一転してプレイヤーに忍耐を要求する。ミスティークやセイバートゥースとの連携も交え、それまでに覚えたものを総動員させられる構成で、ここを越えられるかどうかが本作の理解度の試金石になる。

激しい暴力表現と、体験を調整する100種類以上の機能

 本作の暴力表現は徹底している。爪で斬り、貫き、返り血を浴びる。CERO Zという指定は伊達ではない。

 ただしInsomniacは、その表現を一律にプレイヤーへ押し付けてはいない。本作には暴力表現を切り替えるための新たな設定項目が用意されており、流血や部位切断の描写を調整できるほか、英語音声の過激な言葉をフィルタリングすることも可能だ。「ウルヴァリンの物語は体験したいが、この生々しさは受け止めきれない」という層に対して、解決案が確保されている。

 加えて本作には、過去のInsomniac作品から引き継いだもの、改良が加えられたもの、新たに追加されたものを含め、100種類以上のアクセシビリティ機能が搭載されている。ハイコントラスト設定、音声ガイド、ゲーム速度の設定、振動の強弱の設定などがそれにあたる。

 前述のとおり、本作の戦闘は「攻め続けること」をプレイヤーに強く要求する設計だ。その要求水準は、人によっては素直に重荷となる。ゲーム速度をはじめとする調整項目が用意されていることは、この攻撃的な設計を万人に開いておくための担保として機能するはずだ。振り切った表現と、それを受け止めるための間口の広さ。両者を同時に成立させようとしている点にこそ、大人向けへ舵を切った本作でInsomniacが最も神経を使った部分が表れているように思う。

日本での現地取材が支える、世界の手触り

 発売直前にPlayStation.Blogが公開した記事によれば、Insomniacは制作初期に日本へ調査チームを派遣している。(※)雪山、地下駅、竹林、日差しの照りつける市街地という4種類の環境で600点以上のスキャンを行い、約9kgの機材を担いで160km以上を踏破。収録データは5.6TB、撮影枚数は18万9,589枚に及んだという。本作には東京を舞台にしたパートが登場する。

 爪の一振りの手触りから、街の壁面の擦れ具合まで。派手な流血表現ばかりが話題を集めがちな本作だが、その土台にあるのは徹底した積み上げだ。9月15日、その全貌が明らかになる。

参考

※ https://blog.ja.playstation.com/2026/09/02/20260902-marvels-wolverine-bts-o/

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