橋本環奈が見せた「新たなヒロイン像」 ABEMAドラマ『バカンスの法則』における星野緑という“適役”を振り返る
橋本環奈が主演を務めるABEMAオリジナルドラマ『バカンスの法則』が9月4日の配信で最終回を迎えた。橋本が演じたのは、美容クリニックの倒産によって突如無職になってしまう、恋には奥手なしっかり者の星野緑。彼女の明るく前向きなエネルギー、さっぱりした性格、飾らない姿がそのまま緑に重なり、“当て書き”と言われても納得してしまうような、役と本人がそのままフィットした関係にある適役であった。
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橋本環奈が魅せるヒロイン像の“極み”
本作は、人生に“ほんの少し”疲れた主人公・緑が別荘でミステリアスな管理人・西上(チェ・ジョンヒョプ)と出会って恋に落ち、人生の大切な時間を取り戻していく“デトックス・ロマンス”作品。原作・監督・脚本を担当したのは『海月姫』や『かくかくしかじか』で知られる漫画家の東村アキコ。キービジュアルだけを見るとピュアな恋愛ドラマのように見えるが、それだけではない。別荘で兄の紺太(勝地涼)やりんりん(山下美月)といった仲間たちとバーベキューをしながら“バカ酒”を飲んで夜を使い果たす、といった人間くさい描写も特に全18話における前半では多く描かれている。
言い方を変えれば、コミカルな要素もふんだんに取り入れられており、大物俳優の一条仁(板尾創路)に対して酔っ払った緑がヤンキーのように絡んでいったり、『ラストプリンセス』と題した恋リアが突如開幕したり、なにかと『ドラゴンボール』ネタが詰め込まれていたりと、東村の趣向とアドリブ連発の勝地涼の姿勢(仕業)が顕著に表れたものと思われる。その雰囲気は筆者が取材したプレミアイベントでも強く感じられた。橋本が話し出せばそれに勝地や山下美月、加納愛子(Aマッソ)が話を重ね、全くトークが終わらない状況。実際にチームで密度の高い撮影期間を共にしたことで、仲が深まり、彼らならではのノリが生まれてことは明らかだった。
橋本でコメディと言えば映画『銀魂』『今日から俺は!!』といったシリーズが思い浮かぶ。それらの演技経験が下地にあるのはもちろんだが、どちらかと言えば気心が知れた仲間たちと本気でふざけあい、笑いあえる――そんな等身大の演技が『バカンスの法則』には収められているように感じる。プレミアイベントのなかで、東村は撮影の前室で橋本たちがずっと楽しそうに話していると明かしていたが、第4話で紺太の作った“バカ酒”を飲んだ緑の「ははは」というハスキーな高笑いが画面の奥から聞こえた時に、笑いが絶えない和やかなムードがそのまま作品にも投影されているのだと感じさせた。
コメディだけでなく、続々と“神”が登場するファンタジー要素、劇中のドキュメンタリー番組のナレーションを松本若菜が本人役として担当したりと、いろいろとやりたい放題の作品ではあるが、ゆっくりと動いていた緑と西上の恋が終盤になって急展開を見せ始める。緑が西上への恋心を実感するのは第13話でのこと。28歳で一度も恋愛をしたことがないという緑が、西上に「彼女とかいるんですか?」と恐る恐る質問し、その答えに嬉しさを隠しきれない。ピュアな表情のなかにそんな心の機微が見える演技に目を見張った。
緑が西上を意識するきっかけとなったバーベキューで炎から守られるシーンをはじめ、キッチンで並んで夏みかんピールを作る姿、浴衣で夏祭りに出かけ手を繋ぐデートなど、ほかにも様々な名場面があるなかで、最終回前の第17回では緑と西上の思いが通じ合い口づけを交わす。台風が近づく土砂降りでの、どこか切ないキスだが、実は橋本が恋愛要素の強い映画・ドラマに出演するのは今作が久々となる。実年齢とも近い緑という役で、橋本が見せる大人っぽい表情に、新たなヒロイン像の極みを見た気がした。
『バカンスの法則』が始まった7月末はうだるような暑さだったが、今では夏の終わりを感じさせる少しセンチメンタルな時期を迎えている。このドラマは、そんな季節の移り変わりともぴったりマッチしていた作品だったように思う。
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