なぜ日本人は“ディスク廃止”に反発するのか PlayStationパッケージ版終了が突きつけるゲーム文化の転換点
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がPlayStationコンソール向けの新作タイトルについて、ディスク版の生産を終了することを発表。“ディスク廃止”とも言えるような方針の発表に、国内外のゲーマーのあいだで大きな波紋が広がっている。
2028年1月以降の新作はDL版のみに 背景にパッケージ需要の激減
「PlayStation.Blog」の投稿によると、ディスク版の生産は今すぐ終了するわけではなく、2028年1月以降に販売される新作ゲームが、ダウンロード版のみの提供となるとのこと。その決断についてSIEは、「デジタルメディアへの需要が物理ディスクを大きく上回るなか、お客様の利用実態や市場環境の変化を踏まえて決定したもの」と説明している(※)。
物理ディスクの需要が近年急速に縮小していることは、データなどでも明らかだ。たとえば株式会社カプコンが2026年3月期決算で公開した資料によると、パッケージ販売本数の構成比が2022年では24.5%だったのに対して、2026年は7%にまで激減していた。物理ディスクの需要は、今後さらに落ち込んでいくものと予想されている。
実際のところ現在PS4やPS5で販売されているパッケージ版のゲームについても、ディスクが起動キーの役割しか果たしていないことは多い。ディスク1枚に収まるようなゲームがどんどん減っていく一方、修正パッチなどを配信して発売後にゲームの完成度を高めていくことが当たり前になったからだ。ディスクを購入しても、結局はデジタルデータをダウンロードして遊ぶことには変わりがない。
「コレクションの喜び」「中古販売」……ディスク廃止に寄せられる反発
そのため単純に「ゲームを遊ぶ」という観点で見れば、ディスクが廃止されようとそこまで今と状況は変わらないように思える。ただ、それでも今回のディスク廃止の発表には、反感を抱くゲーマーも少なくないようだ。
よく目立つのは、「パッケージを手に取る感動がなくなる」「パッケージをコレクションする喜びがなくなる」といった意見。パッケージ版を前提としたゲーム文化に長年親しんできたゲーマーにとって、今回の発表はかなり衝撃が大きいのかもしれない。
そのほかディスク廃止のデメリットとして指摘されているのが、「ゲームを中古で売れなくなる」という点。たしかに一昔前までは、新作ゲームを一気に遊んで中古ゲームショップに売るという消費の仕方が、ある種の文化と言えるほど根付いていた。今も一部のユーザーは、ゲームの中古販売を利用しているようだ。
小島秀夫も言及した「ゲームの所有権」問題
さらには、ゲームの所有権をめぐる論点も注目を集めている。『メタルギア』シリーズや『DEATH STRANDING』で知られるゲームクリエイターの小島秀夫氏は、イタリアの映画イベント「Il Cinema in Piazza」に出演した際にこの問題について言及。「フィジカル育ちなので非常に悲しい」と前置きしつつ、今後サブスクリプション型のゲーム配信が一般的になると、ユーザーがデータを所有できなくなるため、企業側の都合でゲームが遊べなくなってしまうリスクがある……と指摘していた。
なぜ日本で反対の声が強いのか “手元に残す文化”との関係
ほかにもSNSなどではさまざまな意見が飛び交っているが、日本では海外よりもディスク廃止に反対する声が一層強く上がっている印象だ。このことについては、文化的な背景を照らし合わせて考えるべきかもしれない。
たとえばソニーは今年2月にブルーレイ・レコーダーの出荷終了を発表したが、ラジオ番組『森本毅郎・スタンバイ!』(TBSラジオ)の中で、大阪産業大学の教授・入江満氏が、映像を録画して手元に残すことを「日本特有の文化」だと指摘していた。海外では同じ番組を何度も再放送するのが当たり前なので、日本と比べて録画文化が広がらなかったのだという。
だとすると、SIEが日本でディスクレス化を円滑に進めたいなら、こうしたディスク世代の感情論にもきちんと向き合っていく方が賢明ではないだろうか。
とはいえPS4やPS5のディスクがほとんど形だけのものになっている以上、ディスクの廃止自体は必然的な時代の流れとも言える。パッケージ文化が過ぎ去ってしまうのは少し寂しいが、データ販売が当たり前の時代が来れば、いつかは「データをコレクションすることの喜び」が文化として定着するかもしれない。
参照
※ https://blog.ja.playstation.com/2026/07/01/20260701-playstation-physical-disc-production-announcement-o/