『Weekly Virtual News』(2026年7月7日号)

『X VORDER RUNWAY』に感じた既視感と、躍進する星街すいせい──2026年折り返しに活況を見せるバーチャル業界

 VTuber、XR技術、メタバース――様々な“バーチャル”に関するトピックは、日々多く生まれている。企業による巨大な施策から、個人によるマイクロだが熱気あふれる取り組みまで、その規模は様々だ。

 連載「Weekly Virtual News」では、一週間のうちに起きた“バーチャル業界”に関連する様々な話題をピックアップ。ニュースとして紹介するだけでなく、筆者の独断と興味関心からフックアップしたいトピックも取り上げる。

『X VORDER RUNWAY』は、2019年のあるイベントの後継者か?

 月末と月初が重なるタイミングだったためか、先週は様々な情報解禁が各所で見られた。特に個人的に目を引いたのは、「X VORDER RUNWAY」なるイベントの開催情報だろう。

X VORDER RUNWAY|Official Teaser

 「ファッションショー×音楽ライブ」をコンセプトに掲げ、バーチャルタレントからは星街すいせい、花譜、星川サラ、橘ひなの、赤見かるび、HIMEHINAらが参加。その一方で「アイドルマスター」シリーズから天海春香、如月千早、星井美希の3名、『ペルソナ4』から久慈川りせ、「ストリートファイター」シリーズからは春麗が登場。さらに詩羽/KAWAII CLUB、ナナヲアカリも参加することが発表されている。

 とにかく、越境的(あるいはカオス)な出演者に驚かされる。その上で音楽ライブだけでなく、Mika Pikazoが手がける衣装を着たランウェイもあるという、かなりユニークなイベントだ。

 ところで、古くからバーチャルタレント業界を観測している人は、あるイベントを思い起こすかもしれない。2019年開催の『FAVRIC』だ。音楽ライブと新規制作衣装のランウェイという、『X VORDER RUNWAY』と同様のコンセプトで打ち出されたイベントであり、荒削りながらカッティングエッジな方向性から当時話題となった。

 そしてこの2つのイベント、どうやら無関係ではなさそうだ。『FAVRIC』の企画運営を担った株式会社ガールズアワードは、現在の社名を株式会社Awardという。そして同社が『X VORDER RUNWAY』開催企業なのだ。真偽のほどは不明だが、なんとなく精神的後継イベントとして打ち出されているようにも感じる。7年の時を経て、こうしたイベントがどう受容されるかは、興味深いところだ。

初音ミクとの共演、JTBとのコラボ……より“自由度”を増す星街すいせいの活動

 上節の『X VORDER RUNWAY』参加を予定している星街すいせいは、先週は多面的な展開を見せた。特にわかりやすく人目を引いたのは、初音ミクとともにロッテのアイス「クーリッシュ」と「爽」のCMに出演したことだろう。

ロッテ クーリッシュ・爽 WEBCM「冷たくて青い夏が来た」篇 90秒

 キタニタツヤ「青のすみか」を2人がカバーするCMでは、セーラー服姿の両者が、真夏の学生生活に冷たいアイスとともに寄り添う姿が描かれる。アイスのCMとしては王道な内容といったところ。その中心にバーチャルシンガーが立っている光景は、2026年の時代性を端的にあらわしている。

 また、9月から始まる彼女の4都市アリーナツアー『Once Upon a Stellar』に向けて、JTBが公式アクセスツアーの実施を発表した。神奈川・兵庫・愛知・福岡の4会場を目的地とした、1泊2日の後泊のみプランと、空港送迎も追加したプランが展開される。いずれのプランにもレプリカスタッフTシャツなどの特典がつき、空港送迎つきプランには限定音声特典も付属するという。

 これらのJTBとの動きは、コラボ企画「プロジェクトスターゲイザー」から発せられたもの。6月29日にはプロジェクトの概要が公開されたほか、星街すいせいは新曲「星をみる少女」を発表している。プロジェクト概要はやや抽象的だが、電車や飛行機に乗り、リアルの世界を旅する星街すいせいの姿が描かれるMVと上記ツアーから、方向性がうかがい知れそうだ。

星をみる少女 / 星街すいせい (official)

 この他に、「VOGUE JAPAN」による星街すいせいの取材記事も発表された。個人事務所・Studio STELLAR設立からしばらく経った星街すいせいだが、その活動はかつてないほど自由になっている印象だ。

Vketや人気ワールドのパートナー化でにぎわう『VRChat』界隈

 『VRChat』の大型イベント『バーチャルマーケット2026 Summer』の開催が近づいている。先週は第2弾出展企業の発表があり、一部インフルエンサーなどを招いた「先行体験期間」もスタートした。

 個人的に注目しているのが、出展ワールドの一部に「投げ銭」機能を実装したことだ。会期中、様々なパフォーマーが企業出展ワールド「パラリアルブロードウェイ」のステージに出演し、観客は彼らに向けて投げ銭を行うことができるという。どのような挙動となるかは実物を見たいところだが、イベントとしては面白い試みだ。

 また、7月1日には日本語話者向け集会場ワールド「FUJIYAMA」の代表が、VRChat社との公式パートナーシップ契約締結を発表した。特に2024年はスタンミの影響で多くの人が訪れた定番パブリックワールドであり、現在も一定以上の人が毎日集まる場だ。

 パートナーシップ契約によって、同ワールドに展開されている広告の収益の一部が『VRChat』側に還元されるほか、『VRChat』内からURLを踏むと即座にWebブラウザでページが開く機能も解禁。

 広告ポスターからの遷移だけでなく、同ワールド内にあるアバター/衣装試着ギミックから商品ページを開けるようになる。日常的に人が行き交う場の利便性を上げつつ、広告収益を還元する導線も作ることで、プラットフォームとユーザーのWin-Winな関係構築が期待される。

 また、BEAMSは創業50周年記念企画として、1976年当時の原宿1号店「アメリカンライフショップ ビームス」を再現したワールドを『VRChat』に公開した。常設ワールド『Tokyo Mood by BEAMS』と同様に、VRChat発クリエイティブチーム「カデシュ・プロジェクト」が制作に関わっている。

 こちらは直接的な収益が見込める展開ではないが、「創業の原点」そのものを3D空間として再現し、ブランドヒストリーを伝える施策として捉えられる。デジタルアーカイブとしての利活用は、ともすれば単なる事業展開よりも興味を持つ企業がいそうだ。そのモデルケースとなる施策と言える。

公式『Discord』アプリがMeta Questに上陸

 そして小さいが目を引く話題として、コミュニケーションサービス『Discord』の「Meta Quest」向けアプリのリリースが挙げられる。

 ゲームコミュニティにはなくてはならないアプリの一つだが、「Meta Quest」シリーズ向けアプリでは、VRヘッドセットからDiscord上で通話・会話ができる。Webブラウザを介したり、ヘッドセットを外してPCから話しかける必要がない点は便利そうだ。

 また、ゲームプレイの様子もストリーミングできるようだが、まだまだ完全な機能ではないようだ。現状は開発段階ではあるが、ゲーマーに欠かせないインフラがVR領域にも手を伸ばし始めていることは、ちょっとだけ気に留めておくとよいかもしれない。

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