YOASOBIなどのMVを手掛ける藍にいなが「インディーアニメ」に挑戦した理由 音楽とアニメーション、そしてAIとの関係性についても語る
AIとの対話で始まった「自己探求の旅」
――『LUCA』では自己表現に悩むピアニストが主人公となっています。本作はにいなさんにとって初めてのオリジナルアニメ作品ということもあり、主人公と同じように、にいなさん自身が自分と正面から向き合って、作品を作る理由を心の深いところから引き出していくようなプロセスもあったのではないかと思ったのですが、いかがでしょう?
藍にいな:確かに、ここ数年プロットを練っている間は、自己探求の旅みたいな感じになっていました。その過程ではAIに質問するということもしてみたのですが、実は『LUCA』の「形が変わり続けてしまう女の子」という設定を思いついたのは、AIとの対話がきっかけなんです。
私はメディアアーティストの落合陽一さんが好きなんですが、彼がおっしゃっていたことですごく感銘を受けたのが、人間とAIの違いは「恒常性」があるかどうかという話で。人間には恒常性がある。体温も記憶も一定に保てる性能があるけど、AIは逆に恒常性を保つことが難しい。データが溜まりすぎたら記憶は一掃されてしまうし、そこが一番違うところだよねと。そんな「形が変わり続けて、記憶も保てない」存在を、どうやったら愛したらいいんだろう? 根源的に違う存在に対して、人間はどう接していったらいいんだろう? といった疑問から、物語の着想を得たんです。
そして、それを「変わり続けてしまう女の子」というモチーフに落とし込んだ時に、なぜ自分がそういった事柄に興味が湧くのか考えてみたら、「AIって他人に合わせて形を変え続ける存在だけど、もしかしたら自分もそうなんじゃないか?」ということへの恐れがあったからこそ反応していたんだろうなと思って。そういう 「私自身って何なんだろう」という探求が、『LUCA』の物語にまとまっていったんです。
――個人的でありつつ、すごく同時代的なテーマでもありますね。リサーチなどもされたのでしょうか?
藍にいな:そうですね。AIについては、色々本とかも読みながら調べました。
――その中で、特に印象に残った文献って挙げられたりしますか?
藍にいな:有名な本ですけど、未来学者のレイ・カーツワイルが書いた『ポスト・ヒューマン誕生』はすごく面白かったです。AIが人間の知性を超えるという、いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)の予言をしたもので、直接的に『LUCA』の物語に影響を与えているわけではないんですけど、自分の中でのAIの考え方にはすごく影響がありました。
――ありがとうございます。ちなみに、制作の中でAIツールを使うこともありますか?
藍にいな:ありますね。Claudeをよく使うんですけど、アイデア出しをする時に、「こういう設定で、こういう物語で考えてるんだけど」って投げると、「それはつまりこういうテーマってことですよね」みたいにまとめてくれたりするんです。頼りになる右腕みたいな感じで、インタビューしてもらう感じで使っています。
――作画ではなく、プロット作りの部分なんですね。
藍にいな:そうですね。やっぱり「対話」がすごく上手だなと思います。
インディーの良さを規模の大きな作品でも残すために
――最後に、「Project PRISMation」をはじめとする今後のインディーアニメシーンについて、どうなっていってほしいか展望をお聞かせいただけますか。
藍にいな:カルチャー的な文脈で「アニメ」と言った時に、インディーアニメが隅に置かれてしまうような状況はすごくもったいないなと思っていて。ボカロもかなりサブカルチャー寄りだったところからメインストリームになっていきましたけど、同じようなスケールの仕方ができたらいいだろうなとはすごく思います。個人でアニメーションを作る方も、ボカロシーンと同じように今後どんどん増えていくと思うので、そういった中から時代を代表するような素晴らしい作家が出てきてほしいなという期待もあります。
――インディー出身の人が大きな予算で作品を作ろうとすると、利害関係者が増えるぶん、いろいろな声を聞かなくてはいけなくなって、個人で作っていた時の良さが殺されてしまうみたいなことも起こりがちなのかなと思うんです。個人制作ならではの良さを残しつつスケールさせるために、『LUCA』の制作を経験して、にいなさんが必要だと思うことってありますか?
藍にいな:アニメスタジオと個人のアニメーションの作り方って本当に違っていて。アニメスタジオのフローを通すと、どうしてもアニメスタジオ的な絵が作られるんですよ。作り方が違うと、最終的にできるものも全く違ってくる。
なので、インディーアニメ的な良さを残すのだとしたら、「作り方から作っていく」ことが必要だなと思います。ツールもすごく進化しているので、従来のやり方以外のやり方もたくさんあって。それぞれが個人の作家性に合わせた作り方から作っていくことが重要なんだろうなと思いますね。
――たとえば、チームを組織するにあたってDiscordのようなチャットツールのチャンネル分けをどう整理するかとか、そういったレベルのことでしょうか?
藍にいな:そういうことも重要だと思いますけど、自分が念頭に置いていたのは、そもそもの作画のフローですね。従来だったら原画担当の人が原画を描いて、動画担当の人が動画を描いて……みたいな流れがあったわけですけど、個人制作だと原画も動画も自分で描くのが普通なわけで、そういった形を集団制作でどこまで残すのか、とか。
あとは、クリスタのようなツールの使い方についてもですね。どこまでの作業をどのソフトで行うかとかって、属人化されすぎてしまっていて、共有が難しかったりする。『LUCA』の時にも、参加していただいたアニメーターの方にクリスタを使っている人が意外といなくて、クリスタとPhotoshopを横断する作業が発生したんです。そうするとブラシツールも違ってくるので、なるべく似たようなものに合わせてもらう、みたいな調整が大変だったんですよね。そういった細かいところをシステム化することが必要だなと思っています。
■「Project PRISMation」プロジェクト概要
「Project PRISMation」では、初となる企画公募を実施中。募集するのは「短編オリジナルアニメの企画」と、その先の未来を描く「展開案」で、応募資格はプロ・アマチュア、年齢、性別、国籍を問わず応募可能。「ABEMA」による厳正な審査を経て選ばれた企画には、短編オリジナルアニメの制作支援のほか、プロモーションや商業展開まで作品を世界へ届けるための包括的なサポートが提供されます。
応募締め切り:2026年8月31日(月)23:59(日本時間)
公募要項:https://project-prismation.com/pitchguidelines/
公式HP(日本語):https://project-prismation.com/
公式HP(英語):https://project-prismation.com/en/
公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@ProjectPRISMation_ABEMA
公式Xアカウント:https://x.com/PRISMationABEMA
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「PRISMation Film Fes. 2026」イベントサイト:https://project-prismation.com/filmfes2026/