なぜボディトリマーにLEDを搭載? パナソニックが挑んだ“新・I字デザイン”の真価

 最近、東京都庁が今夏のクールビズ施策としてハーフパンツの着用を容認したことが話題になった。その流れの中で、SNSでは「脛毛が気になる」「脚を出したいけれど抵抗がある」といった声も広がっている。男性のムダ毛ケアは、かつての美容意識が高い人だけの習慣から、いまや清潔感や身だしなみの一部として語られる時代へ入りつつあるのかもしれない。

 そんな空気感を象徴するように颯爽と登場したのが、パナソニックの新『ラムダッシュ ボディトリマー』シリーズ『ER-GK9A』『ER-GK8A』だ。今回の新モデルは、単なるスペック向上ではなく、「もっと自然に、もっと安心してセルフケアできるようにする」ための思想が製品全体に込められていた。メディア向けの発表会で同社の理美容家電を担うビューティ・パーソナルケア事業部 パーソナルビジネスユニット開発陣はその背景を語ってくれた。

剃りにくいではなく、見えにくいという課題

 男性向けグルーミング市場は拡大を続けている。パナソニックによれば男性の基礎化粧品市場は2021年の3227億円から2025年には4089億円へと26.7%拡大。同社調査でも、20〜30代男性の52.7%が体毛ケア経験ありと回答し、「産毛ですら剃り残したくない」と考える人も58.7%に達したという。つまり現在のボディケアは、「剃るかどうか」ではなく、「どこまで綺麗に整えたいか」という段階へ進んでいる。

 そうした中で開発陣が注目したのが、「見えにくさ」だった。ボディケアは実際には「剃れない」よりも、「見えないから不安」という場面が多い。特にVIO(デリケートゾーン)などのケアでは浴室や洗面所の照明だけでは影になりやすく、剃り残しや肌への不安につながる。そこで今回、パナソニックでは上位モデル『ER-GK9A』に新搭載したのが「スキンビューLED」だ。刃先周辺を照らし、見えにくい部位でもケアしやすくするための機能である。しかし、このLED機能は単なる便利機能ではなく、むしろ開発側は「LEDをどう成立させるか」が大きなテーマだったという。

LEDを入れると、本来ボディトリマーは握りにくくなる


 ボディトリマーにLEDを搭載する。言葉にすると単純だが、実際には設計上かなり難しい挑戦だったという。限られた本体サイズの中には日本製刃・モーター・バッテリー・防水構造などがすでに高密度で収められている。そこへLEDや導光パーツを追加すれば、本体は太く、重くなり、握りにくくなる可能性が高い。

 しかも今回、デザイン側が求めたのは、継ぎ目を減らしたシンプルな「新I字フォルム」だった。従来のメカニカルな印象ではなく、生活空間に自然に置けるニュートラルな存在にしたい。そのためには、できるだけシームレスでミニマルな筒形状が必要だったのである。

 設計を担当したパーソナル商品部 理容商品設計課・橋哲英氏によれば、特に苦労したのは「どこを、どう照らせば、本当に使いやすくなるのか」という点だったという。単純に明るくするだけでは意味がない。刃先周辺を自然に照らしつつ、使用時に手元の視界を邪魔しない位置を探る必要があった。試作では、LEDの位置、光の角度、導光構造の厚みまで細かく検証を繰り返したという。

 さらに興味深いのは、そのLED構造が結果的に“握りやすさ”にもつながった点だ。LEDを収めるために生まれた微妙な膨らみや指の置き場が、逆にホールド感向上へ作用したのである。つまり開発陣は、LED追加による制約を、“持ちやすさ”へ転換していった。

「置いていて嫌じゃない」を成立させるデザイン

 今回のデザイン刷新で印象的だったのは、「ゴツそうな男性家電」を目指していないことだ。従来のボディトリマー市場ではブラック主体の力強いデザインや、機能感を強調した造形が主流だった。しかし今回、デザインセンター スモールアプライアンス2部 パーソナルデザイン課・高橋岳人氏らが目指したのは、もっと生活に溶け込むプロダクトだった。

 象徴的なのが、ライトグレーの採用である。メンズグルーミング製品では珍しいカラーだが、「置いていて嫌じゃない」「生活空間に調和する」ことを重視した結果だという。さらに新I字フォルムは、継ぎ目を極力減らしたシンプルな筒形状へ刷新。下方向へわずかに広がる形状にすることで、どんな持ち方でも滑りにくいよう設計されている。表面塗装にはビーズを混ぜ込み、見た目は滑らかでも、実際にはしっかりグリップできる質感を実現した。

 しかし、この“何気なく見える形”の裏側では、0.1mm単位の調整が繰り返されていたという。内部構造をわずかに動かすだけで、握り心地や外観バランスが変わってしまう。だからこそ、企画・デザイン・設計が何度も意見をぶつけ合いながら形状を詰めていったそうだ。

LEDは「安心感」を作るための光か

 今回の『ラムダッシュ ボディトリマー』で興味深いのは、これからのメンズグルーミングにも必要なLEDへのこだわりとそれを成し遂げた開発力の高さだろう。開発陣が重視していたのは「もっと自然にセルフケアを始められること」。ムダ毛ケアには、まだ少し心理的ハードルがある。うまく剃れるのか、肌を傷つけないか、不自然にならないか、快適にそれるかなど....その思想が「見えやすくする」というLED機能にもつながっている。つまり今回のLEDは、単に暗い場所を照らすためのものではない。“安心して使える感覚”そのものを作るための光でもある。

 勿論、LED非搭載の『ER-GK8A』でもその思想自体は変わらず、VIOゾーンでも安心なカバー的なアタッチメントや、細かくミリ単位で設定できるアタッチメントもあり、快適に剃りたいというユーザービリティに応えてくれる。

 かつて男性美容家電には隠れて使うものという空気感があった。だが、今回のパナソニックの新・ボディトリマーは洗面台や部屋に自然と馴染み、毎日気軽に使われる道具へと進化しつつある。今回のI字デザインとLED機能には、そんなメンズグルーミング文化の変化そのものが映し出されているように感じられた。これから需要が増える季節になってきた今、販売店などで実際に製品を手にとってチェックしてみるのも良いだろう。

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