『NTE』生成AI使用をめぐり論争に きわだつ日本と欧米の“AI敵視”温度差の違い

 現在大ヒットを記録している新作オープンワールドゲーム『NTE: Neverness to Everness』に、生成AI使用疑惑が浮上し、SNS上で賛否を呼んでいる。海外、とりわけ欧米圏ではAI使用への風当たりが依然として強いようだ。

「アニメ版GTA」と話題の『NTE』に浮上した生成AI疑惑

 同作はPerfect World Games傘下のHotta Studioが開発たタイトル。高品質なアニメ調グラフィックや自由度の高いゲーム性が大きな特徴で、「アニメ版GTA(グランド・セフト・オート)」としても話題を呼んだ。

 最近の基本プレイ無料型タイトルのなかでは随一の成功を収めているが、そんななかでユーザーから出てきたのが、「ゲーム内に生成AIが使用されているのではないか」という指摘だった。

 疑惑の目が向けられたのはメインのアートではなく、フィールド上に貼られたポスターのデザインなどだったが、欧米圏では大きな騒動に発展。

声優・VTuberが反応、運営は背景アセットへの一部使用を認める

 同作に出演していた声優のMeggie-EliseはAI使用を「伝えられていなかった」として、「対処されなければこのチームとの仕事を続けない」という声明を発表。またアメリカの人気VTuber・アイアンマウスは、予定されていたPR配信を取りやめるという対応をとった。

 そうした反応を受けて、『NTE』運営もこの問題についての見解をX(旧Twitter)で投稿。キャラクターやストーリー、世界観はプロの手によるものだが、「背景や環境アセットのごく一部」にAI支援ツールを使用していたことを認め、修正対応を行っていることを明かした。

 ゲームの制作過程でAIツールが使用されることは、今や一般的になっている。しかし今作ではゲーム内の背景に“生成AIっぽい絵柄”のイラストが出てくるため、SNS上で騒ぎを呼ぶことになったものと思われる。「どこまでAIの使用を許容すべきか」という議論にいまだ答えは出ていないものの、最終的な成果物に生成AIの痕跡が見つかると、激しいバッシングを呼びがちだ。

日本と欧米で割れる“温度差” 日本での論点は「天気の子パロディ」?

 その一方で今回の騒動に関しては、日本と欧米での“温度差”も興味深い。というのも欧米圏と比べて、日本のSNSユーザーのあいだではあまり今回の件に批判が集まっていないからだ。

 もちろんまったく話題に上っていないわけではないものの、どちらかと言えばAI使用そのものよりも、映画『天気の子』をパロディしたようなポスターがゲーム内に出てくることなどが論点となっていた。

 日本のゲーム界隈では、今のところそこまでAI使用への忌避感は強くない印象。使用方法にもよるが、「面白いものができるならそれでいい」というスタンスのユーザーが目立っている。それに対して欧米圏ではゲーム制作におけるAI使用そのものに対する批判も多く、熱量の差は歴然としている。

受賞取り消し事例も 欧米でAIが「敵」と見なされる背景

 そもそも近年、海外では『NTE』以外にも多くのゲームがAI使用疑惑で物議を醸している。たとえば2025年にリリースされたRPG『Clair Obscur: Expedition 33』は、そのゲーム性を高く評価され、有名アワードで多数の賞を受賞したが、そのうち「Indie Game Awards 2025」のGOTYとDebut Gameに関しては生成AIの使用が規約違反だとして受賞取り消しとなった。

 また今年3月にはNVIDIAがAIを活用した描画技術「DLSS 5」を発表し、CEOが弁明のコメントを出すほどの騒動となったことも記憶に新しい。

 なぜこれほどまでに欧米圏のクリエイティブ業界で生成AIが敵視されているのか。その背景としては、労働者の権利に対する意識が強く、AIが「仕事を奪う敵」として警戒されていることが挙げられる。また、一部の巨大企業がAI技術を独占することへの危機感なども考えられるだろう。

 現状は「AI使用」という“ラベル”そのものがリスクになっている状況。とはいえ大規模化を続けるゲームの開発現場では、実質的にAIの導入は避けられない選択肢であるようにも見える。各国のゲームスタジオは、この問題とどう向き合っていくのだろうか。

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