カバー「mekPark」の狙いとは何か? VTuber業界の「練習生制度」と他社事例から考える
PROJECT IM@Sのアイドル候補生システム「vα-liv」
一般的なVTuberとは少しばかり毛色が異なるかもしれないが、バーチャルな配信者形式の「アイドル候補生」として活動していたのがバンダイナムコエンターテインメントによる「PROJECT IM@S」から生まれたユニット「vα-liv(ヴイアライヴ)」だ。灯里愛夏、上水流宇宙、レトラの3人からなるグループで、公式では「LIVE STREAMER IDOL PROJECT」と謳われていた。
公式WEBサイトの説明によると、LIVE STREAMER IDOL PROJECTは「配信活動を通して視聴者=プロデューサーの支持を得たもののみがアイドルデビューを獲得できる公開オーディション」という立て付けで、3人はYouTubeでの配信を通じて2023年から活動を開始している。
ここまで紹介してきたアカデミー制度や研究生制度と異なり、デビューのための条件が明確に提示されているのが「vα-liv」の特徴だ。1年間の配信活動を経て2024年2月末から視聴者(プロデューサーという扱い)の「アイドル推薦投票」を実施。2024年3月31日のオンラインライブ「PROJECT IM@S vα-liv LIVE -THE LAST STATEMENT!!!-」 の動員数を加算して5,000票を越えた全ての候補生が、アイドルデビューできる、と公式から発表された。
結果については、無事全員が合格。「876プロ(「PROJECT IM@S」のプロダクションのひとつで、彼女たちとは別に、3人のアイドルキャラクターが既に活動している)」に所属し、リアルライブにも出演している。
また、候補生時代のアーカイブがほぼ全て残されているのは、「vα-liv」ならではだろう。今でもそれぞれのチャンネルと公式チャンネルで、彼女たちのデビュー前の軌跡を追うことができる。候補生時代の活動自体が、“デビューまでの軌跡”という物語になっているのだ。
くわえて、視聴者が「プロデューサー」としてデビューの決定権を直接的に握っていたというのも、見逃せない要素だった。このあたりは、プレイヤーがプロデューサーとなってアイドルを育成するゲーム「PROJECT IM@S」シリーズの形式にのっとっているのだろう。もっとも、ゲームと異なるのは、これが時間軸が一方通行でやり直しが一切きかない「現実」であるという部分だ。彼女たちに関する情報は、チャンネル登録者数、平均視聴時間、最大同接数平均など、投票結果と共にすべて数値化されて公開されていた。それだけに、デビュー前の彼女たちの、そして視聴者=プロデューサーたちの緊張感は、尋常ではなかった。
他の「PROJECT IM@S」のアイドルと肩を並べつつ、同時に配信者としての側面も持つ、キャラクターとVTuberの中間のような「vα-liv」の特殊な立ち位置と、リアルタイム性の高い活動は、多くの注目を集めていた。デビューしたあとも配信活動は続いており、彼女たちの物語は「第二章」として今もなお進行し続けている。
視聴者を巻き込む「mekPark」への期待
ここまで紹介してきたように、VTuberの練習生的プロジェクトは「タレント育成(表から見えない状態でプランニングする)」と「成長コンテンツ(表に出して過程を見てもらう)」との比重が、それぞれの会社で大きく異なっている。
今回カバーが発表した「mekPark」は、どちらの要素も含んではいるものの、「成長コンテンツ」としての比重が高いように見受けられる。それぞれのユニットのYouTubeチャンネルが早々に作られていて、最初から努力の過程を追いやすい状態になっているあたり、正式デビュー前の姿を積極的に見せていくスタイルであることが伺える。また、最終的なデビューの可否がはっきりと視聴者に提示される予定になっているのも、「成長コンテンツ」としては大きな物語性のあるポイントだ。
特に、視聴数や同時接続数、視聴者のアンケート結果がデビューの可否に影響するのは、このプロジェクトにおいて重要な部分になってくるだろう。公式WEBサイトにある「mekParkの練習生は『皆様が隣で支え、育てる存在』です」という文言からも、視聴者参加型のプロジェクトとして運営していこうという意思が感じられる。明確なラインは提示されていないものの、二次創作まで含めてファンの反応次第で昇格できるというのは、視聴者側としては応援のしがいがある。
もちろん、彼女たちがデビューできない可能性が存在する、という点では、心臓に悪いヒヤヒヤ感がある。しかしながら、そこは運営判断だけでなく視聴者側の応援次第でデビューをサポートできる、と捉えることもできるだろう。
くわえて公式WEBサイトには「2年を待たずとも、審査基準をクリアしたと判断されたタイミングで随時決定します。皆様の熱い応援が、練習生たちのプロデビューを早めることにつながります」という声明もあり、「デビューを早める」という言葉が使われていることからも、運営サイドもデビューに関しては比較的ポジティブな姿勢でいることが感じられる。合格の可否の問題はもちろん大事だが、それ以上に全力で挑む練習生たちの姿を見せること自体が、最大の目的なのだろう。
個人単位ではなく、ユニット単位での昇格が重視されているのも注目したい部分だ。今までもホロライブDEV_ISの「ReGLOSS」「FLOW GLOW」がユニットとしてデビューし活動しているが、そうしたグループとしての人気がより強い形で求められていくことになりそうだ。
「mekPark」において興味深いのは、練習生3人だけがユニットになるのではなく、ディレクター1人を含んだ4人体制で評価される、という部分だ。視聴者からどういう形の見え方になるのか(ディレクターがそもそも表に出てくるのかなど)、現状では全くわからないが、視聴者側が今まで知ることのできなかった裏側まで観ることができるような、新しいコンテンツを提示してくれる可能性にも期待ができる。
そして、仮にデビューできたとした場合、それまでの期間の配信がアーカイブに残るかどうかも、現時点ではわからないが、期待したい。とにかく今言えるのは、いまからなら、リアルタイムで練習生たちのステップアップを追う目撃者になることができるということ。筆者も、ファンを巻き込んだ成長の物語が生まれることを望みつつ、練習生たちの活動開始を待ちたいと思う。
〈参考〉
https://mekpark.com/pre-debut1/
https://www.holoplus.com/
https://www.youtube.com/@ACHRORA_official
https://www.youtube.com/@Unit_B_Pre_Debut
https://vta.anycolor.co.jp/
https://www.nijisanji.jp/news/r25wvf-fa
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000044525.html
https://audition.vspo.jp/ja/
https://idolmaster-official.jp/va-liv
https://idolmaster-official.jp/va-liv/event/876profes