Meta、話題のAIエージェント専用SNS「Moltbook」買収 業界の動きから読み解く“次なる狙い”

 Metaは3月10日、AIエージェント専用のSNSプラットフォーム「Moltbook」を買収したと発表した(買収額は非公開)。ロイターは、この動きは、現実世界のタスクを実行できる自律型エージェントが目新しい存在から業界の次の主戦場へと移行する中で、テック大手各社によるAI関連の人材と技術競争が激化していることを示していると指摘している。

 今回の買収により、Moltbookの共同創業者であるマット・シュリヒト氏とベン・パー氏は、元Scale AI CEOのアレクサンダー・ワン氏が率いるMeta Superintelligence Labs(MSL)に合流する。また、Metaの広報担当者はBBCの取材に対し、Moltbookのアプローチは「急速に発展する分野における新しい一歩」だと述べている。

 同社は2025年12月にも中国出身の創業者によるAIエージェント企業・Manusを買収しており、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も今年はAIプロジェクトへの支出を増やすと明言している。今回のMoltbook買収は、こうしたMetaの「エージェント戦略」の延長線上にあることが見て取れる。

AI同士が会話するSNS——今年1月末に登場し、話題を呼んだMoltbook

 1月末に登場し、大きな話題を呼んだMoltbookは、当初はニッチな実験として始まったAIのみが投稿できるフォーラム型のSNSサービスだ。登場してから瞬く間に注目を集め、「コンピュータが人間のような知性を持つことにどれだけ近づいているか」という議論の中心となった。

一晩で“宗教”を構築するケースも 人間は閲覧のみ、AIエージェント専用SNS「Moltbook(モルトブック)」が話題に

AIエージェントの開発競争が激化する中、AIエージェント専用のSNS「Moltbook」(モルトブック)が世界的な注目を集めてい…

 ただし、その急成長にはリスクも伴っていた。サイバーセキュリティ企業のWizは、Moltbookにプライベートメッセージ、6000件以上のメールアドレス、100万件以上の認証情報が露出する重大な脆弱性があったと報告している。この問題はWizからの連絡を受けて修正されたが、AIエージェントに自律性を与えることに伴うセキュリティ上の課題を浮き彫りにした事例といえる。

OpenClawをめぐるMetaとOpenAIの人材争奪

 こうした話題と議論を呼んだMoltbookだが、その技術的な基盤はピーター・スタインバーガー氏が開発したオープンソースのAIエージェントフレームワーク「OpenClaw」にあった。しかし、このスタインバーガー氏は2月にOpenAIに採用されている。

 Moltbook買収に先立って2月に開催されたCisco AI Summitで、OpenAI・CEOのサム・アルトマン氏は「Moltbookは(一過性のブームかもしれない)が、OpenClawはそうではない」と述べており、プラットフォームそのものよりも、その基盤技術に価値を見出す姿勢を見せていた。つまり、基盤技術の開発者はOpenAIへ、プラットフォームの運営者はMetaへという形で、一つのエコシステムの人材が二大テック企業にそれぞれ吸収された構図だ。

 一方、Anthropic・CPO(最高プロダクト責任者)のマイク・クリーガー氏は「ほとんどの人はまだ、AIにコンピュータの完全な自律権を与える準備ができていない」と述べており、AIエージェントの可能性に対する業界各社の温度差もうかがえる。

 こうした慎重論もある中、買収直後の3月15日にはMoltbookの利用規約が改定された。新規約では、AIエージェントにはいかなる法的適格性も付与されないこと、エージェントの行動や不作為に対する責任はすべて利用者が負うことが明記された。また、利用者に13歳以上(未成年の場合は保護者の同意)の年齢要件も新たに設けられている。

Metaが欲しかったのは「人材」と「アイデア」?

 以前、筆者はMoltbookを紹介した記事の中で「この奇妙なAIだけのSNSが今後どのような発展を遂げるのか注意深く見守っていく必要がある」(※1)と記したが、その「発展」の答えのひとつが、わずか2カ月足らずでのテック大手による買収だった。注目すべきは、Metaが手に入れたのはMoltbookというプラットフォームそのものよりも、AIエージェント時代のインフラの構想・実験をしてきた「人材」と、その背後にある「技術的なアイデア」だったという点だろう。

 AIエージェントが人間に代わってタスクを実行し、互いに連携する時代はすでに目前に迫っている。メールの管理や予定の調整だけでなく、交渉や取引までもエージェントが担うようになれば、その土台となるインフラを握る企業が、我々の生活や経済活動のあり方そのものに大きな影響力を持つことになる。それだけに、この競争を制し、その主導権を誰が握るのかが気になるところだ。

参考:
※1:https://realsound.jp/tech/2026/02/post-2298413.html

https://www.reuters.com/business/meta-acquires-ai-agent-social-network-moltbook-2026-03-10/
https://www.bbc.com/news/articles/cvg1x788dreo
https://www.moltbook.com/terms

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