なぜ今ADVゲームが売れるのか? 『パラノマサイト』続編、『まのさば』40万本突破などブームの理由を探る
近頃のゲーム業界を席巻している、ビジュアルノベル形式のADVゲーム。その人気は2026年以降も続くかもしれない。たとえば2月19日には人気ミステリーADVシリーズの新作『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』が販売される予定となっており、大きな注目を集めている。
同作はスクウェア・エニックスによる青春群像伝奇ミステリー。三重県伊勢志摩地方の離島を舞台として、不老不死をもたらすとされる人魚の呪いをめぐって驚愕のドラマが繰り広げられるという。
なお、シリーズ前作の『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』はここ最近のスクウェア・エニックス作品としては最大級の当たり作で、今のADVブームを象徴するような作品だった。背筋がぞっとするホラー要素や、デスゲーム風の緊迫感のある駆け引きがプレイヤーを引き込み、口コミで大きな話題を呼んだことが記憶に新しい。
ADVの追い風となる「口コミ」の力
この口コミの力こそが、現代におけるADVゲームの強みなのかもしれない。実際に若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」が15~24歳のZ世代を対象として行った「Z世代のゲームに関する意識調査」では、「ゲームを購入・ダウンロードしたいと思うきっかけ」に対する回答のTOP3が「動画配信サービス」「Twitter(現X)」「友達からの口コミ・誘い」という結果になっていた。(※)
とくにADVゲームのなかでも、ホラーやデスゲームなど、受け手の感情を強く刺激する要素を盛り込んだ作品は口コミで広まりやすい印象だ。たとえば2025年2月にリリースされた『都市伝説解体センター』は、禍々しいドット絵やさまざまな都市伝説の引用、そして衝撃的なシナリオによって多くの人がSNS上で言及し、大きなヒットを記録した。
“全編実況OK”で40万本超え 『魔法少女ノ魔女裁判』の衝撃
また今風な広まり方を見せたADVとして代表的なのが、“まのさば”こと『魔法少女ノ魔女裁判』。牢屋敷に監禁された少女たちが、処刑対象である魔女を決めるために議論を重ねていくというデスゲーム的な内容で、『ダンガンロンパ』シリーズへのオマージュを感じさせる内容だった。
なお基本的にテキストを読み進めるADVの特性として、配信許諾は序盤の決められたシーンまでに限定されることが多い。しかし同作はADVとしては異例の“全編ゲーム実況OK”という方針で世に送り出された。その結果、多くのストリーマーやVTuberがエンディングまでフルで配信を行い、視聴者がリアルタイムで一緒に推理や考察を楽しむという盛り上がりが生まれた。こうした配信を通じて作品の認知度が一気に拡大したことが、累計40万本を超える破格のヒットにつながった要因だと思われる。
そのほかTVアニメが連続2クールで放送中の人狼×SFループミステリー『グノーシア』や、瀬戸口廉也が企画・シナリオを手掛けた『ヒラヒラヒヒル』なども、近年口コミで人気を伸ばしたADVの例として挙げられるだろう。
ADVが躍進する理由は「手軽さ」と「大手出版社の本格参入」に
こうしたヒット作が次々と生まれている背景としては、昔と比べて複雑な操作性のゲームが多くなったことが一つの要因だと思われる。ADVは謎解き要素こそあるものの、基本的な操作はごく簡単だ。ゲームの巧拙や年齢を問わず、誰でも簡単にプレイできる上、それによって濃密な物語体験を得ることもできる。
また開発側の視点でみれば、比較的制作コストが低く、小規模で開発できるという強みもある。加えて近年は、“読み物”の世界で圧倒的なパワーを持つ大手出版社がゲーム領域に本格参入していることも見逃せない。集英社はゲームクリエイターズCAMPを通じてインディー開発者を支援しており、その成果のひとつが先述の『都市伝説解体センター』だ。講談社も「年間最大1000万円の開発支援金」を掲げるゲームクリエイターズラボを運営し、物語重視のゲームを数多く世に送り出している。
物語づくりのプロフェッショナルである出版社がクリエイターの後ろ盾となることで、ADVというジャンルはますます大きなムーブメントへと成長していくのではないだろうか。
参照
※:https://www.shibuya109.co.jp/shibuya109lab/reports/230719/