“コトコト” 低音がクセになる 打鍵音まで設計されたロジクール新型キーボード『Alto Keys K98M』をひと足先に試してみた
株式会社ロジクールは、新型メカニカルキーボード『Alto Keys K98M』(以下、『K98M』)を2月26日に発売する。
本製品は、ロジクールとして初めてガスケットマウント構造を採用した意欲作だ。これまでゲーミング分野で培ってきたメカニカルキーボード技術を、ビジネス用途へと本格的に展開した最初のモデルでもある。
掲げるテーマは「仕事で一日中使えるメカニカルキーボード」。その思想が内部構造そのものに落とし込まれている点が最大の特徴だ。
初の「ガスケット構造」採用ーーロジクールは何を狙ったのか
ロジクールは2017年以降、主にゲーミング市場向けに「メカニカルキーボード」の研究開発を進めてきた。性能面として「高速入力」や「耐久性」といった部分が重視されてきた一方で、近年は在宅勤務も一般化し、ビジネス用途においても打鍵感だけでなく、打鍵音もこだわって選択するユーザーも。
今回の『K98M』は、そうした変化を踏まえて設計されたモデルだ。最大のポイントは、キーボードのプレートとケースの間に柔らかい素材を挟み込む「ガスケットマウント構造」を初めて採用したことにある。
ガスケットとは本来、自動車や機械部品などに使われる緩衝・密閉用の部材で、振動や衝撃を吸収する役割を持つ。高級メカニカルキーボードの世界では、この構造を内部フレームに応用することで、押下時の衝撃を軽減し、打鍵音を丸くする設計が主流になりつつある。
『K98M』は、ロジクール独自開発の「UniCushion(ユニクッション)ガスケット」を採用しており、内部構造は合計10層構成。そのうち5層が吸音・緩衝レイヤーとして機能し、ラテックスフォームやIXPEフォームなど複数素材を組み合わせることで、キー入力時の衝撃を段階的に吸収する仕組みになっている。
スペックとして読むとやや専門的だが、実際に触れてみると、この構造の意味はすぐに体感できる。
「コトコト」という打鍵感は決して誇張ではない
箱から取り出してまず感じたのは、これまでのロジクール製キーボードとは明らかに方向性が違うという点だ。
透明感のあるケースデザインはどこかレトロで、内部構造がわずかに透けて見える。ゲーミング寄りでもなく、ビジネス寄りでもない、不思議な中間的存在感がある。
バックライトは白色で、暗い場所でもキーを確認できる実用的な仕様だ。発光は控えめで、過度に主張するタイプではない。オフィス用デスクにも自宅の作業環境にもなじみやすいデザインだ。
レイアウトはテンキーと矢印キーを備えた98%レイアウト。フルサイズに近い操作性を保ちながら横幅を抑えており、マウスとの距離が近くなる点は実用的だ。JIS日本語配列(102キー)を採用している点も、日本のユーザーを意識した仕様といえる。
実際にタイピングして最も印象に残ったのは、キーを底まで押し込んだときの感触だ。
一般的なメカニカルキーボードでは、「カン」「コツン」といった硬質な底打ち感が残ることが多いが、『K98M』は指に返ってくる感触がややソフトで、わずかなバウンス感を伴う。
ロジクールが表現する「コトコト感」という言葉は、マーケティング的な誇張かと当初は思っていた。しかし、実際に使ってみるとかなり的確だ。高音域の金属的な響きが抑えられ、低めで丸い音にまとまっている。
静音キーボードほど無音ではないが、不快さはなく、むしろタイピングに一定のリズム感をもたらしてくれる。夜間の作業や静かなオフィス環境でも使えるレベルであり、「メカニカル=うるさい」という先入観を持っている人ほど、この違いは分かりやすいはずだ。
キースイッチにはロジクール独自の「Marble Switch(マーブルスイッチ)」を採用。リニアタイプのため、押下時の引っかかりはなくストロークは滑らかだ。押下圧も軽すぎず重すぎず、長時間の文章入力でも指が疲れにくい。
重要なのは、このスイッチ単体の性能というより、UniCushionガスケット構造と組み合わせたときの全体としての完成度だ。
キーを押し始めてから底打ちするまでの動きは自然で、衝撃が一気に返ってくる感覚がない。これはスイッチの出来が良いというよりも、筐体構造まで含めてバランスよく設計されている結果だろう。
高級な構造を取り入れるだけでなく、量産モデルとして安定した品質を保つ前提で仕上げている点に、ロジクールらしい堅実な設計思想がうかがえる。カスタムキーボードとは異なるアプローチだ。
ロジクールらしく機能面もかなり「堅実」
『K98M』は打鍵感だけでなく、機能面も充実している。Easy-Switchによる最大3台のデバイス切り替え、BluetoothとLogi Boltの両対応、USB-C充電、有線接続への対応など、日常的な業務用途で困る場面はほぼない。
専用ソフト「Logi Options+」では、ショートカットキーの割り当てやマクロ機能「Smart Actions」も利用できる。作業効率を高めるための機能はしっかり用意されており、このあたりは従来のロジクール製キーボードと同様だ。
バッテリー駆動時間も、バックライトオフで最長1年間(約200万回入力相当)とされており、充電を意識する頻度は極めて少ない。ワイヤレスモデルとしては十分な持続時間だ。さらにホットスワップに対応し、スイッチ交換というカスタム要素も残されている。専門的な知識がなくても扱える設計で、カスタムキーボードに興味はあるものの自作までは踏み込めない層にとっては、ちょい挿し要素としてひとつの選択肢になりそうだ。
『K98M』は、やや尖った製品であることは確かだ。透明ケースのデザインや98%配列は、人を選ぶ部分もある。しかし一方で、キーボードマニア向けに寄りすぎることなく、日常の仕事や文章入力を快適にしたいユーザーにも向けた、バランスの良いメカニカルキーボードに仕上がっている。
打鍵感や音にも丁寧に配慮しながら、1万8590円 (※ロジクールオンラインストア価格) と価格や機能は現実的にまとめられている。「最初の本格メカニカルキーボード」としても選びやすい存在だろう。
これまで実用性を重視してきたロジクールが、本製品ではそこに「打つこと自体の心地よさ」という価値を加えた。『K98M』は同社のキーボードづくりが新たな段階へ踏み出したことを感じさせる一台だ。