堀江晶太が有識者と語り尽くす、VR空間と音楽の交差によって生まれる“化学反応”
ヤマハ『SYNCROOM』開発担当 原貴洋氏(中央・上)、音響事業企画 千々和孝秀氏(中央・下)
バーチャル音楽コミュニティ「EMN Records」主宰 Emnyeca(右)
連載「堀江晶太が見通す『VRChat』の世界」第4回(後編)
普段は音楽家として活動しながら、VRの世界では“ひとりのユーザー”としてこの世界を楽しんでいるという堀江晶太。本連載では、堀江の『VRChat』愛、そこで体験したさまざまな出来事、リスペクトする「注目のクリエイター」などについて語っていく。
第4回となる今回は、オンラインを介したバンド演奏やセッションを使う上で欠かせないツール、ヤマハ『SYNCROOM』の開発担当・原貴洋氏をお招きし、そのツールを日頃から活用するバーチャル音楽コミュニティ「EMN Records」の主宰・Emnyeca(アムニェカ)氏と堀江氏による鼎談を実施。
後編では、ヤマハの音響事業企画を担当する千々和(ちぢわ)孝秀氏も交えて、ヤマハと『VRChat』の関わりから、Emnyeca氏がコミュニティを立ち上げたきっかけ、バーチャル空間の身体性がもたらしたもの、そして10年後の未来に期待することなどについて語り合ってもらった。(編集部)
SYNCROOMがVRの音楽コミュニティから受けた“熱烈な愛”
——SYNCROOMが順調に普及するなか、インターネットの中でもカッティングエッジな『VRChat』の世界にたどり着くわけですが、ヤマハが『VRChat』に着目し始めたのはいつ頃からだったのでしょうか?
ヤマハ・原貴洋(以下、原):実は、私の立場からだと「『VRChat』でこんなに使われている」ということに気が付いていなかったんですよ。どちらかというと、皆さんが使ってくれていたのを後から知ったという側面がありまして。もちろん、2019年ごろからVR空間の中でライブを完結させるといった構想は持っていましたが、数年後にはもう使われているとは思いませんでした。
——VRコミュニティとヤマハの本格的な接触は、千々和さんがきっかけで始まったそうですね。どのような経緯で、SYNCROOMが多くの方に利用されていると気が付いたのでしょうか?
ヤマハ・千々和孝秀(以下、千々和):私は現在、ヤマハで音響事業企画の担当をしているのですが、プライベートで『Meta Quest 2』を入手してから、『VRChat』で頻繁に遊んでいたんです。そうした中で、「SLT(Spot Light Talks)」をはじめとするオープンマイクバーなどでSYNCROOMをお使いの方が多いことを知りまして。
いちユーザーとしてVR音楽カルチャーのことを知っていくうちに、その熱量と可能性を感じて、弊社としても一歩踏み出さねばと、『バーチャルマーケット2022 Winter』の企業出展をプロデュースしたんです。その中で、『VRChat』のライブハウス「V-Kitazawa AWAKE」とのコラボレーションとして『Yamaha×AWAKE VirtualMarket Special Music Night』というVR音楽ライブを実施させていただきました。
そのライブ後に、出演いただいたアーティスト様をはじめ、多くの方々に囲まれ、弊社への期待やSYNCROOMへの想いなど、ありがたいお言葉をたくさんいただきまして。目頭が熱くなりましたね。
堀江晶太(以下、堀江):みんな、きっと無限に言いたいことがありますよ(笑)。「本当にすごいんだ、SYNCROOMは!」って。
僕が『VRChat』に入り始めたのは4~5年前ですが、その時点ではすでにライブハウスのワールドでSYNCROOMを使ったセッション文化があったので、もっともっと前からあったのではないか、という感じはしますね。
原:開発側としても、千々和や皆さんからの色々なお話を聞いていく中で、『VRChat』はSYNCROOMを使う“必然性”が強い世界なのだなと、すごく感じましたね。
繰り返しになりますが、ユースケースを考えていくと、どうしても思いつくのは限定的な使い方になるなかで、VR空間に集まる人たちは違う場所にいて、同じ空間を共有することが大前提にある世界ですよね。なので、そこで一緒に演奏をしようとするとそういうツールが必要になるということは、VRの世界を知っていくうちに実感した部分ですね。
堀江:『VRChat』のユーザーって少し不思議な特性を持っていて、みんな思ったよりもオフ会とかに対して柔軟なんですよね。古のインターネット民の感覚からすると、結構驚いた部分なんですが、でもそれでいて『VRChat』の中だけで交流している人ももちろん沢山いて、リアルの方が優位だとか、音楽にしてもそっちの方がふさわしい、みたいな考え方がない。
だから、セッション文化にしても「しょうがないからオンラインでセッションしてる」という感覚は、みんなないと思います。ただただニュートラルに「居場所が『VRChat』だったから、そこでやっているだけ」という。
原:そうですね。今堀江さんが言われた通りで、「音楽」という軸だけで考えてしまうと、SYNCROOMをどんな時に使うのか、という凝り固まった見方になってしまう。でも『VRChat』の中だと、そこに集まる前提の中で、どうやったら一緒に音楽ができるだろう、という話になって、全然見え方が変わるんだなと。
堀江:もっと多くのミュージシャンが知っていくべきだと、僕は常々思いますね(笑)。