2025年に印象を残したAndroidスマートフォンを振り返る 「AIの日常化」と「個性の先鋭化」が共存した1年に

 2025年を振り返ると、Androidスマートフォン市場には実に多彩なモデルが登場した。従来から続くメーカーごとの思想や強みを土台にしつつ、デザイン、カメラ、AI、ゲーム体験など、それぞれの方向性をより明確に打ち出した端末が揃い、あらためてAndroidが、多様な方向性の端末を同時に受け止められるプラットフォームであることを印象づける1年だった。

 その中でも、特に印象に残った端末をいくつかピックアップしたい。

 まず印象的だったのが、夏に登場した「Google Pixel 10」シリーズだ。独自チップ「Tensor G5」への進化によって、AIは特別な機能ではなく、より日常的な操作の中に自然に溶け込む存在になった。撮影時に構図を提案してくれる「カメラコーチ」や、マグネット式の充電機構「PixelSnap」など、使いやすさを重視した新しい基準を示している。

 デザイン面で注目を集めたのは『Nothing Phone (3)』だろう。背面が光る「Glyphインターフェース」は、ドット表示が可能な「Glyphマトリックス」へと進化し、通知の表示にとどまらず、簡単なミニゲームも楽しめるなど、表現の幅を広げた。

 この進化で大きく変わったのが、通知との向き合い方だ。従来のGlyphインターフェースは光り方の違いで通知を判別していたのに対し、Glyphマトリックスではアイコンや簡易的な文字、進捗表示などを背面に表示できる。そのため、画面を点灯させなくても「誰から・何の通知か」「今すぐ確認すべきか」を直感的に判断しやすくなった。

 背面の表示を見るだけで完結し、不要であればそのまま触らずに済む。常に画面を確認しなくても必要な情報だけを把握できる設計は、結果としてスマートフォンとの付き合い方そのものを見直すきっかけになる。デザイン先行に見えながら、実際には体験設計まで一貫して考え抜かれている点に、このモデルの完成度の高さを感じた。

 日本市場での「本気」を感じさせたのが『OPPO Find X9』だ。ハッセルブラッド監修の美しいカメラや洗練された薄型ボディといったハイエンドらしい魅力を備えつつ、日本独自仕様であるFeliCaを最初から前提に組み込んだ点が大きい。

 これまではデザインや性能を優先すると使い勝手の面で割り切りが必要だったハイエンドAndroidに対し、本機は日常利用まで含めて完成度を高めてきた印象を受ける。見た目の美しさだけでなく、毎日使う道具としての安心感まで含めて評価したい一台だ。

 カメラ性能をとことん追求したモデルとして印象に残ったのが『Xiaomi 15 Ultra』だ。1インチの大型センサーとライカ監修の画づくりにより、その立ち位置はスマートフォンというよりもカメラに近い存在と言える。

 別売のフォトグラフィーキットを装着すれば、構えたときのバランスや操作感まで含めて専用機に近づき、日常使いの万能さよりも「撮る体験」を優先した設計思想が明確に伝わってくる。万人向けではないが、写真撮影を主目的にスマートフォンを選ぶユーザーにとっては、強い個性を持った一台だ。

 一方、普段使いにちょうどいいモデルとして安定した人気を集めたのが『Xperia 10 VII』だ。軽くて持ちやすい本体や、電池持ちの良さといった従来の良さをそのままに、性能と価格のバランスを重視した設計が続いている。派手さはないものの、「これで十分」ではなく「これがいい」と感じさせる存在として、多くの人に選ばれた。

 そして、特定の用途に特化したスマートフォンの進化を象徴したのが『REDMAGIC 11 Pro』だ。高性能チップの普及により、発熱やバッテリー消費が課題となる中、本機はスマートフォンとして初となる水冷システムを内蔵した点が大きな特徴となっている。

 さらに、空冷ファンを搭載しながら防水性能(IPX8)も実現するなど、これまで両立が難しかった要素をまとめ上げた設計は、性能を最大限に引き出すための考え方が一段進んだことを示している。なお、日本向けモデルは12月24日から先行予約販売が始まっている。

 折りたたみスマートフォンも『Galaxy Z Fold7/Flip7』の登場によって完成度がさらに高まってきた。ヒンジ構造の改良による折り目の目立ちにくさや耐久性の向上に加え、本体の薄型・軽量化が進んだことで使い勝手が向上し、より日常的に使いやすくなった。特別な存在だった折りたたみスマホが、選択肢のひとつとして現実的な完成度に到達したことを示すモデルと言える。

 こうして改めて振り返ってみると、ハイエンドからミドルレンジ、特化型モデルまで、2025年は印象に残るAndroidスマートフォンが数多く登場した年だったように思う。

 進化の限界が語られることも多いスマートフォンだが、2025年はその見方を裏切るようなモデルも少なくなかった。来年も各社からどのようなアプローチが提示されるのか、今から楽しみにしたい。

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