闇バイト、ドラッグ取引、報道の裏側……ABEMAのドラマ作品が扱う“攻め”の新領域に注目

 近年、ABEMAのオリジナルドラマが確かな存在感を放ち始めている。恋愛リアリティショーやバラエティの印象が強いプラットフォームでありながら、ドラマというフィールドにおいてはまったく異なる表情を見せているのだ。

 『透明なわたしたち』『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』『わかっていても the shapes of love』『警視庁麻薬取締課 MOGURA』『死ぬほど愛して』『MISS KING/ミス・キング』『スキャンダルイブ』。この近作を並べてみると、いずれにも共通して漂う空気があることに気づく。

 ドラッグ取引、闇バイト、芸能界の裏側……。地上波では扱いづらいテーマにも、映画のようなクオリティの映像で正面から切り込み、とにかく面白いドラマを作り続けているABEMA。これまでのラインナップを改めて見渡すと、いま最も「攻めたドラマ」を送り出している場がABEMAであることがよくわかるだろう。

『透明なわたしたち』

 福原遥主演の『透明なわたしたち』は、渋谷で起きた無差別刺傷事件をきっかけに、高校時代の仲良しグループが再び交錯していく群像サスペンスだ。

 週刊誌のゴシップライターとして働く中川碧(福原遥)が、ニュース映像を見て「犯人は同級生かもしれない」と気づく場面から物語は動き出す。過去の文化祭で起きた“ある事件”と、現在の凶悪犯罪が、碧の視点で少しずつつながっていく。

 松本優作監督、プロデュースに藤井道人、企画・制作はBABEL LABEL。完全オリジナルの6話構成ということもあり、全体のトーンは連ドラというよりインディーズ映画の連作に近い。群像劇のなかで、誰もが「どこにも居場所がない」と感じている20代を、静かで冷たい画のなかに封じ込めていく。

 事件の真相そのものについても、もちろん気になる展開が続くが、この作品のサスペンスは「犯人は誰か」以上に「どうして彼らはここまで追い詰められてしまったのか」という心の過程に置かれている。アジア・テレビジョン・アワードでベストオリジナルドラマシリーズ部門にノミネートされたのも、その映画的な完成度と、社会派ドラマとしての強さが評価された結果だろう。

https://abema.tv/video/title/90-2002

『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』

 『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』は、情報をエサに商売をする情報屋、通称“インフォーマ”こと木原慶次郎(桐谷健太)と週刊誌記者の三島寛治(佐野玲於)が、闇バイト殺人事件の裏に蠢く「巨悪」に迫るクライムサスペンスだ。舞台は日本とタイ・バンコク。

 現地ロケによるリアリティ、銃撃戦やカーチェイスのスケール感は、配信ドラマの枠を軽々と超えている。実際、配信開始直後から「映画みたい」「日本のドラマでこんなクオリティの作品が撮れるのか」といった驚きの声が相次ぎ、その映像的な完成度の高さが大きな話題となった。

 派手なアクションは本作の大きな見どころだが、核にあるのは頭脳戦と情報戦である点も面白い。互いに相手の心理を読み、操り、裏をかく駆け引きの連続には、思わず釘付けになってしまう。

https://abema.tv/video/title/159-38

『わかっていても the shapes of love』

 ABEMAのオリジナルドラマには、事件や陰謀を軸にしたサスペンス作品が多い。だが『わかっていても the shapes of love』は、一味違うテイストの作品である。この作品が描くのは“派手な事件は起きないのに、心がざわつく”人間関係そのものだからだ。

 舞台は鎌倉の美術大学。彫刻学科の助手として働く浜崎美羽(南沙良)が出会ったのは、特別臨時講師として赴任してきた若き芸術家・香坂漣(横浜流星)。問題は、この横浜流星演じる漣の“沼男っぷり”が凄まじいことだ。誰もが惹きつけられる吸引力を持ちながら、誰にも深入りさせない。恋に落ちるのは一瞬だが、その関係は最初からどこか不安定で、触れたら崩れてしまいそうな危うさを孕んでいた。

 原作はLINEマンガ発のwebtoon『わかっていても』。韓国ドラマ版を、日本・鎌倉を舞台に再構築した、監督・中川龍太郎による映像は、アトリエの静けさや夜の街を漂う孤独を写し取り、恋愛ドラマでありながら映画のような余韻をまとわせていく。どこを切り取ってもため息が出るくらい美しい、そんな作品だ。

https://abema.tv/video/title/342-7

『警視庁麻薬取締課 MOGURA』

 『警視庁麻薬取締課 MOGURA』では、ラップスキルを持つ警察官が、覚醒剤や麻薬の摘発のためにラッパー集団へ潜入する。実話をもとにしたHIPHOPエンタメドラマだ。

 問題児の元マル暴刑事・伊弉諾翔吉を演じるのは、ラッパーの般若。Jin Dogg、Red Eye、jinmenusagiなど、HIPHOPシーンで活躍するラッパーたちが顔をそろえ、クラブやストリートの空気をそのまま画面に持ち込んでくる。

 繰り広げられるラップバトルと、その裏で進むドラッグ捜査。伊弉諾は「法」と「自分の感情」のどちらに従うのかを何度も選ばされ、見ているこちらも揺さぶられていく。彼は職務を全うするのか、それとも警察を裏切るのか。刺激的な作品やヒップホップカルチャーが好きな人、これまでに見たことのないエンタメに触れたい人には、確実に刺さる一本だろう。

https://abema.tv/video/title/90-2004

『死ぬほど愛して』

 成宮寛貴の約8年ぶりの出演作として大きな話題を呼んだ『死ぬほど愛して』は、穏やかな夫婦の生活に潜む違和感を少しずつ浮かび上がらせていくサスペンスドラマだ。

 成宮が演じる神城真人は、妻・澪(瀧本美織)にとって理想的な夫そのもの。だが、彼には“ある秘密”があり、その影が物語全体に不穏な緊張感を生んでいく。成宮の眼差しや佇まいからにじみ出る得体の知れなさに視聴者からは「続きが気になりすぎる」との声が続出した。

 さらに周囲の人物たちもどこか秘密を抱えているように見え、視聴者は何を信じればいいのかと揺さぶられ続けるはずだ。夫婦の過去やその周囲で起きる事件が複雑に絡まり合い、全8話にわたって漂う張り詰めた空気が、次の展開へと引き込む吸引力になっている。

 仄暗い愛情と疑念、そして狂気が交差する物語を、かなり踏み込んだ視点から描いた本作。穏やかさの裏に潜むサスペンスは、回を追うごとに深まっていく。

https://abema.tv/video/title/90-2024

『MISS KING/ミス・キング』

 9月から配信中の『MISS KING/ミス・キング』は、将棋の世界を舞台にした復讐劇。主人公の国見飛鳥(のん)は、天才棋士の父・結城彰一(中村獅童)に人生を奪われた過去を持つ女性。捨てられた記憶と憎しみを抱えたまま、大人になってから将棋の世界に飛び込み、「史上初の女性棋士」として父と対峙しようとする。

 盤上の読み合いと、家族関係のねじれが完全にリンクしているのがこの作品の面白さだ。飛鳥と共に彰一への復讐を誓うのは、元棋士・藤堂(藤木直人)。共通の因縁を持つ二人は、「将棋で彰一に復讐する」ことを目標に作戦を立てていく。誰も到達できていない「史上初の女性棋士」という場所を目指し、自らの強い意志で快進撃を続ける飛鳥。だが、その周囲には敵意や嫉妬が渦巻いていく。それぞれの選択が一手一手として盤面に反映される構成は、緊張感を途切れさせない。ABEMAオリジナルらしい攻めた復讐サスペンスだ。

https://abema.tv/video/title/90-2038

映画のような「画」と、日常と地続きの「サスペンス」

 ここまで挙げた5作品は、ジャンルだけを見ればバラバラだ。若者の群像サスペンスにクライムアクション、大人のラブストーリー……。それでも、どの作品にも確かな共通点がある。

 ひとつは、描かれるドラマが「私たちの日常と地続き」であることだ。ドラッグをめぐる潜入捜査や闇バイト、傷と依存を抱えた恋愛。極端かもしれないが、どの作品の設定もいまこの社会で起こりうることとして描かれているのも確かだ。地上波の枠にとらわれないからこそ、こうしたセンシティブな題材に踏み込める側面もあるのだろう。

 そしてもうひとつが、映画のような画作りだ。ABEMAオリジナル作品のロケーションや照明の作り込みは、配信ドラマの枠を超えた劇場クオリティになっている。身近なテーマと圧倒的な映像クオリティ。この両輪があるからこそ、ABEMAのドラマは強く心に刺さるのだろう。

 そんなABEMAオリジナルドラマの最新作が、11月19日から配信を開始した『スキャンダルイブ』だ。芸能事務所と週刊誌が繰り広げるメディアサスペンスである。

 芸能事務所社長・井岡咲(柴咲コウ)のもとに、所属俳優のスキャンダルが掲載されるという“事前告知”が届く。相手は週刊誌記者・平田奏(川口春奈)。残された時間は72時間。危機管理、情報リーク、裏取り、火消し。「スキャンダル報道の裏側」が、ABEMAならではの視点でサスペンスになる。

 『透明なわたしたち』から『MISS KING/ミス・キング』まで、ABEMAは「攻めたドラマ」を作り続けてきた。身近なテーマを劇場クオリティの映像で描き、観る者の心を揺さぶる。その到達点のひとつとして、『スキャンダルイブ』がどんな緊張感を生み出すのか。今後のABEMAオリジナルドラマにも、期待が高まるばかりだ。

『ABEMA』総力特集はこちら:https://realsound.jp/tech/abema

■「ABEMA」について

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(※)2024年10月時点、株式会社AbemaTV調べ

『ABEMA』トップページ:https://abema.tv/

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