『モンハンワイルズ』×『FF14』開発インタビュー コラボで「オメガ」の“別個体”が登場、オリジナルとの絡みも見どころに?

 『モンスターハンターワイルズ(以下、ワイルズ)』では9月29日に配信された無料タイトルアップデート第3弾として、『ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)』とのコラボが実装。『FF14』から「オメガ・プラネテス」が登場したり、「暗黒騎士」や「ピクトマンサー」といったジョブが再現されたりと、タイトルを超えた内容が大きな話題を呼んでいる。

 今回は9月25日~28日に開催された『東京ゲームショウ2025』(TGS2025)にて、『ワイルズ』のプロデューサー・辻本良三氏、ディレクター・徳田優也氏、『FF14』プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏への合同インタビューが実施されたので、そちらで語られたコラボに実現の経緯や「オメガ・プラネテス」の詳細についてお伝えしたい。(SIGH)

『モンスターハンターワイルズ』無料タイトルアップデート第3弾 紹介映像

――コラボ追加モンスター「オメガ・プラネテス」のクエストは常設・期間限定どちらになりますか?

徳田: 『TGS2025』の試遊で出展したタイプの「オメガ・プラネテス」クエストに関しては、エクストラミッションをクリアしていただくと、フリークエストの方に並ぶ常設で遊べるクエストです。

『ワイルズ』プロデューサー・辻本良三氏

――『モンスターハンター:ワールド(以下、ワールド)』に続き、『FF14』とは2度目のコラボですが、今回のコラボのきっかけを教えてください。

辻本: ご存知の方も多いかもしれませんが、僕と吉田さんは非常に仲良くさせていただいており、付き合いで言うと15年以上になるんです。当時一緒に『モンハン』をプレイして遊んでいたこともありますし、魅力があるディレクターだと思っています。吉田さんが『FF14』を担当されるということになり、なにかできればという話をしていましたが、僕らが『ワールド』を制作することになって、絶好のタイミングだと考えたのが一回目のコラボの経緯です。カプコンの開発スタッフにも『FF14』ファンが多いので、面白いアイデアを多数出してくれましたね。

 今回のコラボに関しては、『ワールド』でのコラボが終わった後も、「また機会があれば、できたらやりたい」とお話はしていたうえで、昨年ドイツで開催された『gamescom 2024』で、カプコンの開発メンバーと吉田さんが会う機会があり、そこで「『ワイルズ』でも何かできませんか」とお話をさせていただきました。そのあと昨年の『TGS 2024』で打ち合わせをして決めていきました。

『ワイルズ』ディレクター・徳田優也氏

――『モンハン』の世界で登場するモンスターは、獣や生き物がモチーフとして使われていますが、なぜ今回の『FF14』コラボでは機械兵器の「オメガ」を選ばれたのですか。

徳田:これまでの大型アップデートでは、「ラギアクルス」や「セルレギオス」などメイン級のモンスターが復活しています。また2025年12月配信予定の第4弾では「ゴグマジオス」が予定されているため、それらのモンスターとは異なる新鮮味があるものを『FF14』から選ぼうと思いました。『FF14』は敵が様々な範囲攻撃を重ねながら、プレイヤーに正解の位置取りを選択させるのが面白い部分だと思っていて、その魅力が映えるモンスターは「オメガ」ではないかと。また『ワイルズ』は古代文明をモチーフにした背景を持っているので、設定面でもシナジーがあると考えて、「オメガ」を使わせてほしいと交渉させていただきました。

吉田:補足をすると、『FF14』の「オメガ」は古代文明が作り出した自己進化を続けるAIベースの存在で、「AIや機械は心を持てるのか」というテーマのストーリーが展開されますが、『ワイルズ』でもうまく取り込んで素晴らしいストーリーを実装していただいたので、ぜひ見ていただきたいですね。

『FF14』プロデューサー兼ディレクター・吉田直樹氏

――コラボの参戦ジョブとして「暗黒騎士」と「ピクトマンサー」が選ばれましたが、ジョブ選定はどのように行われたのでしょうか。

徳田:コラボの話を進めるなかで、吉田さんに「今『FF14』で人気があって熱いジョブはなんですか?」と相談すると、「絵素」を重ねて魔法を打つビジュアル的にも面白い「ピクトマンサー」を教えていただきました。社内に持ち帰って検討し、ビジュアル面の面白さや、絵を重ねていくという遊びは、これまでの『モンハン』になかったため、新たなシナジーを生み出せるのではないかと「ピクトマンサー」を採用しました。

 さらにライトユーザーの方でも『FF』とのコラボだと分かるジョブも採用したいと考えていて、最初は「白魔道士」や「黒魔道士」もアイデアとしてありましたが、「ピクトマンサー」と魔法要素で被ってしまいました。そこで他にジョブを探していたところ、「暗黒騎士」のタンクでありながら自分の体力を犠牲にしてアビリティを使っていく要素を取り入れたら面白いものが出来るのではと思い、使わせていただきました。

――『FF14』のジョブの操作や設定を『ワイルズ』に落とし込むとき、苦労した点や大変だった部分はありますか。

徳田:そもそも『モンハン』にMPの概念がないことや、アビリティのクールダウン管理の仕方など、アクションとMMORPGでは異なる部分が多いので、いかにテイストを保ちつつ『ワイルズ』に落とし込めるかを試行錯誤しました。今回の試遊では「ピクトマンサー」しかお見せできていませんが、「暗黒騎士」にもギミックを用意しています。

吉田:「すごいことをするな……」という感想だけお伝えしておきます。

――試遊させていただきましたが「まさか「パンクラ(パントクラトル:オメガアルファ零式3層におけるギミック)」までしてくるとは!」と驚きました。『FF14』のオメガのギミックを『ワイルズ』に落とし込むときに意識したことはありますか。

徳田:『FF14』の“正解の位置取りを選択する遊び”はアクション性に繋がっていく部分でシナジーがあると考えていますが、MMORPGと違ってアクションゲームではジョブロールを活かすようなユーザー側の打開策も限られてしまいます。今回、打開策のひとつとして防御障壁を制作し、「どのように入手してコントロールするのか」をアクションの流れの中で行えるようにしました。思いつくまでは難航しましたが、防御障壁が打開策として機能することを検証してからは開発の道筋が見えましたね。

――「オメガ・プラネテス」クエストの難易度はどれくらいを想定していますか。

徳田:『ワールド』の任務で登場した「ベヒーモス」のような、特殊なルールを理解すればクリアできる程度の難易度を目指していますが、今回はサポートハンターがある程度役割を分担してくれることもあり、「ベヒーモス」より敷居は低いと思います。

――コラボで「オメガ」を登場させるとき、『FF14』側で「ここは守ってほしい」というような要望を出した部分はありましたか。

吉田:『FF14』プレイヤーで「オメガ」関連のストーリーをプレイされている方からすれば、“あのオメガ”をギタギタにすることになり、心情的に辛い部分があるだろうと考えたため、今回は「プラネテス」という別個体という設定を作りました。これならハンターとして思い切り戦えますし、オリジナルの「オメガ」と絡むストーリーも展開されるので、面白くなるだろうと、「アルファ」を含めて提案させていただきました。あとはカプコン側から「オメガ」を使いたいという話が出たとき、「パンクラあるもんね」という反応を最初にしました(笑)。

――『FF14』側のコラボには『ワイルズ』から「アルシュベルド」が登場しますが、そちらの難易度についても教えてください。

吉田:『FF14』のレイドやボスバトルなど、バトルコンテンツは複数の難易度を用意して、カジュアルに遊ぶ方からハードコアなプレイヤーまで、全ての方が楽しめるようにしています。今回のコラボではバトルを味わいたい人はバトルで、着せ替えを楽しみたい人は報酬でというように、ハードモード限定報酬は用意していません。難易度によってドロップ率や集めやすさといった違いはあるものの、どの難易度でもすべて楽しめるようにしています。

――『ワイルズ』には「ラバラ・バリナ」「ネルスキュラ」など鋏角種のモンスターが存在しますが、「オメガ・プラネテス」も鋏角種に分類されますか。

徳田:骨格は鋏角種ベースですが、既存モンスターの動きを使用しているわけではありません。『FF14』のモーションを活用しつつ、アクションゲームに適応させるために新規で作ったモーションも多いため、リソースの使い回しは非常に少ないモンスターになっています。

――「オメガ・プラネテス」戦における「ネルスキュラ・クローン」についてお話しできることはありますか。

徳田:試遊ではデルタアタックを防ぐために「ネルスキュラ・クローン」を倒さなければいけない瞬間がありますが、実際のクエストでは、「ネルスキュラ・クローン」にもストーリーベースの役割が与えられていますので、「オメガ・プラネテス」との関係を意識した上で遊ぶような形になるではないかと。

――双方の作品が近い時期にコラボコンテンツを実装するのは珍しいですが、お二人は今回のコラボでどのような効果を期待されていますか。またコラボが実現するまでの過程に困難はありましたか。

吉田:プロデューサーという観点で言えば、互いのファンが盛り上がり、まだプレイしていない人が手に取るきっかけになることを期待しています。そして、我々は15年以上も会社を越えた関係を築いてきましたが、大きなタイトル同士が収益を抜きにして面白いことをやることで、ゲーム業界の盛り上がりを生んだり、開発チームとしても刺激を受けられたりすることも重要だと考えています。

辻本:プロデューサー目線としての効果は一緒ですが、ここまで大規模なコラボになるとお互いの信頼関係や相性がよくないと実現できません。お互いのゲームに向き合う姿勢や考え方があるからこそ、一緒に大規模コラボのアイデアを出しあえると思っていますね。

吉田:『FF14』と『ワイルズ』の両作品で光の戦士とハンターを兼任しているユーザーは多くいると思います。できる限り両方のコラボコンテンツを楽しんでもらえるように、スケジュールを完全に重ねるのは避けましょうと、配信時期を調整させていただきました。

――試遊では清々しいまでに「オメガ・プラネテス」にやられました。これまでテストプレイなども重ねてきたと思いますが、お三方がプレイヤー目線として「オメガ・プラネテス」と戦ったときの感想を教えて下さい。

吉田:実は最終的なバランスで戦うのは、この後のリハーサルが初ですが、ビジネスデイでの状況を耳に挟んで、「やべぇ」と思っています(笑)。

辻本:今回のコラボは遊びやビジュアルなど、『モンハン』の世界ではできないことに挑戦できた機会になりました。そのため最初は難易度を考えるよりも、インパクトを感じてもらいたいです。

徳田:製品版は試遊版とクエスト時間や力尽きられる回数などルールが違う部分もあります。開発スタッフとかテスターに聞いても、初回は非常に難しく感じるかもしれません。ただ数回プレイすることで理解が深まってクリアできるような形なので、「オメガ・プラネテス」を理解する過程も含めて楽しんでいただけたらと思います。

――28日にはスクウェア・エニックス側のステージイベントがありますが、見どころを教えてください。

吉田:ステージ上で実際に、アルシュベルドを討伐できるかチャレンジしようと思っています。おそらくカプコン・藤岡(要)さんがパーティーに参加してくださると思うので、プレイヤーの方はそれを手がかりに攻略のヒントを掴んでもらえたらと思っています。カプコンさんの全面的な協力によって、多数のカテゴリーやバリエーションの報酬を用意できたので、ハンターとしてオメガに挑戦したあとで『FF14』のほうも楽しんでいただけたらと思います。

『ファイナルファンタジーXIV』 × 『モンスターハンターワイルズ』 スペシャルコラボステージ

――セクレトがチョコボに似ていると感じるプレイヤーは多くいましたが、今回のコラボで『ワイルズ』にひなチョコボなどは登場しますか。

徳田:チョコボはTGS会場でも印象的な「でぶチョコボ」のように色々なバリエーションがあるためアイデアとしてはたくさん上がりましたが、デフォルトのチョコボをお借りすることに決めたので「ひなチョコボ」の登場予定は現状ありません。セクレトがチョコボになりきれる鳴き声や騎乗時のBGMといった要素も用意しているので、そちらを味わってください。

――『ワイルズ』側のコラボキービジュアルが掲載されていますが、注目してもらいたいポイントなどはありますか。また『FF14』側で今後用意しているものはありますか。

徳田:ストーリーテラーである「アルファ」や「オメガ・プラネテス」がメインで描かれている部分や、チョコボといった『FF』とのコラボだと理解できる要素を沢山盛り込んでいます。また背景にはストーリーに一部関わる「ジン・ダハド」もデザインされています。

吉田:「カプコンさすがだな」と思ったのは、「オメガ・プラネテス」の顔が微妙に傾いている部分ですね。『ファイナルファンタジーV』登場時からの「オメガ」の特徴のため、監修やチェックは当然させていただきましたが愛を感じました。また『FF14』側ではメインビジュアルが変更されるわけではありませんが、特設サイトの完全版開設に合わせてフルトレイラーの公開を予定していますので、お待ちいただければと思います。

――今回のコラボを踏まえて、両タイトル間で将来的に目指しているかたちなどあれば教えて下さい。

吉田:開発チーム内では『ワールド』とコラボさせていただいたときに、やり残したと感じる部分もあったので、カプコン側には提案していませんでしたが、アライアンスレイドを2年がかりで『モンハン』をテーマにするのはどうだろうとアイデアが上がったこともありました。先ほどもお話しましたが、『FF14』と『モンハン』双方のプレイヤーと開発が盛り上がって刺激になる面白いことが一番ですし、今回のクロスオーバーを多くの方に遊んでいただきフィードバックを見た上で、また機会があれば考えたいと思います。

辻本:吉田さんとはこれからも付き合いが続くと思うので、なにか一緒にやる可能性はあると思います。しかしコラボはただやればいいものではありませんし、双方にとってアイデアを重ねられたり、ユーザーインパクトを与えられたりするタイミングが重要です。そのあたりを踏まえながら今後のことを考えていきたいです。

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