進化を遂げたAIグラス、新エンジン搭載のMeta Horizonーー見どころ満載の「Meta Connect 2025」基調講演まとめ
Meta社が日本時間9月18・19日、年次カンファレンス『Meta Connect 2025』を米国カリフォルニア州メンローパーク・Meta本社にて開催中だ。18日に行われた基調講演では、AIグラスの新製品が多数発表された。本記事ではその概要を紹介する。
ディスプレイ搭載グラス「Meta Ray-Ban Display」
リストバンド型コントローラー「Meta Neural Band」
レンズ内に情報を表示する「Meta Ray-Ban Display」と、それを操作する筋電リストバンド「Meta Neural Band」が発表された。これはスマートフォンを取り出すことなく、視界と微細な手の動きで情報を操作する、新しいカテゴリーのAIグラスだと定義されている。
レンズの脇には、必要な時だけ現れるフルカラー・高解像度の単眼ディスプレイを搭載。このディスプレイはメッセージを読んだり短い動画を見たりするのに十分な大きさで、視野を妨げないよう少しオフセットして配置され、使用していないときは数秒で消える設計だ。
解像度は視野角1度あたり42ピクセルで、最大5000ニトという高い輝度により、明るい屋外でも優れた視認性を確保している。光漏れは2%に抑えられプライバシーにも配慮。本体バッテリーで最大6時間、付属の充電ケースを併用すれば合計で最大30時間の使用が可能だ。
操作は手首に装着した「Meta Neural Band」で行う。これはタッチスクリーンなどの代わりとなる入力デバイスで、指を動かす際に筋肉から生じる微弱な電気信号を読み取り、「クリック」や「スクロール」といった直感的なジェスチャー入力に変換する。視線を動かすことなく操作ができ、バンド単体で最大18時間動作するIPX7の防水性能も備える。
基調講演のデモでは、メッセージのやり取りや音楽再生、カメラ撮影などが披露された。手首の僅かな動きだけで音楽の音量を調整する様子は、まるで空中のつまみを回すかのような直感的な操作性を印象付けた。
価格は799米ドル、日本での発売は未定だ。
既存AIグラスの第2世代モデル「Ray-Ban Meta (Gen 2)」
AIグラスの第2世代モデル「Ray-Ban Meta (Gen 2)」が発表された。象徴的なデザインはそのままに、日常での使い勝手を向上させる改善が施されている。
バッテリー寿命は標準的な使用で最大8時間と、前世代の約2倍に延長。充電ケースを併用すれば、さらに48時間分の充電が可能だ。カメラは新たに3K Ultra HDビデオ撮影に対応し、より高品質な映像をハンズフリーで記録できる。
今後のソフトウェアアップデートにより、騒がしい場所で会話相手の声を際立たせる「会話フォーカス」機能や、ハイパーラプス、スローモーションといった新しい撮影モードが追加される予定だ。
価格は379米ドル、日本での発売は未定だ。
アスリート向けモデル「Oakley Meta Vanguard」
Oakleyとの提携により、アスリートのパフォーマンス向上を目的としたAI搭載スマートグラス「Oakley Meta Vanguard」が発表された。
IP67の高い防塵・防水性能を備え、高強度のスポーツに対応。Oakley独自のPRIZMレンズや強力なスピーカー、風切り音を低減するマイクを搭載している。中央には122度の広角カメラを配置し、バッテリーは最大9時間持続し、充電ケースを併用することでさらに長時間の使用が可能だ。
アクティビティ追跡アプリの『Garmin』や『Strava』と連携し、音声でのリアルタイムのデータ確認や、特定の状況で自動撮影するオートキャプチャー機能を搭載する。
基調講演では、Red Bullと協力し、実際にアスリートが着用して記録の確認や主観映像の撮影を行う様子が紹介された。
レンズは交換可能で、フレームとレンズの組み合わせによる4つのカラーバリエーションが用意されている。
価格は499米ドル。日本での発売は未定。
メタバース関連の発表
メタバース分野では、新たな「Meta Horizon Engine」が発表された。これにより、グラフィックスやパフォーマンスが向上し、新しいワールドの読み込みとレンダリングは4倍高速化、ワールド内に滞在できる同時接続人数も増加したという。
クリエイター向けには、新しいハブとなる「Meta Horizon Studio」を発表。テキスト指示だけで3Dメッシュやテクスチャなどを生成できるAIツールが含まれ、将来的にはAIアシスタントも搭載される予定だ。
また、昨年のMeta Connectでデモを披露した、ガウシアン・スプラッティング、クラウドレンダリング、ストリーミングを活用したHyperscapeが使える『Hyperscape Capture』がアーリーアクセス版が公開される。
エンターテイメント分野では、新たに「Meta Horizon TV」を立ち上げる。スタジオと提携し、映画、スポーツ、音楽などをヘッドセットに配信する。
Dolby Atmosに対応し、年内にはDolby Visionもサポートする予定だ。基調講演にはジェームズ・キャメロン監督も登場し、映画『アバター』最新作の限定3DコンテンツがHorizon TVで視聴可能になることも発表された。
基調講演では、マーク・ザッカーバーグ自らがAIグラスを着用して登壇し、画面を共有しながらデモンストレーションを行う場面が多く見られた。
一部で通信環境の問題か機能がスムーズに作動しない場面もあったが、それは「今できること」をありのままに見せたとも言える。基調講演の最後、再びグラスをかけてステージを走り去る演出は、AIグラスを日常のアクティビティに溶け込ませたいというMetaの強い意志を伝えるものだったと言えるだろう。