「パタポン」精神的続編『ラタタン』が9月19日早期アクセスへ 成否のカギ握る、シリーズの伝統と現代性の融合

 Ratata Artsは8月14日、『RATATAN(ラタタン)』の早期アクセスを9月19日に開始すると発表した。

 「パタポン」の流れを汲む作品として、存在が明らかとなったときから注目を集めてきた同タイトル。本稿では、シリーズの近況を踏まえ、『ラタタン』の成功のカギを考えていく。

「パタポン」シリーズの小谷浩之氏が携わる新作リズムアクション『ラタタン』

《Ratatan》(ラタタン)Revealトレーラー | GSE

 『ラタタン』は、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(以下、ソニー。現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)より発売されたリズムアクション「パタポン」の精神的続編にあたるタイトルだ。同シリーズでディレクターを務めた小谷浩之氏が制作に携わっている。

 『ラタタン』においてプレイヤーは、音楽にあわせてリズムコマンドを入力し、コブンと呼ばれる仲間キャラクターを操作。状況に応じ、適切な指示を出すことで、敵の打倒、ステージのクリアを目指していく。横スクロールで描かれたステージ内には、個性豊かな敵キャラクターが多数登場。リズムとアクション、音楽、キャラクターなどが織りなす愉快な世界観が、同タイトル、ひいては「パタポン」の最大の特徴である。また、今作には新たな試みとして、ローグライクやマルチプレイの要素も取り入れられているという。それらとの融合によって、シリーズがどのような進化を遂げるのか。そのゲーム性に注目が集まっている現状だ。

 『ラタタン』は2022年5月、『Project JabberWocky』の名で存在が明かされていた。その後、2023年7月に現在の名称へと変更。同年8月にはクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて開発資金の募集がスタートし、1万5,000人弱の支援者から約2億2,000万円を調達した。当初は2025年7月に早期アクセスを開始する予定だったが、体験版に集まったユーザーからのフィードバックに応えるため、その時期を延期。今回ようやく、未定となっていた新たなリリース時期が9月19日に決定した。

 製品版は、PC(Steam)、PlayStation 5/PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|Sに対応する予定だが、早期アクセスはPCのみで実施される。価格は現時点で未定となっている。

『ラタタン』は新しいリズムアクションの形を提示できるか

 先にも述べたとおり、『ラタタン』の原作とされている「パタポン」は、ソニーによるファーストパーティー作品として世に送り出されている。2007年に初作が登場したのち、2008年には『パタポン2 ドンチャカ♪』が、2011年には『パタポン3』がリリースとなった。当時から「リズムによって仲間を使役する」という独創的なシステムが支持されていたが、第3作以降は続編が発売されておらず、評価の割に作品数の少ないシリーズとなっている。

 一方で、2025年2月には、『パタポン3』がPlayStation 5/PlayStation 4へと移植。さらに同年7月には、第1作と第2作のリマスター版『パタポン1+2 リプレイ』が、PlayStation 5、Nintendo Switch、PC(Steam)向けにリリースされた。前者はシリーズの背景どおり、PlayStationプラットフォームのみで展開されたが、後者はバンダイナムコエンターテインメントをパブリッシャーに据え、それ以外のプラットフォームでも発売されている。初作の登場から18年を経て、ようやくその門戸が開放された形だ。

 リマスター版に関して、Steamでは、全体の80%以上が「おすすめ」とし、上から2番目のレビューランクである「非常に好評」へと分類されている。おそらく『ラタタン』もまた、シリーズ持ち前の個性を背景に一定の支持を獲得していくのだろう。

「パタポン1+2 リプレイ」 アナウンスメントトレーラー |2025年7月10日発売決定

 反面、「パタポン」シリーズの流れをくむタイトルとして、越えなければならないハードルがないわけでなない。ゲームカルチャーの進歩に即した新たなゲーム性/ユーザビリティを取り込むことは、その一例である。実際に『パタポン1+2 リプレイ』に寄せられたレビューのなかには、「懐かしさにふれるためのタイトル」「痒いところに手が届かないUIが気になる」といった、マイナスにも受け止められる意見があった。このようにして「パタポン」シリーズに向けられた現代のユーザーの生の声に対し、どのような回答を準備できるのかが、『ラタタン』の成否のカギを握っていると言えるかもしれない。

 おそらく同タイトルに新たに盛り込まれるローグライクやマルチプレイの要素は、そうした課題に対処するためのひとつの策なのだろう。このほかでは、新キャラクターの追加による戦略性の増加、シリーズのシステムと相性が良いであろうハックアンドスラッシュやトレジャーハンティングといったサブジャンルとの融合なども、ひとつの解決策になり得ると考えられる。もちろんこれらの要素は、過去のシリーズ作品にも一定程度含まれていたが、トレンドを意識し、その分量を増やしていくことが、現代性の獲得、さらにはシリーズの進化へとつながっていくのではないか。

 当然ながら、こうした変更によってシリーズの個性が失われてしまっては本末転倒となる。「聞いたことがあるシリーズだけど、初見でも楽しめる?」「続編を遊びたいが、焼き増しでは納得できない」といった、属性の違うユーザーの声にうまく応えていくことが、制作側には求められていくに違いない。

 はたして『ラタタン』は話題性に違わない体験を提供できるだろうか。繰り返しになるが、早期アクセスは9月19日よりスタートする。まだ明らかとなっていなかった要素や、体験版からの変更点に注目したい。

『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』アニメ化の背景に“異色の作品性” フロム作の映像化の成功例となるか

8月20日、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のアニメ化が発表された。和の世界を舞台にしたアクションアドベン…

関連記事