伝説の『シャドバ』プロ、ミル選手単独取材 “初心者のNG行動 5選”を聞いてみた

 「アナライズアーティファクト! アナライズアーティファクト! 完璧なプレイだぁ!!」(実況:友田一貴)

 7年前のプロリーグ開幕戦、伝説の試合。

 DetonatioN FocusMe所属のミル選手によるアーティファクトネメシスの神がかり的なプレイだ。

 これら数々の伝説を築いてきた「RAGE Shadowverse Pro League」だが、1年半の休眠を余儀なくされた。

 そして時は流れ、2025年8月3日、満を持して再始動となった「RAGE Shadowverse Pro League 2025」は新作デジタルカードゲーム『Shadowverse: Worlds Beyond』(以下、シャドバWB)の盛り上がりもあって、史上最高クラスの同接数を記録した。

 華々しいスタートを切った開幕戦直後、筆者はミル選手に単独インタビューを行った。

 7年前の伝説のプレイを振り返ってもらいつつ、シャドバ初心者たちのために「初心者のNG行動」を挙げてもらった。

7年前の伝説のプレイを振り返る「あのAFネメシスのプレイは僕だけでは作れなかった」

――まずは自己紹介をお願いします。

ミル選手: DetonatioN FocusMe(DFM)Shadowverse部門所属のミルと申します。『シャドウバース』(以下、シャドバ)はリリースされた日から“毎日”プレイしていて、今も継続中です。

――ミル選手といえば、2018年のプロリーグ開幕戦でのアーティファクトネメシスのプレイです。多くの反響があり「伝説の試合」になっています。いま改めて振り返ってみていかがでしょうか。

ミル選手: あの試合は、僕の中でも思い出深いです。あの日はシャドバプロリーグが発足して最初の試合ということもあって、誰しもが「シャドバのプロって何だ?」という状態で迎えたと思います。

 (プロとして最初の試合ということもあって)僕を含めたプロたちはものすごい量の練習を積んでいて、開幕戦の当日はとても緊張していました。そんななか(あのプレイが)友田さんの素晴らしい実況・解説とともに、120%のプレイとして伝わって、みなさんに楽しんでいただけました。

 あの試合は僕1人で作ったものではありません。解説者や対戦相手、視聴者の方々、すべての人たちのおかげで生まれた試合です。

――当時はどれくらい練習されたのでしょうか。

ミル選手: 個人的にアーティファクトネメシスというデッキが大好きで、チームでの練習が終わった後も1人でランクマッチをプレイしていました。

 当時、ネメシスは途中から追加された新しいクラスでした。ネメシスで500勝すると「ネメシスマスター」というゲーム内称号がもらえるのですが、この称号が欲しくて、毎日朝から夜まで、起きている時間のほとんどを『シャドバ』に費やしていました。

新しいシャドバの所感について「個人的にはシャドバWBのほうが“直感的”で好き」

――今年6月、『シャドバWB』がリリースされましたが、所感を聞かせてください。

ミル選手: 『シャドバWB』では、従来の『シャドバ』と比べて「進化」の使い方がより重要になりました。通常の「進化」に加えて、新たに「超進化」という強力なシステムが追加されたんです。

 「超進化」は相手のフォロワーを一方的に倒せるギミックなので、盤面の取り合いが熾烈になりました。この「超進化」という必殺技を「どのタイミング」で有効に使うかが勝敗に影響する。ゲームがさらに奥深いものになったと感じています。

 従来の『シャドバ』で培ったプレイの幅だけでは、対応できないギミックなので、未だに学ぶことが多いです。

――「超進化」以外にプロとして順応すべきだと考えている変化は何がありますか。

ミル選手: 『シャドバ』の環境後期では、序盤を準備に充てて「7〜8ターン目辺りでの決着を目指す」といったコンボデッキが多く、「特定のターン」に向けて「どうやって準備するか」と「どう相手を妨害するか」という戦い方が中心でした。

 一方、『シャドバWB』はリリース直後ということもあってか、コンボ系のデッキが少なく、「リソースを奪い合うゲーム制」になっています。「進化」と「超進化」という強力なリソースをお互いにどう活用し、どう相手から奪うかに焦点が移っています。

――ミル選手個人としては、『シャドバWB』にリニューアルしたことで、プレイしやすくなったのでしょうか。

ミル選手: 個人的には、『シャドバWB』の方が直感的で好きです。

 『シャドバ』の時は、視聴者にとっても「どちらのプレイヤーが有利な状況にいるのか」が分かりにくい場面が多かったと思います。

 しかし『シャドバWB』では「進化」「超進化」ポイントが先攻、後攻ともに2個ずつと決まっていて、プレイヤーと観客に公開されているリソースです。どちらが優位なのかが見ている人にも分かりやすいです。

 この変化によって、ゲーム全体の流れを把握しやすくなったので、僕はこの新しいシステムを気に入っています。

【NG行動1】手札交換の際に低コストカードをたくさん残してしまう

――『シャドバWB』は、これまで「カードゲームを遊んでこなかった人たち」もプレイしている印象です。そういった方々に向けて、シャドバを始めたばかりの、初心者がやりがちなNG行動について教えてください。

ミル選手: 初心者のうちは、序盤の動きに不安があって、低コスト(1コスト~2コスト)のカードを3枚以上キープしがちですが、あまりよくありません。

 基本的に『シャドバWB』は、毎ターン1枚しか手札が補充されず、PP(プレイポイント)は毎ターン1つずつ増えていきます。

 よって、低コストをキープしすぎると、中盤以降「PPはたくさんあるのに、手札がなくて何もできない」という状況に陥ります。

 たとえば、4ターン目には4コスト分のカードが使えるはずですが、手札が2コストのカードばかりで、もしそのターンに2コスト×2枚を使ってしまうと、どんどん手札が減って、やれることがなくなってしまいます。

 手札交換の際は、(序盤に必要な)低コストカードをたくさん残すのではなく、中盤以降にもPPを有効活用できるように、手札全体のコストのバランスを見てあげましょう。「2ターン目はこのカードを使う、3ターン目はこのカードを使う」というように先の展開を考えて手札交換できるといいですね。

 序盤に使えるカード(2コスト)があれば、中盤や終盤に使うような強力な高コストカードは、残しておくようにしましょう。

【NG行動2】最初から複雑なクラス(エルフ、ウィッチ)を選んでしまう

ミル選手:初心者の場合、エルフやウィッチのような、プレイが複雑になりやすいデッキは、避けるのが無難です。プレイが複雑なデッキというのは「1ターンに何枚ものカードを組み合わせて使う」デッキのこと。そういうデッキは「どのカードから使えばいいのか」「どの順番で出すのがベストか」といった選択肢が多くて混乱しやすいです。

 逆におすすめなのは、1ターン中にプレイするカード枚数が少ないデッキです。現環境(取材時の環境は「Infinity Evolved / インフィニティ・エボルヴ」)で比較的、強くて使いやすいのはロイヤルでしょう。ロイヤルは1ターンに使うカードが1〜2枚程度で済むため、「このターンは何をすべきか」が非常にわかりやすく、初心者にもおすすめです。

 何より、ロイヤルは『シャドバWB』の基本戦術である「盤面の取り合い」を得意としているクラスです。このゲームの根本的な駆け引きを学べるので、今後『シャドバWB』を楽しんでいく上で必要な知識、体験を得られるクラスです。

 ただ、スペルウィッチはプレイが難しいデッキではありますが「スペルブースト」という『シャドバ』シリーズ特有の爽快感や戦略性があります。「絶対に触らないでほしい」というわけではなく、基本的な操作に慣れてきたら、ウィッチやエルフといった奥深いクラスにもぜひ挑戦してほしいですね。

【NG行動3】相手のフォロワーを全部、倒そうとしてしまう

ミル選手: 相手のフォロワーをむやみやたらに倒そうとしないのも大切なことです。

 初心者にありがちなのが、「相手の場にいるフォロワーは全部倒さなきゃ!」という強迫観念に駆られてしまうことです。その結果、自分のフォロワーで相手のフォロワーに攻撃して、相打ちにして「お互いの場からフォロワーがいなくなる」という展開を繰り返してしまう。

 『シャドバWB』の勝利条件は「相手の体力を0にすること」です。

 相手のフォロワーの処理ばかりに気を取られていると、肝心の相手の体力が減りません。さらに悪いことに、相手からすれば「勝手にこちらのフォロワーを処理してくれるから楽だな。こちらは好きなように戦える」という状況になります。

 時には勇気を持って、相手のフォロワーを無視して、相手のリーダーに向けて攻撃してみてください。たとえその判断が間違っていたとしても、「この場面ではフォロワーを倒すべきだった」「この場面では相手の体力を減らすべきだった」という判断力が身についてきます。

 (怖がって)相手フォロワーを倒してばかりだと、この重要な判断力が育ちません。失敗を恐れず、積極的に相手の体力を削りにいく姿勢が上達への近道です。

【NG行動4】進化時能力のないフォロワーに「進化」を使ってしまう

ミル選手: 進化時能力を持たないフォロワーを「進化」させるときは、一度、手を止めて考えるべきでしょう。

 「進化」させることで、どのフォロワーも攻撃力/体力が+2されますが、中には進化時能力を持つフォロワーもいて、それらを「進化」させれば、+2ずつ上昇されるだけでなく、さまざまな恩恵を得られます。

 たとえば「進化」させると「カードを1枚引く」「相手のフォロワーにダメージを与える」といった進化時能力です。

 同じコスト帯でも、進化時に特別な効果を発動させられるフォロワーは(進化前は少し弱めで)「進化させる前提」でデザインされていることが多いです。こうした追加効果をしっかり活用することで、盤面状況や手札枚数で有利に立てます。

 先ほどの「NG行動」とも関連しますが、相手の盤面を処理するために、安易に「進化」を使わないことですね。手札に進化時能力を持つフォロワーが多かったら、一度、手を止めて考えてみるとよいでしょう。

【NG行動5】相手の体力を削るために安易に「進化」を切ってしまう

ミル選手: 「進化」に関するもう1つのNG行動として、相手の体力を削るために安易に「進化」を使うことも避けたほうがよいです。

 具体的にはこんな流れが起こりえます。

 まず、自分が相手の体力を削ろうと「進化」を使用したとします。すると相手は「進化」を使って、こちらの進化フォロワーを倒してきます。その進化フォロワーが自分にとって脅威となるため、自分もまた「進化」を使って対処せざるを得なくなります。

 結果として自分が2回、相手が1回「進化」を使うことになり、進化権の数で1個分の差をつけられてしまいます。『シャドバWB』では進化権の優位性が勝敗を大きく左右するゲームなので、これは非常に不利な状況です。

 特に現環境では、進化権が使えるようになる4ターン目以降に、強力な進化時能力を持っているカードが多く、ウィッチなら《マナリアフレンズ・アン&グレア》、ロイヤルなら《王断の天宮・スタチウム》、エルフなら《薫交の天宮・バックウッド》。

 これらに対応できる確信がないときは「進化」を我慢したほうがよいでしょう。

 総じて、「目先の小さな利益よりも、長期的な大きな優位性を重視する」という考え方ができるようになると、また一歩成長できると思います。

――ミル選手、ありがとうございました!

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