新しいネーミングルールでよりブランド力を強化 「Dell Pro Max」モバイルノートシリーズを詳細レポート

 2025年7月にデル・テクノロジーズはモバイルワークステーション「Dell Pro Max」シリーズの8製品を発表したがデルは今年の『CES』にてパソコン製品の命名ルールを大幅に変更したことを明らかにしている。従来はコンシューマー向けのメインストリーム製品は「Inspiron」、コンシューマー向けハイエンド製品の「XPS」、SMB向けの「Vostro」、大企業向けには「Latitude」、ワークステーションの「Precision」のようにカテゴリ別のサブブランドが用意されていた。

 ただ一方で、ユーザーは「デルのパソコンを購入する」というイメージでサブブランドの認知度は低かったためブランドを刷新。「Dell」ブランドとビジネス向け製品の「Dell PRO」、ワークステーションの「Dell Pro Max」の三本柱に集約し、従来の3000/5000/7000/9000のようなグレード表記もベースモデル(無印)、Plus、Premiumと分類した(ゲーミングパソコンの「Alienware」ブランドは残る)。

 今回発表されたのは「Dell Pro Max」で従来「Precision」として発売されていたものだ。モバイルワークステーションのカテゴリとなり、従来からdGPU搭載モデルや高性能なCPUを搭載した製品であったが、今回発表された製品はdGPU搭載に力点が置かれている。

 今回発表されたのは『Dell Pro Max 14』のIntel版(MC14250/230,325円〜)、AMD版(MC14255/217,914円〜)、『Dell Pro Max 16』のIntel版(MC16250/258,955円〜)、AMD版(MC16255/224,995円〜)、『Dell Pro Max 16 Plus』(MB16250/254,652円〜)、『Dell Pro Max 18 Plus』(MB18250/308,491円〜)、『Dell Pro Max 14 Premium』(MA14250/450,373円〜)、『Dell Pro Max 16 Premium』(MA16250/446,309円〜)となっている(カッコ内は型番と発表日に公式オンラインサイトで選択可能な基本構成税込・配送料込価格)。ちなみに『Dell Pro Max 18 Plus』を現在オーダー可能な最高スペック・サポートにすると1,616,792円となった。

 製品の多くはdGPUとして最新のNVIDIA RTX Blackwellを採用。ワークステーションで多く使用されるISVソフトウェアがGPUをアクセラレーターとして使用しているため、当然のことだろう。

今回発表された「Dell Pro Max」のノート製品。3シリーズで画面サイズが2種類ずつの8製品となる。
『Dell Pro Max 14』。無印製品はIntel CPUに加え、AMD CPUモデルも投入される。
『Dell Pro Max 16』。筐体サイズが大きくなる分、許容電力も増えるので大型には意味がある。
『Dell Pro Max 14 Premium』ゼロラティスキーボードやマグネシウム合金ボディの採用で最上位名称がつけられている。
『Dell Pro Max 16 Premium』。ゼロラティスキーボードのせいか、16インチ筐体でもテンキーがない。
『Dell Pro Max 16 Plus』。Plus型番だが性能的には最上位製品となる。
『Dell Pro Max 18 Plus』。筐体サイズがシリーズで最も大きく、許容TDPも高い。高性能GPUを余裕を持って動かすならばこれがベストかもしれない。
なお電源はPDで画像は165Wの電源だ。最上位製品には280Wの電源も用意されている。
最近のDell発表会ではモニターやキーボード等の組み合わせ展示もあった。
2025年3月に発表済の「Dell Pro Max」のデスクトップ製品。

 今回の説明会ではデル・テクノロジーズの湊真吾氏と徳山由香利氏が登壇した。湊氏はデルのワークステーションが30期連続で世界No.1の出荷台数になっていると紹介したのち、今年発表されたDellパソコンのネーミングルール変更について説明した。従来、「Precision」ブランドで発売していたワークステーションは「Dell Pro Max」となり、無印製品は基本的パフォーマンスと生産性を発揮すること、Plus製品は広い選択オプションで拡張性の高い製品、Premiumは先進的なデザイン性を持つ製品と紹介していた。

デル・テクノロジーズ株式会社 マーケティング統括本部 クライアント製品ブランドマーケティングコンサルタントの湊真吾氏。
『CES 2025』でパソコンネーミングが一新され、従来「Precision」として販売されていた製品は今後「Dell Pro Max」となる。

 すでに「Dell Pro Max」はデスクトップ製品が発表されているが、最上位のTower T2は発表時には選択できなかったNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionまで対応するようになったという。

デスクトップ製品はすでに発売中。『Dell Pro Max Tower T2』はRTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionの発表に合わせ対応となった。

 また、サステナビリティへの取り組みも紹介。ひとつはUSB-Cポートをモジュラー化することによってUSB-Cコネクタが破損してもメイン基板からコネクタだけを交換できること。コネクタ自体の強度も4倍と上がっている。

 リサイクルコバルトやリサイクル鉄の採用に加え、企業向けに調達台数が多いことを想定して新たに採用したPhese 2のマルチパックも紹介した。これは最大5台のノートパソコンを一つの段ボール箱に格納することで100%リサイクル可能なほか、パレタイズも従来よりも最大75%向上したという。

環境配慮の設計は随所に盛り込まれているが、法人受注の多い「Dell Pro/Pro Max」は最大5台のノートパソコンをひとつの段ボールに収めるマルチパックを採用。今回Phese 2となり100%リサイクル可能でサイズも小型化。

 AI開発者向けに設計されたNVIDIAのGB10を使用した『Dell Pro Max with GB10』を今年夏、NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Super Chipを使用した『Dell Pro Max with GB300』を今年秋までに販売を開始したいとAIに対する取り組みについても紹介された。今後発表する「Dell Pro Max」がQualcommのNPU「Qualcomm AI 100 PC Interfence Card」を搭載するモデルであることも明かされた。推論に特化したNPUを使用することで現在のCopirot+PCの規定の数倍の性能を発揮し、Local AIの処理速度を大きく加速するだろう。

AIに向けた取り組みとしてNVIDIA GB10/GB300使用製品を今後発売予定とアナウンス。QualcommのNPU搭載モデルも予告した。

 製品の詳細に関しては徳山氏が解説。従来の「Precision」の3000シリーズが「Dell Pro Max」の無印に、5000シリーズがPremium、7000シリーズがPlusとなるという。従来は15/17インチ製品があったが、「Dell Pro Max」では14/16/18インチ製品が投入される。

デル・テクノロジーズ株式会社 マーケティング統括本部クライアント製品 ブランドマーケティングシニア・アドバイザーの徳山由香利氏。
従来の「Precision」から「Dell Pro Max」へのネーミング変更チャート。15/17インチ製品がなくなり、18インチ製品が加わる。

 従来名称での中間グレードである5000シリーズが最上位名称であるPremiumとなっているのが気になったが、これは湊氏が紹介した「先進的なデザイン性を持つ製品」に該当するためだ。

 5000シリーズは従来よりマグネシウム合金を使用したボディやゼロラティスキーボードが先進的なデザイン性として取り上げられている。

 CPUは前製品群がすべてIntel製であったのに対し、無印にはAMD Ryzen AI PROも採用する。Intel CPU製品はPlusはCore Ultra HXでそれ以外はIntel Core UltraのHシリーズを採用する。

 冷却に関しては無印が以前よりも大型のファンを採用。Plusは3基のファン、Premiumではベイパーチャンバーを使用するなど放熱性を向上させている。

放熱設計も一新。先進の製品モデルとなるPremium製品はゲーミングパソコンのようにベイパーチャンバーを使用している。
NVIDIA RTX PRO Blackwellの選択が可能で(性能的に最上位の)Plusモデルは4000/5000も選択可能だ。
『Dell Pro Max 14/16』の紹介。IntelモデルはArrow LakeでNPUスコアが低いためAI PCとなっているが、AMDモデルはRyzen AI PROを使用するためCopilot+PCとなる。
AMDモデルの14インチはdGPUなしとなる分、価格が抑えられている。
『Dell Pro Max 14/16 Premium』。TDPに余力のある16はRTX PRO 3000まで対応するが、Premiumは最大メモリが64GBまでなのに注意したい。
ゼロラティスキーボードやマグネシウム合金採用というところがPremiumの名を冠する理由となっている。
ゼロラティスキーボードはキーが大きく、正確なタイピングが可能となる。
『Dell Pro Max 16/18 Plus』は最大メモリ256GB、SSDスロットも多く、RTX PRO 5000 Blackwellにも対応と実質最上位製品だ。
16インチでも160W、18インチモデルならば208WとTDPが高く、高スペックGPUを無理なく動作可能だ。

 今回の説明会ではゲストとして日本マイクロソフトの朝比奈洋輔氏、NVIDIAの田中秀明氏も登壇した。

日本マイクロソフト株式会社 デバイスパートナーセールス事業本部 パートナーデベロップメントマネージャーの朝比奈洋輔氏。

 マイクロソフトは企業におけるAI利活用への関心を背景にCopilot+PCを推進中だ(現在のCopilot+PCの規定はCPUパッケージの中に40TOPS以上のNPUが含まれていることが条件なので、今回のラインナップではAMD CPUのみ対応する)。

 Copilot+PCでは画面上のコンテンツから検索できるClick to DOや過去の操作を振り返ることができるRecall機能を紹介。また、内蔵NPUと外部のAIを組み合わせての利用としてのエッジAI端末として利用することを紹介した。

 そしてWindows AI FoundryというAIアプリケーションの開発から実行までをサポートするプラットフォームも紹介した。

朝比奈氏はCopilot+PCの特徴を3つ紹介した。PCとしての正常進化に加えて、すでにあちこちで紹介されているWindows11での機能追加。
さらにクラウドAIだけでなく、NPU等を使用したローカルAIを活用するエッジAI端末の利用も紹介した。
Windows AI Fundaryと呼ばれるWindowsにおけるAI統合プラットフォームも紹介。
エヌビディア合同会社 エンタープライズマーケティングシニアマネージャの田中秀明氏はワークステーションでも最新のBlackwell世代のGPUが使えることを紹介。

 従来ワークステーション用GPUはQuadroというブランドを使用していたが、現在はRTX PROという名称となっている。現在は500/1000/2000/3000/4000/5000と6ラインナップがあり、モバイルPCでもAIからデジタルツインまで幅広い用途に応えられると紹介していた。

AI技術の発展は目覚ましく、生成AIの時代からAIエージェント、そして次にフィジカルAIが来ると説明。フィジカルAIに対してRTX PRO Blackwellが活躍するという。
ノートPC向けに6つのSKUを投入。パフォーマンスに応じて選択可能だ。
AIからデジタルツインまで幅広く活躍することが期待されている。
フォトセッション、左から朝比奈氏、湊氏、徳山市、田中氏

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