『ポケポケ』トレード機能がようやくアップデートへ 待望の改修は、ユーザー復帰の呼び水となるか

 株式会社ポケモンは7月16日、運営するデジタルTCG『Pokémon Trading Card Game Pocket』(以下、『ポケポケ』)にトレード機能を改修するアップデートを行うと発表した。

 計画の発表から約4カ月を経て、ようやくアップデートの実施が発表された『ポケポケ』のトレード機能。はたして同タイトルは、その不備をめぐり失ってしまった求心力を回復できるだろうか。

UI/UXの悪さが物議を呼んだ『ポケポケ』のトレード機能

【公式】『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』紹介映像

 『ポケポケ』は、「ポケットモンスター」シリーズのトレーディングカードゲーム『ポケモンカードゲーム』を題材にしたデジタルTCGだ。プレイヤーはゲーム内に用意されたカードパックを開封することで、手に入れたものをコレクションしたり、それらをもとにデッキを構築し他者とバトルを行ったりすることができる。

 同タイトルは2024年10月、Android/iOS向けに提供が開始された。パックの売り切れが続出するなど、高い人気を誇る『ポケモンカードゲーム』を、基本プレイ無料で楽しめるモバイルゲームということもあり、リリース直後からシリーズのファンを中心に広くプレイされてきた経緯がある。その一方で、2025年1月に実装されたカードのトレード機能をめぐっては、UI/UXの悪さが物議を呼んでいた。これを受け、公式は3月、同機能の改修計画を発表。今回、アナウンスされたアップデートは、その第1弾である。

 株式会社ポケモンによると、同パッチでは、自分の欲しいカードを他のプレイヤーに示すことができる「ほしい!機能」を実装するとともに、不評だった「トレードメダル」を廃止。今後はカードの重複入手やミッションのクリア、イベント報酬などで手に入れられる「ひかりのすな」を使用する仕組みに変更するという。内包する問題を解決できるかに注目が集まっている現状だ。

トレード機能の改修を経て、『ポケポケ』は求心力を回復できるか

 改修計画の発表から約4カ月を経て、ようやくお目見えとなった新たなトレード機能の輪郭。実装当初、ユーザーが不満の声を寄せていたのは、「トレードの対象に選べるカードが限られている」「一定以上のレアリティを持つカードの交換に『トレードメダル』が必要になる」「交換にあたり、自身の欲しいカードを表明/選択することができない」といった箇所だった。一見してわかるとおり、今回のアップデートでは、その大半にテコ入れがされることになる。

 他方、「トレードの対象に選べるカードが限られている」点については、対応が見送られている。2025年3月の改修計画の発表時には、「⭐︎2のカードのトレードや、特定のプロモカードの再入手についても、別途検討を進めている」と言及があったが、その後どのような結論に至ったのかは現時点でアナウンスがなく、今後対応予定であるのか、それとも現行のシステムを維持するのか、見通しが不透明な状況となっている。SNS上には、問題の部分に的確に手を入れた運営の対応を称賛する声も多くあったが、その反面で、♢3、☆2のカードに関して、排出率の上昇、トレードへの対応を求める意見も散見された。

 ゲーム業界では直近、デジタルTCGの分野が盛り上がりを見せつつある。かねてからジャンルの中心タイトルとして人気を博してきた『デュエル・マスターズ プレイス』『マジック:ザ・ギャザリング アリーナ』『遊戯王マスターデュエル』などが引き続き支持されているほか、2025年6月には、新興の人気タイトルである『Shadowverse』の新作『Shadowverse: Worlds Beyond』も登場した。同作はリリースされるやいなや、Steamプラットフォームのみで10万の同時接続プレイヤー数に到達。あらためて前作やデジタルTCGの人気を界隈に知らしめた。

 2024年10月リリースの『ポケポケ』は、本来のジャンルの支持層以外にリーチすることで裾野の拡大へと寄与してきたが、本稿で取り上げているトレード機能をめぐる問題によって、やや求心力を落としてしまった感がある。『Shadowverse: Worlds Beyond』の躍進の背景には、「そのようにして『ポケポケ』から離れてしまったプレイヤーたちの受け皿として同作が機能したこと」の影響もあるのかもしれない。

 なかには、今回のアップデートによって『ポケポケ』へと戻ってくるプレイヤーもいるだろうが、失ったものをすべて取り返すには長い時間がかかるはずだ。上述の「⭐︎2のカードのトレード」「特定のプロモカードの再入手」といった対応を含め、運営には信頼回復のための次なる一手が求められることになる。

【正式サービス開始!】Shadowverse: Worlds Beyond PV

 一方で、忘れてならないのは、デジタルTCGにトレード機能が盛り込まれること自体が異例であるということだ。トレーディングカードゲームにおいて、カードの入手は、アナログ/デジタルの区別にかかわらず、重要なマネタイズポイントとなっている。特に基本プレイ無料で提供されやすく、カードパックを無償で一定数手に入れられるデジタルTCGにとっては、売上や利益に直結する箇所となる。トレードを可能にすることは、運営がコントロールしづらい部分で自由にカードを手に入れられる手段をプレイヤーに与えることである。だからこそ、こうした要素はジャンルの人気タイトルたちに盛り込まれてこなかった。つまり、『ポケポケ』が取り組んだトレード機能の実装は、ユーザビリティやデジタルTCGとしての新たな体験を考えた画期的なアプローチであるというわけだ。

 同機能をめぐる問題に対するユーザーの声を見ていると、こうした前提が軽視されているような気がしてならない。「トレーディングカードゲームなのにトレードができないなんてあり得ない」といった意見に、ある種の虚しさを感じてしまうのは、私だけなのだろうか。

 デジタルTCGの分野を代表するタイトルのひとつとなった『ポケポケ』。トレード機能は改修を経て、運営/ユーザーの双方が納得する仕組みとなるだろうか。意欲的な取り組みが両者にとって前向きな着地を見せ、ひとつの成功例としてジャンル全体にひろがっていくことを願っている。

『シャドバWB』が同接10万超の躍進 ユーザー維持に向けて求められる、運営の“バランス感覚”

Cygamesは6月17日、『Shadowverse: Worlds Beyond』をリリースした。競争が激化するデジタルTCG…

関連記事