にじさんじ・樋口楓が築き上げた“唯一無二”の姿 怒りをコミカルに表現する配信者として

ショート動画に力を注いで裾野を広げていく樋口楓

 この樋口楓オリジナルのコミュニケーション芸は、数々のショート動画となって投稿されていくことになった。このショート動画こそが、前回2021年7月に執筆した記事から今回の記事までの間で、彼女の配信活動における大きな変化といえる。

 樋口が初めて投稿したショート動画は、2022年7月に公開された『にじさんじ甲子園2022』の育成配信中でみせた彼女の大声リアクションをまとめたものだ。その後も配信の見どころシーンを収めたショート動画を数年にわたって投稿していくことによって、にじさんじファン以外のYouTubeユーザーやライブ配信を見ないユーザーの元に、自身の姿を届けることに努めたのだ。

 こういったショート動画を使った動画投稿は、樋口と仲の良い月ノ美兎、える、星川サラといった同僚らも同じく取り組んでいる。彼女ら3人は2022年1~3月から一気に動画投稿数を増やしており、3人の活動を見た樋口が自身の活動に取り入れたようにもみえる。

 いずれにせよ、こうしたYouTubeショート動画のヒットは自身の歌手活動にも影響を及ぼすことになる。3Dビジュアルでの踊ってみた動画は当然のこと、ツアーライブまでのカウントダウン動画や、にじさんじ内のイベント出演時やソロライブでのパフォーマンスを収めた動画、さらにアニメタイアップとなったシングルをPRするものまで、さまざまなタイプのショート動画を投稿するようになった。

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 ライブ配信の面白どころをまとめたショート動画だけでなく、自身の音楽活動にまつわるショート動画投稿も同時に行なっていく。そうすることによって、VTuberを知らないユーザーだけでなく、音楽(特にアニソン関係)を中心に楽しむユーザーにも自身の存在が届くようになり幅広い層への認知とチャンネル登録増加にも繋がっていく。

 7年目を迎えた彼女のライブ配信中のコメントやアーカイブのコメントに、いまだに「初めて見ます!」「生配信に初めて来てみた」という言葉が投稿されているのは、こうした配信プラットフォームのアルゴリズムの波にうまく適応し、乗っかったからこその結果だろう。

 彼女自身の活動に話を戻そう。前回執筆した叶や、緑仙が主導する七次元生徒会への参加、ランティス所属のアニソンシンガーとして今年で5年目を迎えたことも含めて、彼女の活動もかなりバラエティ豊かになった。3Dビジュアルを使った動画に音楽活動と、叶同様にその活動はボーダレスなものになりつつある。

 元1期生としてもっとも年長であることや、配信でみせる大声リアクションもあって“怖い”といったイメージを持たれることも多いが、それが故に“だからこそイジったら面白いはず”と話しかけられるパターンもある。

 叶や緑仙が樋口のことを七次元生徒会に誘ったのにも、そういった狙いがあったのかもしれない。実際、七次元生徒会での活動は、樋口のこれまで広く知られていなかった一面をコミカルに引き出している。

【検証】樋口楓はドMなのか
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 先にも書いたように、7月に開催される『にじさんじ甲子園2025』に出場する樋口。監督として出場する際は「おい! なんでや!」と怒号を飛ばし、チームメイトとなったメンバーをイジってみたり、関わりのあるメンバーであれば配信外でのエピソードを話してくれたりとさまざまな話題を通じて抜群のトーク芸を披露してくれる。

 『にじさんじ甲子園』という企画、野球というスポーツへの愛情・愛着からくる気持ちの強さは、全監督の中でも随一。同企画で優勝した経験がない彼女だが、今年は見事優勝することができるのか。ぜひ注目すべきだろう。

 樋口はシリアスで真面目なシーンに出くわしたときには人を茶化すことはほとんどせず、むしろ気遣うように気の利いた言葉を投げかけ、場にいる者の心を掴むこともしばしばある。彼女が優勝したとき、感情を爆発させるのか、抑え込むのか。どんな姿を見せてくれるだろうか? こちらも楽しみにしたい。

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