「MTG×FF」は初心者の入門にもピッタリ! 10年ぶりに遊んで感じた“異色コラボ”の魅力

 「世界最初のTCG(トレーディングカードゲーム)」と言われる『マジック:ザ・ギャザリング』(以下、マジック)は、今なお世界中に多くのプレイヤーが存在する。

 競技シーンも活発なTCGだが、新規参入しようと思うと、いろいろな面でハードルの高さを感じるのもたしかだ。おぼえるべきルールが多いことはもちろんだが、カードに描かれるものになじみがないと触れにくい、と思う人も多いだろう。

 そんな中、マジックに新たな風が吹いてきた。RPG作品「ファイナルファンタジー」シリーズとのコラボセット『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』だ。全シリーズ作品に登場するキャラクターなどが登場する、マジックの新規セットである。

 世界的RPGと、世界的TCGのコラボ。異色の組み合わせではあるが、果たしてどのようなコンテンツとなったのか。今回、筆者は招待制イベント『Magic Creator Summit 2025』に参加。発売に先駆けて、『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』をプレイしてきた。本記事にて、その手触りをお伝えしていこう。

全シリーズ集結 マジックとファイナルファンタジーが夢のコラボ

FINAL FANTASY | 公式トレーラー | マジック:ザ・ギャザリング

 『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』は、本日6月13日に発売されたマジックの新規セット。その名の通り、「ファイナルファンタジー」シリーズとのコラボセットだ。

 コラボ対象は、全てのメインシリーズ。主人公やパーティーメンバー、悪役、そして名脇役まで、膨大な数のキャラクターが登場する。アイテムや呪文なども再現され、中には作中の名シーンをモチーフにしたカードもある。

 イラストは多くが描きおろしだが、原作のアートが採用された「FINAL FANTASY・継承史カード」も目玉だ。「ファイナルファンタジー」に欠かせない大御所・天野喜孝のイラストが描かれるカードもあり、コレクションアイテムとしても有用だろう。ちなみに、この枠は既存のマジックのカードの”名称違い版”にあたるため、元ネタとの比較もおもしろい。

 なお、このセットは「本流のセット」と呼ばれるカードセットであり、競技シーンで採用されるフォーマット・スタンダードで使用できる。名だたる有名キャラクターたちを大会などでも活用できる点は、従来のコラボとは一線を画すところだ。

「シールド戦」で遊んでみた

 ここからは、実際に『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』をプレイした様子をお伝えする。なお、筆者のマジック歴は10年以上のブランクがあり、かつ当時遊んでいたのはドラフトと統率者戦の2つのみ。基本ルールこそ分かるが、ほぼ初心者同然であることはご容赦いただければ幸いだ。

 今回筆者がプレイしたのはシールド戦。規定数のブースターパックを開封し、出てきたカードを用いてデッキを構築するフォーマットだ。

 パックを開封していくと、時折手が止まる。「おっ、チョコボだ」「へー、ビッグブリッヂの死闘がカードに」……といった具合に、見覚えのある存在がカードに写っているからだ。「ファイナルファンタジー」シリーズに特段詳しくなくとも、何枚かはどこかで見たことがあるキャラクターがいるはずだ。

 マジックはカードアートの美麗さにも定評がある。本セットにおいてもそれは変わらない。マジックの基礎となる土地カードですら、「ファイナルファンタジー」ライクに描かれており、眺めているだけでも楽しい。イラストだけが描かれた「イラストコレクション」なるカードもあり、こちらもコレクター欲をくすぐりそうだ。

 肝心のデッキ構築だが、なかなかに悩まされた。シールド戦が初体験であることを差し引いても、カードのコンセプトは多岐にわたるため、まず方向性を定めるだけでも難儀だ。後述するが、本セットの新規ギミックも存在するため、ベテランプレイヤーも少しは考えさせられるかもしれない。

 最終的に、筆者が組んだのは白タッチの黒赤。「Ⅱ」の皇帝や「ⅩⅤ」のアーデン・イズニア、同じく「ⅩⅤ」の鉄巨人が切り札だ。とはいえ、しっかりと前線を張ってくれたのは、低マナ帯の「Ⅳ」のセシル、「Ⅵ」のガウ、「ⅩⅡ」のガブラスだった。

 数時間遊んで、結果は3勝3敗。ひさびさのマジックにしては、悪くない戦果だろうか。

見知ったキャラクターたちが集うワクワク感

 開封、デッキ構築、プレイ。マジックの基本的な要素を一通りこなしたことで、本セットの魅力がいくつか見えてきた。

 まずは、知っているキャラクターが従来のマジックより圧倒的に多いことだ。本セットでは「ファイナルファンタジー」シリーズの著名なキャラクターがたくさん登場する。数多くの「知っている存在」と出会い、デッキを組み立て、対戦する楽しさは、新セットでは知らないキャラクターの比率が多い従来のマジックとは真逆の特徴だ。

 そして、有名キャラクターが数多く存在することで、対戦にも華が生まれる。「ファイナルファンタジー」オールスターが集結するワクワク感は、「ディシディア」シリーズがすでに証明済みだ。本セットではそれがさらに幅広く、予測不可能な組み合わせで起こる。

 筆者の例で言えば、こちらの場にはセシルが、対戦相手の場にはゴルベーザが登場する場面に遭遇した。セシルはパラディンへ覚醒済みだったので、奇しくも「Ⅳ」の再現が成立した形だ。セシルの隣にはガブラスがいて、後に「Ⅱ」の皇帝が現れたハチャメチャ感も含めて、予想できない組み合わせの妙がおもしろい。

 本セット独自のギミックも魅力的だ。プレイヤーのキャラクターメイクを再現した「ジョブ選択」や、コストを増やして上位呪文を唱えられる「段階」、シリーズの名物・召喚獣の挙動を見事に再現している「英雄譚・クリーチャー」など、シリーズをやりこんでいる人ほど作り込みに驚かされるだろう。

マジックの間口を広げる、新たな一歩となるか

 総じて、「ファイナルファンタジー」をフックとすることで、これまでのマジックよりも格段に参入しやすく、親しみやすいセットに仕上がっている。「ファイナルファンタジー」のファンであれば、マジック入門編としてこの上ないほど適切だろう。

 一方で、マジックはルール上おぼえることが非常に多く、参入ハードルは決して低くない。この事情を見越してか、本セット発売に合わせて、入門者向けイベント「マジック・アカデミー」が、6月13日から7日24日にかけてTCG取扱店舗で開催予定だ。アナログなTCGの入門は、やはり生身の人間のティーチングが効く。少しでも興味を持ったら、ぜひ参加してみるとよいだろう。

 また、初心者向けにはスターターデッキもよい選択肢だろう。1セットに構築済みデッキが2つ用意されており、それぞれが「Ⅶ」のクラウドとセフィロスを看板としているのが絶妙だ。デジタルTCG版の『Magic: The Gathering Arena』で同じデッキをアンロックできるコードが収録済みなのもうれしい。

 マジックを手掛けるウィザーズ・オブ・ザ・コースト社も、本セットには大きな期待を込めているようだ。「世界最初のTCG」と、世界でトップクラスに人気のRPGとのコラボ。入門にはこの上ない組み合わせだ。競技シーンも含めて、どんな変化が訪れるか目が離せない。

■関連リンク
『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』公式WEBサイト

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