スマホ新作にアニメ化も発表…「幻想水滸伝」シリーズが持つ“唯一無二の体験”の魅力と、新たな展開への期待

 3月4日に配信された「幻想水滸伝」シリーズの最新情報を発信する「幻想水滸伝Live」にて、ナンバリング1作目と2作目のリマスター『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争(以下、幻想水滸伝 I&II HDリマスター)』の紹介をはじめ、アニメ化や舞台化、さらに新作スマートフォンアプリ『幻想水滸伝 STAR LEAP』が発表された。まさに青天の霹靂というべきニュースの洪水であり、あまりの情報量に溺れてしまった人も少なくないだろう。

幻想水滸伝Live 2025.3.4 | KONAMI

 しかし同シリーズは、ナンバリングタイトルが2006年の『幻想水滸伝V』以降発売されておらず、外伝作を合わせても2012年にPSP向けにリリースされた『幻想水滸伝 紡がれし百年の時』で展開が止まっている。そのため筆者を含めたファンでも“すでに終わってしまったシリーズ”という認識の方も少なくなく、名前を聞いたことはあるが触れたことがないという方も多かったのではないか。そのため今回は「幻想水滸伝」はどのようなシリーズなのかを振り返りつつ、『幻想水滸伝 STAR LEAP』や「IP復活」を掲げた現在の動きについて考えていきたい。

「幻想水滸伝」でしか味わえない唯一無二の体験が魅力

 「幻想水滸伝」はコナミが展開するRPGシリーズで、名前のとおり中国の古典小説「水滸伝」をモチーフにした「108人の仲間(108星)」を集めるシステムが最大の特徴だ。だが全員が戦闘要員というわけではなく、仲間にすることで宿屋や鍛冶屋などの施設が解放されるなど、あくまでシステム的な人物もいる。それぞれのキャラクターに個性や背景など、フレーバーが付与されていることで群像劇としての作品性が強まり、力を合わせて巨悪に立ち向かうという物語に強固な説得力が生まれている。108人というメンバーを仲間にしていくこの過程は、まさしく「幻想水滸伝」でしか味わえず、プレイヤー自身が組織の中心人物だという責任を直接感じられる。さらに人によってクリア時のパーティーがまったく異なるのも、プレイヤーと主人公が同一化した体験の唯一性として機能しているだろう。

『幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争』ローンチトレーラー

 ストーリーも国同士の争いや内乱、革命といったシリアスなテーマを中心に扱うことも多い。たとえば発売されたばかりの『幻想水滸伝 I&II HDリマスター』における1作目の主人公は赤月帝国の将軍の息子という立場でありながら、追われる身となり果てには帝国打倒を目標とする解放軍のリーダーとなる。ハイランド王国の少年兵だった2作目主人公はあることから王国に疑問を持ち、親友と袂を分かってしまうなど過酷な運命に翻弄されながら成長する姿が描かれる。キャラクターが多数登場することから多様な背景がある人物も多く、自然とプレイヤーが勧善懲悪ではない、国とはなにか・正義とはなにかという思索にふけるような作品も多い。各ナンバリング作品は基本的に独立しているものの、時系列や世界観がつながっており、さらに世界を生み出したとされる「27の真の紋章」を手にした者は不老になるという設定のため、過去作のキャラが作品をまたいで登場することもある。そのため大河ドラマのような壮大なスケールのストーリーを個々のキャラクター単位ではなく、俯瞰で考えられるのも魅力だ。

 バトルは通常のコマンド選択式の戦闘に加えて、シリーズごとに「戦争」や「一騎打ち」などの特別なシステムが用意されており、ストーリー以外でテーマを物語っているのも特徴だ。特に『幻想水滸伝II』でプレイヤーが3通りの6人パーティーを編成し、18対1である強大な敵との戦いに挑む総力戦は伝説的で、「幻想水滸伝」らしさがあふれたシーンだと言えるだろう。そうした唯一無二なシステムを多数実装しているためか、伝説的なシリーズでありながらフォロワー作品は極めて少ない。“似た味”がほかのゲームで味わいにくいにも関わらず、本家の展開が長年途絶えていたため、「幻想水滸伝」のコアスタッフが立ち上げた、精神的続編『百英雄伝』は大きな話題を呼んだのだろう。

新たな「幻想水滸伝」の展開について

 今回新たにモバイルゲームとして『幻想水滸伝 STAR LEAP』が発表されている。初めて情報を見たときの感想は「運営型タイトルと『幻想水滸伝』は相性が良さそうだな」だった。理由は、魅力的なキャラクターをひとりずつ掘り下げていく108星の設定が、モバイルゲームの“キャラクター集め”という要素、いわゆるガチャに通じる部分があることだ。先ほど「幻想水滸伝」は「人によってクリア時のパーティーがまったく異なる」と書いたが、こちらはコンソールのRPG体験というより、どちらかというと引けたキャラをやりくりしてシナジーを生み出していく運営型タイトルのプレイフィールに近い。そのため従来のシリーズのような偶然仲間になった(ガチャで引けた)、好きなキャラを活かしていく体験が味わえるのではないか。

『幻想水滸伝 STAR LEAP』ティザートレーラー

 また『幻想水滸伝 STAR LEAP』の新たな108星は、ガチャではなくシナリオ内で仲間になり、イベントやガチャはあくまで“モバイル的なお楽しみ要素”だと述べられている。さらに各ナンバリングタイトルの前日譚や後日譚が描けるような仕組みがあり、物語は『幻想水滸伝I』の2年前からはじまるとのこと。つまり108星を集めるというナンバリングタイトル同等の体験を味わいつつ、ファンアイテムとしての側面も強い、新規プレイヤーと既存ファン両方に向けたタイトルということだ。どのような作品に仕上がっているのかは続報を待つしかないが、貴族時代のオデッサや「グレッグミンスター」「レナンカンプ」など、1作目で馴染み深いキーワードが散りばめられており、いまから楽しみである。

 新作やアニメ化などで復活する様子や、「IP復活」を掲げたコナミの動きはいちファンとして感慨深いが、同時にアンビバレンスな「復活が遅すぎたのではないか」という感情も存在している。『幻想水滸伝 紡がれし百年の時』リリースから新展開まで13年かかったなかで、シリーズを見限ったり、環境が変化してゲームから離れたりした人も多いだろうし、今回の「幻想水滸伝Live」を見届けられずに亡くなったファンも当然いるだろう。

 そしてもう少し早く再始動していたら、もしかして2024年に亡くなったシリーズの生みの親である村山吉隆氏と合流し、『幻想水滸伝III』以降のナンバリング時系列を先に進められていたかもしれない……などの“if”を考えてしまう。だが、近年のコナミは「幻想水滸伝」をはじめ、「メタルギアソリッド」や「サイレントヒル」など長年凍結状態にあったIPを次々に復活させており、気概は本物なのだろう。だからこそ、いまなおシリーズを応援しているファンのひとりとして、これからも「幻想水滸伝」を追っていこうと思える発表だった。

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